「なごり雪」が昭和の名曲第1位「大切なもの託された」イルカさん、誕生秘話を語る

「なごり雪」の頃のイルカさん

「なごり雪」の頃のイルカさん

産経新聞社と産経リサーチ&データが募集した「読者が選ぶ昭和の名曲―フォーク・ロック・ポップス部門」には2012人の応募がありました。1位は576票を集めたイルカさんの「なごり雪」が選ばれました。ほぼ全世代で1位を獲得、全体の4分の1以上が推した曲です。イルカさんにこの曲への思いを聞きました。

私が歌うべきではない

1位に選ばれて光栄です。これは駅での別れの情景を描いた歌で、季節は春。春は出会いと別れの季節で、きっと、どなたもご自身の別れの記憶を、この歌に重ね、自分のこととして聴いてくださっているのではないでしょうか。

昭和50年に発表した歌ですから、もう半世紀、歌い続けています。

もともとは、3人組フォークグループ「かぐや姫」の歌でした。ある日突然、夫(プロデューサーでもあった神部和夫さん)から「イルカが『なごり雪』を歌うことになったよ」と告げられて驚きました。

シンガー・ソングライターのイルカさん=令和6年

シンガー・ソングライターのイルカさん=令和6年

音楽活動については夫に一任していましたが、私は当時かぐや姫の前座を務め、この歌が彼らの名曲として世間に浸透していることをよく知っていました。

ですから「私が歌うべきではない」とレコーディング当日まで渋っていたのですが、録音スタジオで私の横に作者の伊勢正三さんがすうっと来て「イルカが僕の作った歌を歌ってくれたらうれしいな」と言ってくれたんです。「うれしいの?」「うれしいよ」。じゃあ歌おう。あの言葉は大きかったです。

経緯を知ったのは亡き夫の「送る会」

夫は平成19年に59歳で亡くなりましたが、私がこの歌を歌うことになった経緯を知ったのは、その「送る会」の席でした。

かぐや姫のリーダーだった南こうせつさんから、「かぐや姫が解散するなら『なごり雪』はイルカに歌わせてほしいと神部ちゃんに頼まれてね」と教わったのです。

「彼のプロデュース力でこの歌は大きくなった」。こうせつさんに、そうおっしゃっていただき、夫は喜んでいることでしょう。

この歌については、今でも〝大切なお姫さま〟を預かっているという気持ちが拭えません。敬い、大切にしなくてはならない歌だと考えています。

また、聴いてくださる皆さんに育てられた歌だとも思っています。普段は気の向くまま、何も考えずに歌っている私ですが、この歌だけは「皆さんの思い出と重ねて聴いてください」と祈りながら歌っています。(石井健)

読者2000人が選んだ昭和の名曲―フォーク・ロック・ポップス部門ベスト50を発表

プレイバック「昭和100年」

産経新聞社と産経リサーチ&データが募集した「読者が選ぶ昭和の名曲―フォーク・ロック・ポップス部門」には2012人の応募がありました。昭和の時代の売り上げ上位曲や人気曲などをもとに編集部が選出した約210曲のリストの中から10曲をインターネット投票で選んでもらいました。調査は今年8月下旬から9月上旬にかけて実施、男性1312人、女性700人で、年齢別では80代以上69人、70代437人、60代767人、50代442人、40代201人、30代以下96人。あなたの好きなあの曲は入っていますか。

31―50位

31 贈る言葉(海援隊)昭和54年 150票

32 旅の宿(吉田拓郎)昭和47年 148票

33 傘がない(井上陽水)昭和47年 147票

井上陽水=昭和60年

井上陽水=昭和60年

33 勝手にシンドバッド(サザンオールスターズ)昭和53年 147票

35 青春時代(森田公一とトップギャラン)昭和51年 146票

36 フレンズ(レベッカ)昭和60年 145票

37 落陽(吉田拓郎)昭和48年 144票

38 心もよう(井上陽水)昭和48年 143票

39 銀河鉄道999(ゴダイゴ)昭和54年 141票

39 M(プリンセスプリンセス)昭和63年 141票

41 遠くで汽笛を聞きながら(アリス)昭和51年 135票

41 My Revolution(渡辺美里)昭和61年 135票

43 あの日に帰りたい(荒井由実)昭和50年 134票

44 君は天然色(大滝詠一)昭和56年 133票

45 オリビアを聴きながら(尾崎亜美)昭和53年 130票

46 ワインレッドの心(安全地帯)昭和58年 127票

「ワインレッドの心」を歌う安全地帯の玉置浩二=昭和59年

「ワインレッドの心」を歌う安全地帯の玉置浩二=昭和59年

47 恋人よ(五輪真弓)昭和55年 126票

48 ガンダーラ(ゴダイゴ)昭和53年 125票

49 みずいろの雨(八神純子)昭和53年 123票

50 ふれあい(中村雅俊 )昭和49年 119票

11―30位

11 クリスマス・イブ(山下達郎)昭和58年 243票

12 帰って来たヨッパライ(ザ・フォーク・クルセダーズ)昭和42年 238票

13 ジョニィへの伝言(ペドロ&カプリシャス)昭和48年 222票

13 酒と泪と男と女(河島英五)昭和51年 222票

15 精霊流し(グレープ)昭和49年 213票

「精霊流し」を歌うグレープ(さだまさし、吉田正美)=昭和49年

「精霊流し」を歌うグレープ(さだまさし、吉田正美)=昭和49年

16 あなた(小坂明子)昭和48年 212票

17 花の首飾り(ザ・タイガース)昭和43年 204票

18 ルビーの指環(寺尾聰)昭和56年 203票

19 知床旅情(加藤登紀子)昭和45年 202票

19 昴-すばる-(谷村新司)昭和55年 202票

21 白いブランコ(ビリー・バンバン)昭和44年 196票

21 夢の中へ(井上陽水)昭和48年 196票

23 戦争を知らない子供たち(ジローズ)昭和46年 193票

24 『いちご白書』をもう一度(バンバン)昭和50年 187票

25 花嫁(はしだのりひことクライマックス)昭和46年 177票

26 初恋(村下孝蔵)昭和58年 173票

27 白い色は恋人の色(ベッツィ&クリス)昭和44年 165票

27 ルージュの伝言(荒井由実)昭和50年 165票

荒井由実=昭和49年

荒井由実=昭和49年

27 乾杯(長渕剛)昭和55年 165票

30 バラが咲いた(マイク真木)昭和41年 153票

1―10位

1 なごり雪(イルカ)昭和50年 576票

2 神田川(かぐや姫)昭和48年 493票

2 時代(中島みゆき)昭和50年 493票

中島みゆき=平成25年

中島みゆき=平成25年

4 22才の別れ(風)昭和50年 362票

5 心の旅(チューリップ)昭和48年 346票

6 学生街の喫茶店(ガロ)昭和47年 334票

7 卒業写真(荒井由実)昭和50年 312票

8 異邦人~シルクロードのテーマ(久保田早紀)昭和54年 286票

9 いとしのエリー(サザンオールスターズ)昭和54年 274票

10 風(はしだのりひことシューベルツ)昭和44年 258票

イルカさんの「なごり雪」(作詞作曲、伊勢正三)はほぼ全世代で1位を獲得しました。昭和49年3月、伊勢さんが所属したかぐや姫のアルバム「三階建の詩」の収録曲として発表、翌50年11月にイルカさんのシングル曲として発売され、累計で80万枚を超えるヒット曲となりました。イルカさんバージョンの編曲は松任谷正隆さんが担当しています。

なごり雪を歌うイルカ=平成4年

なごり雪を歌うイルカ=平成4年

2位の「神田川」(作詞・作曲、喜多条忠、南こうせつ)、4位の「22才の別れ」(作詞作曲、伊勢正三)もかぐや姫に関係する作品。「神田川」は作詞家、喜多条さんの早稲田大在学当時の実体験をもとにした歌詞として知られます。こちらも当初はアルバム収録曲でしたが、南さんがラジオ番組で流したところリクエストが殺到、シングル化に踏み切り大ヒットしました。青春時代の切ない恋愛を描いた世界が幅広い層から支持を集めました。「22才の別れ」も当初は「なごり雪」と同じアルバムに収録されていましたが、かぐや姫解散後に伊勢さんが結成した「風」のデビューシングルとして発売されました。

かぐや姫の(左から)伊勢正三、南こうせつ、山田パンダ=平成12年

かぐや姫の(左から)伊勢正三、南こうせつ、山田パンダ=平成12年

「神田川」と同数で2位に選ばれた「時代」(作詞・作曲、中島みゆき)は昭和50年の「世界歌謡祭」でグランプリを受賞した中島さんの2枚目のシングルです。卒業式やカラオケなどさまざまな場所で歌われており、平成18年には文化庁の「日本の歌100選」に「赤とんぼ」「サッちゃん」などの唱歌とともに選ばれました。

上位7曲はいずれも昭和50年前後の歌で、この時期に今に残る名曲が数多く生まれたことがわかります。

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