「まさかの大幅値上げじゃね!?」オトクな“高速料金が3割引”のETC「深夜割引」が7月に新ルール導入 複雑に変更される新・深夜割引はどう変わる?

オトクに高速道路を通行できるETC深夜割引ですが、現行ルールでは午前0時から午前4時までの「割引適用時間帯」に高速道路を走行するETC車について、通行料金の「3割引」が適用されます。これが2025年7月をめどに内容が変更される予定です。どのように変わるのでしょうか。

新・深夜割引はETCマイレージサービスへの事前登録が必須になる

 2025年7月をメドに、NEXCO各社の高速道路などで適用されている「ETC深夜割引」(以下、深夜割引)の仕組みが見直されます。

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現在は、午前0時から午前4時までに高速道路を走行するETC車について、通行料金の3割引が適用される「ETC深夜割引」だが、2025年7月に見直しされる予定だ

 深夜割引は、2004年に夜間の交通を一般道から高速道路に転換することなどを目的としてはじまりました。

 以降、割引率の変更などの見直しを経て、2014年4月からは一部を除き「午前0時から4時までの時間帯にNEXCO各社の対象となる道路を走行する場合、通行料金が通常料金の30%引き」となっています。

 しかしこの仕組みが、通行料金をできるだけ抑制したいクルマ(主に事業用のトラック)が割引の適用を狙い一定の時間帯に滞留する、また深夜走行を助長しドライバーの労働環境の悪化につながるという課題が指摘されていました。

 とくに前者はSA/PAの過剰な混雑に加え、本線料金所手前での路肩への駐車や、本線上での停車など、交通の危険を生じる状況となっており、仕組みの見直しは必然だったとも言えるでしょう。

 当初は2025年3月末に新ルールが適用されるスケジュールでしたが、現状は同年7月に導入というアナウンスがされています。 

 では、今回の見直しで、深夜割引はどのような仕組みとなるのでしょうか。

 まずひとつ目の柱は、割引適用時間帯の拡大と、実際の走行に合わせた割引額の算出方法への変更です。

 具体的には、割引適用の時間帯が22時から翌5時までとなり、割引対象となる走行はこの適用時間帯に走ったとみなされる部分のみに限られることとなります。

 割引適用となる走行距離の判定には、従来からある料金所のETC無線通信アンテナに加え、高速道路本線内にもETC無線通信アンテナを新設し、各アンテナからクルマごとの通信記録を収集し、これをもとに割引対象となる距離を判定を算出します。

 その上で、過大なスピードで割引対象距離を稼ぐといった走行を防ぐため、割引適用時間における1時間あたりの上限距離を設け、普通車などは105km、大型車や特大車(乗合型自動車のぞく)は90kmとします。また走行時間が4時間を超える場合には、走行30分に相当する距離をカットし、連続運転がメリットにならないような抑止策も採り入れられます。

 そしてもうひとつの柱は、ETCマイレージサービスまたはETCコーポレートカードとの連携です。

 従来は割引額がそのまま通行料金から差し引かれていましたが、見直し後は前述の方式で割引額を計算したのち、ETCマイレージサービスまたはETCコーポレートカードの還元額として後日加算されます。

 そのため、一般のドライバーが深夜割引の適用を受けるには、ETCマイレージサービスへの事前登録が必須となるので、要注意です。

大幅なルール変更は一般ドライバーにとって「値上げ」!?

 では、実際の通行料金および割引は、どのように変化するのでしょうか。

深夜割引見直しの一例深夜割引見直しの一例

 従来の深夜割引は、原則として0時から4時の間のわずかな時間でも、対象となる道路上にいればその走行全体に対し、割引が適用されていました(均一区間など、一部例外をのぞく)。

 そのため、たとえば山陽道の広島ICを昼11時に出発し、日付の変わった0時10分に東名高速の東京ICに到着するというドライブでも、全行程に深夜割引が適用され、通常のETC通行料金1万6940円(普通車)が、5080円割り引かれて1万1860円となっていました。

 しかし見直し後の深夜割引では、上記の走行例で割引対象となるのは、22時から0時10分までの、わずか2時間超となります。

 これが実際にはどのくらいの割引となるのか、NEXCO東日本の「どらぷら 深夜割引見直し後の料金シミュレーション」で計算してみましょう。

 このシミュレーションでは、割引適用時間帯に走行すると思われる距離を入力して、割引額を算出します。

 22時から0時5分までは約2時間なので、200kmと入力して結果を見ると、還元額(割引額)は1190円と表示されます。つまりこの例では、見直しにより支払い額が実質3890円も増えてしまうのです。

 このことから、見直し後の深夜割引の恩恵をフルに受けるには、22時から翌5時までの割引適用時間に「どれだけ長い距離を走るか」が重要であることがわかります。

 そしてその一方で、適用時間内の走行でも「105km×走行時間」「4時間あたり30分の見なし休憩時間」という条件により、上限距離が限定されることにも留意しなければなりません。

 いずれにせよ、これまでのように「朝4時前に高速道路に流入」「午前0時すぎに高速道路から流出」という手法での“割引のおいしいトコ取り”は不可能になりました。人によっては、これが大きな“実質値上げ”になる可能性もあるでしょう。

※ ※ ※

 なお今回の深夜割引の見直しは、こうした大きな変更をともなうことから、5年程度の「激変緩和措置」も導入されます。

 まず深夜割引適用対象のクルマのうち、1000km以上走行したクルマについては、1000kmを超える部分が深夜割引の対象走行分に組み入れられます。また22時台に高速道路から流出したクルマについては、22時台に走行した分の還元率が最大20%となります。

 さらに長距離利用の料金負担を軽減するため、現状では100km超で25%、200km超で30%となっている「長距離逓減制」を、400km超で40%、600km超で45%、800km超で50%へと拡充します。

 ただこれらの施策で大きな恩恵を受けるのは、おもに長距離トラックであると考えられ、一般のドライバーにとって、深夜割引の実質値上げ分をカバーできるかどうか、微妙なところではないでしょうか。

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