推進の「責任者」だった河野元大臣(他の写真を見る)
日本が誇る国民皆保険制度だが、12月2日より健康保険証の新規の発行がなくなった。マイナンバーカードに健康保険証の機能を紐付けした、厚生労働省が推進する「マイナ保険証」に移行するためだ。マスコミが事前に報じていたことではあるが、移行初日、住民からの問い合わせで役所は混乱。その様子を聞いた。
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東京23区のある区役所では、マイナ保険証への移行初日に電話による問い合わせが173件もあったという。
「その前の開庁日の11月29日にも142件と、電話による問い合わせは以前から増えつつありました。それでも移行初日の12月2日は多かったですね」
どのような問い合わせがあったのだろう。
「『保険証の期限は2025年9月30日と書かれているが使えなくなってしまうのか』といった問い合わせに加え、『資格確認書が届いていない』という声も多くありました」
マイナ保険証を持っていない人には「資格確認書」が送られてくる。現行の保険証の代わりとなるもので、保険証の期限が来る前に届けられる。それゆえ12月2日までに届くものではない。逆にマイナ保険証を持っている人からはこんな声も。
「『マイナ保険証を解除したい』という声もありました」
これまでマイナ保険証は、本人とは別の人物が紐付けされていたり、マイナンバーが誤って登録されたりとトラブル続き。そのため登録解除を望む声も上がっていた。ちなみに、利用登録の解除は10月28日から可能になっている。こうした様々な問い合わせに対応するため、この区役所では20人体制で臨んだという。
マイナ保険証の保有者も混乱
「現行の保険証が発行されなくなるという報道が増えたことで、問い合わせが増えたのだと認識しています。とはいえ、ポスターを貼ったり通知を送ったり、我々としてはしっかり事前に周知してきた自負があっただけに、当日になって多くの問い合わせがあったことには少しショックを受けています」
その事前の通知に対しても問い合わせがあった。10月頃に送付された「医療保険のデータベースに登録されている個人番号(マイナンバー)のお知らせ」というもので、こう表記されている。
《保険証に表示されている、あなたの保険資格データは、国民健康保険制度のデータベースに登録されており、マイナ保険証をご利用いただける状態となっています。マイナ保険証をお持ちであれば、ぜひ、ご利用ください》
そこには被保険者の氏名とマイナンバーの下4桁が表示されていた。
この通知に、すでにマイナ保険証を利用している人の中には「医療機関とのデータ共有が未だにできていないのではないか? これから運転免許証とも共有されるというのに大丈夫か?」といった疑問を抱いた人もいたという。
「この通知は、国民健康保険に加入されている方にマイナ保険証が利用できる状態であることをお知らせしたものです。マイナ保険証をお持ちか否かかにかかわらず、一律でお送りしています。確かに、すでにマイナ保険証を利用されている方の中には疑問をお持ちの方もいらっしゃったようです。また、『通知されたマイナンバーは下4桁だけだが、本当に合っているのか?』という問い合わせもありました」
すでにマイナ保険証を持っている人まで混乱させてしまったようだ。なぜわざわざそのような通知を送付したのだろう。
国の焦り
「厚生労働省からの通達に基づいてお送りしたものなのです。厚労省としては、どうしてもマイナ保険証を広めたいという思いがあるのでしょう」
この通知を送付するにも郵便代は必要だ。自治体が負担しているのだろうか。
「全額、国から補助されています」
いずれにしても我々の血税である。国はマイナンバーカードの登録やマイナ保険証との紐付けなどに最大2万円分のマイナポイントを付与、普及に向けたテレビCMも放送するなど2兆円を超える予算を費やしてきた。おかげで、10月末時点でマイナンバーカードの保有率は75・7%(9449万人)、そのうち健康保険証と紐付けした人は82%(7747万人)に達したが、実際にマイナ保険証を利用している人となるとわずか15・67%しかいない。
「その辺りは自治体では何とも……」
いずれにしても、現行の保険証とマイナ保険証が混在する上、今後、マイナ保険証の非保有者には「資格確認書」、保有者には「資格情報のお知らせ」が届けられるというのがまたややこしい。区役所にとっても混乱はあったという。
「特に初日は、出力発行などに“保険証”が選択できなくなったりするなど、システム上、新規の操作手順が加わったことが混乱の一番の原因だったと思います」
今後も混乱は続くのだろうか。
「操作手順さえ慣れてしまえば大丈夫だと思います。ただ、心配されるのは、来年9月30日に国民保険保険の多くの方が期限を迎えます。その前までに『資格確認書』をお送りしなければなりませんし、問い合わせも再び増えると思います。それを考えると恐ろしいですね」
デイリー新潮編集部
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