「何のために放送しているのか」が分からなくなった「24時間テレビ」は来年も放送へ…識者は「何となくの良かったね感」は禁物と苦言

image

 割れんばかりの批判の声の中、今年も「24時間テレビ」(日本テレビ系)が終わった。2023年11月に判明した、日本海テレビによる義援金の横領事件への検証が十分とは言えないままの放送に加え、台風の中、出演者でお笑い芸人やす子(25)にマラソンをさせるという「無慈悲ぶり」にも多くの罵声がネットに上がる事態となった。
 放送が「強行」されたとも言える状況だが、番組の平均視聴率は12.5%と昨年の11.3%を上回った。また、制作局の日本テレビの編成担当者は早くも来年の開催を明言するコメントを各メディアに対して発表するなど鼻息は荒いが、同志社女子大学でメディアエンターテインメントを研究する影山貴彦教授は「今回の結果を『視聴者からの批判が弱まった』と分析してはいけない」と語る。
■「いろんなご意見を頂きましたが」といった漠然とした総括をしてはいけない
 番組は一応、チャリティーを標榜したものだが、放送内容に対して上がった声は《なんか矛盾あるチャリティにも思える》と、番組の放送目的と実態が乖離していると感じたというものが続々。もはや「何のために放送しているのか」が分からなくなってしまったようにも感じられる同番組に対し、影山氏は「今年の放送について入念に総括してほしい」と苦言を呈す。

「間違っても、『いろんなご意見を頂きましたが、これからもよろしくお願いします』といった漠然とした総括をしてはいけません。ネット上に上がっていた番組を批判する具体的な声を掬い上げつつ、その1つ1つに答える形での総括でなければ視聴者は納得しないでしょう」
 番組に対しては上述のように今年の放送に対する批判はもちろん、《そもそも募金の着服、長年メインを張ってたジャニーズの性加害問題で今年(というか当面)番組自体を止めるもの》といった、24時間テレビは昨年の放送から問題を抱えていたとする批判も多い。これに続けて、影山氏は、「24時間テレビを終わらせてしまえとは言わないが、やはり、今年は放送を中止すべきだった」と批判した。
「好き嫌いは別として、テレビがチャリティー番組を放送するというのはそれなりに意義があることだと思います。ただ、義援金の横領という番組のコンセプトからして致命的な不祥事があった以上、やはり、今年は放送を中止すべきでした。ずいぶんと柔らかい例えになりますが、中高生が何か悪いことをしたら『謹慎』を申し付けられ、強制的に学校を休まされます」

■「1度休んだら2度と再開できない」という恐怖心が日テレ上層部にあったか
 影山氏は「総括があいまいなままでの放送継続は、それこそ、子供たちへの教育面でも非常に良くない」とも付け加えた。
「一方、メディアは何者から行動を強制される存在ではありませんが、であるがゆえに自主的に放送を中止し、翌年以降に視聴者から求められるのであれば、放送を再開するという形が筋でしょう。そうしなかったということは、1回休んでしまった場合、2度と再開できないという恐怖心が日本テレビの上層部にあったのかもしれません。そのような中での放送で、やす子さんをはじめとする出演者の皆さんは本当に頑張っていたと思います。ただ、そうであるがゆえに、番組の在り方と出演者の頑張りがないまぜになって、何となくの『良かったね感』が出てしまってはいけないのです」
 来年も放送するのであれば、それこそ、「自己批判」あふれる総括が必要だ。
  ◇  ◇  ◇
 罵声を浴びながらの放送が終わった。●関連記事【もっと読む】もはや「苦行」、「回数ごまかせる」の指摘も…24時間テレビ「やす子マラソン」強行に視聴者ドン引き…では、放送中に上がった視聴者からの疑念の声の数々について伝えている。

コメント