※記事内容は全て執筆時点の情報です。
車を誰かに貸して、貸した相手が自分の知らない場所で事故を起こしたとき、オーナーは多くの場合、車やドライバー、そして事故の関係者の心配で頭がいっぱいになります。
そして、所有者の中には、自分も事故の責任を問われるのではないかと、不安に感じる人もいるでしょう。
では、車を誰かに貸し出し、貸した相手が事故を起こした場合、所有者は責任を問われることがあるのでしょうか。
車の所有者は「運行供用者責任」を負う必要がある
車の貸し借りは、さまざまな場所で起こっています。
たとえば、親しい間柄では、善意の車の貸し借りが発生したり、レンタカーなどでは契約に基づいた車の貸し借りがおこなわれたりします。
では、もし車を貸した相手が事故を起こした場合、車の所有者はどのような責任を負うのでしょうか。
実は、車を貸した相手が人身事故を起こした場合、所有者には、運行供用者責任が問われることがあります。
運行供用者責任とは、自動車損害賠償保障法第3条に定められたもので、車が第三者に対して与えた損害について、所有者が責任を負うというものです。
この責任の適用範囲は広く、1973年1月30日の最高裁判例などによれば、かねてより親交のある知人に車を貸した場合でも発生する可能性があります。
さらに、「名義貸し」の場合にも名義上の所有者が運行供用者責任を課せられることがあります。
名義貸しとは、実際に車を運転しないが、所有者として名義だけを他人に貸すことです。
上述の場合、借り手が車を使って事故を起こした場合にも、所有者が責任を問われる可能性があるため、注意が必要です。
また、レンタカーなどの法人が、有料で誰かに貸した結果、借り手が事故を起こしてしまった場合に、法人がこの責任を問われた事例も存在します。
一方、運転者が所有者から長期間借り受けていたなど、所有者がその車を管理する立場になかったといった理由で、所有者の運行供用者責任が問われなかった事例も存在します。
そのため、運行供用者責任が問われるか否かは事例によって異なるといえます。
では、この運行供用者責任に問われた場合、所有者はどのような義務を負うのでしょうか。
運行供用者責任を問われた場合、所有者は運転者とともに賠償を行う義務が課せられます。
この場合、運転者と所有者の間で、どちらがどれほど賠償を負担するか話し合う必要があります。
特に、保険に加入していないなどの理由で運転者に賠償能力がない場合、運行供用者が賠償する必要がある点に注意が必要です。
また、物損事故の場合はこの運行供用者責任は問われません。物損事故の場合、賠償責任は運転者のみが負うことが一般的です。
このように、車を貸した相手が事故を起こしたとき、所有者は、事故によって死傷した被害者への賠償責任を負う必要がある一方、壊れた物への責任はありません。
車を貸すとき、相手と車のどの部分を確認する必要がある?
このように、車で事故を起こしたとき、所有者も責任を負う必要があるため、車の貸借は慎重に行う必要があります。
では、車を誰かに貸すとき、所有者はどのような点を確認する必要があるのでしょうか。
まず最初に確認するべきは、車の状態です。
貸し出す車が事故やトラブルを起こす原因になることを避けるため、メンテナンスや点検をしっかりと行っておくことが重要です。
ブレーキの効き具合やタイヤの状態、オイルの量など、基本的な点検をおこなっておくことはもちろん、車両に不具合がないかも念入りに確認しましょう。
車が安全に運転できる状態であることを確認した後は、次に相手をしっかりと確認することが必要です。
相手が運転免許を持っているか、または、運転歴に問題がないかをチェックしましょう。
もし相手が無免許や運転歴が浅い場合、事故を起こすリスクが高くなる可能性がありますので、注意が必要です。
また、相手の運転技術や交通ルールに対する理解度を把握しておくことも重要です。
さらに、相手が車をどのような用途で借りようとしているのかも確認する必要があります。
たとえば、暴走行為や過積載状態での走行など、危険な用途で使用しようとしている場合、所有者はその運行を阻止する責任があります。
このほか、保険に関しては、貸し出し前に必ず確認しておくとトラブルにつながりづらくなります。
運転者が保険に加入しているか、または自分の保険がどこまでカバーするかを確認することが大切です。
昨今では、一日から数日程度の短期間だけ、借りた車を運転する際に利用できる、いわゆる一日自動車保険といったサービスがあります。
所有者は、必要に応じて運転者にこのようなサービスを利用させると賠償や事故対応がスムーズになることがあります。
車を貸す際には、上述のような車の状態、相手の運転適性、使用目的、保険の確認を行うことで、事故やトラブルを未然に防ぐことができます。
貸し出し前の細かなチェックが、もしもの事故の際に所有者の責任を軽減し、トラブルを最小限に抑えるために重要です。
まとめ
このように、車を貸した相手が事故を起こした場合、所有者には運行供用者責任が生じるケースも少なくありません。
そのため、事前に車の状態や相手の運転適性、使用目的、保険を確認することで、万が一の事故時に責任を軽減し、トラブルを最小限に抑えることが重要です。
所有者は車の利用に責任があることを自覚し、車を貸す際のリスク管理を徹底することが必要だといえます。
コメント