映画007に登場した南さつま市の住宅。傷みが激しくブルーシートが掛けられている
世界的な人気スパイ映画「007」シリーズのロケが半世紀以上前に行われた鹿児島県南さつま市で、映画に登場した木造住宅が老朽化し、地元住民らが修復に取り組んでいる。過疎化が進む中、住民らは「聖地として親しまれる場所にして、地元の盛り上げにつなげたい」と意欲を見せ、クラウドファンディング(CF)で全国のファンに支援を呼びかけている。(井芹大貴)
映画の記念碑の前で協力を呼びかける野口さん(左)と桑原田さん
東シナ海に面する同市坊津町秋目地区では1966年、「007は二度死ぬ」(1967年公開)の撮影が行われた。木造平屋の住宅は港を一望できる小高い場所にあり、ジェームズ・ボンド役を演じた俳優ショーン・コネリーさんとボンドガール役の浜美枝さんが、新婚夫婦を装って寝泊まりするシーンが撮影された。
老朽化が進む住宅の内部(一般社団法人「007 AKIME」提供)
映画公開から60年近くがたった今も国内外から多くのファンが地区を訪れ、撮影当時のまま残るこの住宅や映画の記念碑はツアーの立ち寄り先となっている。ただ、築60年以上が経過し、建物はシロアリの被害や屋根の傷みが深刻で、見学できるのは外観のみとなっている。
昨春、住人が転居したのを機に、住宅を受け継いだ地元有志が観光資源としての活用方法を検討。建て替える案も出たが、当時の雰囲気を残す建物を次代に引き継ぎたいとの思いから改修を決めたという。
住民らは7月、一般社団法人「007 AKIME」を設立し、保存活動を本格化。梅雨入り前には住宅内に足場を組んで補強し、屋根の瓦を外してブルーシートで覆うなどの応急処置を施した。8月末に台風10号が接近した際には強風でシートが飛ばされ、一部で浸水の被害なども出たが、損壊は免れた。
同法人は10~11月に修繕工事を行う計画で、将来的にはロケ時の写真などを展示する資料館のような施設を目指す。地区で民宿「がんじん荘」を経営する同法人代表理事の 上塘かみとも 照哉さん(63)は「訪れた人が映画の雰囲気を味わえる場所にしたい」と語る。
地区は過疎化が進み、現在の人口は50人ほど。近くで果樹園を営む同法人監事の桑原田健史さん(36)は「小さな地区だが、皆で知恵を絞って地域おこしにつなげたい」と語り、ガイドを務める野口弘三さん(76)は「全国の007ファンに協力をお願いしたい」と呼びかけている。
CFは30日までで、当面の修繕費など350万円を目標としている。大手CFサイト「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」で受け付けており、寄付者にはオリジナルTシャツやミニタオルなどを贈る。問い合わせは「がんじん荘」(0993・68・0652)へ。
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