「バラを育てるのは難しいんでしょう?」。そう思っている方が、残念ながら多いようですが、バラは意外なほど丈夫で育てやすい植物。草花ではなくて木本(もくほん)だから、めったなことでは枯れません。品種の選び方、管理のコツをおさえて、たくさん花を咲かせましょう。
初めてのバラ選びはイメージから始まる
華やかで存在感のあるバラは「花の王様」と呼ばれます。ガーデニングファンなら一度は育ててみたい花でしょう。けれども、あまりに種類が多くてどれを選んでよいかわからないという声をよく聞きます。
そんなときは、まず自分が育ててみたいバラのイメージを思い描いてみましょう。育てたいのは壁面を伝う「つるバラ」? 鉢植えでコンパクトに咲かせる「ミニバラ」? 庭でボリュームある株に育てる「木立性バラ」でしょうか? つる性と木立性の中間的な「半つる性のバラ」もあります。イメージにあうバラの樹形を覚えておきましょう
つる性/クライミング
自立しない2m以上伸びる枝をフェンスなどに誘引する。一季咲きが多く、おもに庭植え。
つる性アンジェラ
ミニバラ
樹高30㎝くらいまでのコンパクトな樹形。花も小型だが、四季咲き性の品種が多くて、ベランダなどで楽しみやすい。
ミニバラ
ミニバラのグリーンアイス
木立性/ブッシュ
支柱がなくても自立する樹形。鉢でも庭でも育てられる。
木立性
半つる性/シュラブ
木立性よりしなやかな枝が1~2m伸びる。オベリスクに誘引したり、刈り込んでブッシュ状にも楽しめる。鉢でも庭でもOK。
半つる性コンスタンススプライ
あとで後悔しないために大切なのは開花期
バラは西洋の花と思われがちですが、日本にもハマナスやノイバラやテリハノイバラなど自生しているバラがあります。こうした原種をもとに、ヨーロッパでは多くの園芸品種が誕生しました。今も国内外で新しい品種が毎年登場しているので、選ぶのも確かに大変です。
北半球に200ほども分布する「原種」のバラは、ほとんど春に一度だけ咲いて、秋にはローズヒップという実をつけます。こうした咲き方を「一季咲き」と呼びます。19世紀後半には品種改良によって、年に数回咲く「四季咲き」のバラが登場。夏秋にもう一度咲く「繰り返し咲きのバラ」もあります。
植えてしまってから「一度しか咲かない~」とか「ローズヒップがならない」などと、がっかりしないように開花期はしっかり確認しておきましょう。バラの品種名を書いたタグやカタログには必ず記載されています。
一季咲き
春に一度だけ咲く。秋にローズヒップがなる。
原種ハマナスとローズヒップ
四季咲き
ある程度の気温で何度か繰り返し咲く。冬は咲かない。
繰り返し咲き
咲き終わった花がらを切ることで、夏や秋にまた咲く。
バラをどんなスタイルで楽しみたいか、年に何度も楽しみたいか決まったら、そのカテゴリーの品種から好みの花色や花形を選ぶことで、自分の思い描いたようなバラが仕立てられます。
バラは病害虫に弱いのか?
「バラは病害虫に弱いのでは?」という声もよく聞きますが、1年に一度しか咲かない原種に近いバラは強健で、病害虫にも比較的強いものです。四季咲きバラが登場する以前に改良されたオールドローズもしかり。花を大きくとか、四季咲きという改良(?)が進んで、弱い部分もできてしまったようです。
けれども、近年は病気に強いバラがつぎつぎに誕生しています。なかでもドイツの「コルデス」社やフランスの「デルバール」「メイアン」社などから、無農薬でも育てられる丈夫な品種が登場。日本の品種も病気に強く改良されています。新しい品種を取り入れることで消毒の必要がなくなり、バラ育てのイメージが変わります。
狭い庭やベランダでもバラは育てられる
庭が狭いとか、ベランダで育てるのは難しいのでは?などと、バラを諦めている人はいませんか? 壁に添わせるつるバラなら、家と道路の間の奥行き30㎝ほどの植物を植えるスペースがあれば、育てることができます。ベランダでも鉢植えで多くのバラを育てている方がいらっしゃいます。
つるバラは大きなアーチに誘引させるだけでなく、壁やフェンスなどに誘引すると株のボリュームは出ないので、狭い場所でも楽しめます。ただし、つる伸びのよい品種やつるが硬い、トゲが多いような品種は誘引するのが大変なので、性質をよく調べて選びましょう。
鉢植えは1~2年ごとに植え替えが必要です。水やりもふくめて手間はかかりますが、それさえできれば満開の花を好きな場所に飾れるのがメリット。日当たりのよいベランダで咲かせ、日陰の玄関先に飾ることもできます。
つる性
植えつけはいつでも大丈夫
バラの植えつけは基本的にいつでも行えますが、真夏は株の負担が大きいので避けます。ただし、苗の出回る時期はタイプによって決まっているので、覚えておくと便利です。
バラは基本的に原種のような強い台木に、品種の枝を接木(つぎき)しています。伸び出した枝が3~4本あり、太さが均等なものを選びましょう。
大苗
接ぎ木してから1年ほど育てた苗。ポットの中には根がよく張っていて、初心者も安心して育てられます。秋~冬に売り出されるので、11月下旬~2月中旬に植えつけます。
新苗
冬に接ぎ木して翌春に売り出されます。まだ根があまり伸びていませんが、お値段はややお手頃です。4~5月に植えつけします。
鉢は、スリットが入ったり、底が網状になるなどの排水性・通気性のよい深鉢を選んでください。素焼き鉢は重さがありますが、通気性は良好です。用土は市販の培養土に赤玉土小粒を2割ほど混ぜた排水性のよいものや、バラ専用土を用います。
地植えの場合は用土をよく掘り起こし、腐葉土などを混ぜておくとよいでしょう。鉢植えも地植えも緩効性の肥料を元肥として施してから植えつけます。冬から始めて、今年こそ憧れのバラを咲かせてみませんか。
バラ苗
毎年開催される「横浜ローズウィーク」にて。多くの品種や仕立て方が見られて、バラ育ての参考になる。
※2023年2月1日に配信した記事を再編集しています。
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