【動画】今年はどうなの? 55V型有機ELテレビ“ガチ”比較【2024~2025年版】

2024年12月28日

本記事では、2024年に発売された主要有機ELテレビ5機種を横並びで比較する。この動画は価格.comマガジンのYouTubeチャンネルでも公開しているので、各社の「絵作り」の違いをぜひチェックしてみてほしい。

視聴したのは、LGエレクトロニクス「OLED55G4PJB」、TVS REGZA「55X9900N」、パナソニック「TV-55Z95A」、シャープ「4T-C55GS1」、ソニー「XRJ-55A95L」。すべて2024年モデルではあるのだが、ソニーの「XRJ-55A95L」は、実は北米で2023年に発売されていたモデルだ。そのほかの製品は、すでに個別にレビュー記事を掲載済み。概要や機能の詳細についてはそちらを確認してほしい。

左から、LGエレクトロニクス「OLED55G4PJB」、TVS REGZA「55X9900N」、パナソニック「TV-55Z95A」、シャープ「4T-C55GS1」、ソニー「XRJ-55A95L」。すべて55V型の有機ELテレビ

左から、LGエレクトロニクス「OLED55G4PJB」、TVS REGZA「55X9900N」、パナソニック「TV-55Z95A」、シャープ「4T-C55GS1」、ソニー「XRJ-55A95L」。すべて55V型の有機ELテレビ

OLED55G4PJB [55インチ]の製品画像

  • LGエレクトロニクス
  • OLED55G4PJB [55インチ]
  • 価格.com最安価格234,800円 ( 発売日:2024年6月26日 )
  • 売れ筋ランキング101位
  • 価格.comで見る

     

    REGZA 55X9900N [55インチ]の製品画像

  • TVS REGZA
  • REGZA 55X9900N [55インチ]
  • 価格.com最安価格262,272円 ( 発売日:2024年7月12日 )
  • 売れ筋ランキング31位
  • 価格.comで見る

     

    VIERA TV-55Z95A [55インチ]の製品画像

  • パナソニック
  • VIERA TV-55Z95A [55インチ]
  • 価格.com最安価格300,567円 ( 発売日:2024年6月21日 )
  • 売れ筋ランキング51位
  • 価格.comで見る

     

    AQUOS QD-OLED 4T-C55GS1 [55インチ]の製品画像

  • シャープ
  • AQUOS QD-OLED 4T-C55GS1 [55インチ]
  • 価格.com最安価格276,707円 ( 発売日:2024年6月15日 )
  • 売れ筋ランキング107位
  • 価格.comで見る

     

    BRAVIA XRJ-55A95L [55インチ]の製品画像

  • SONY
  • BRAVIA XRJ-55A95L [55インチ]
  • 価格.com最安価格460,486円 ( 発売日:2024年8月10日 )
  • 売れ筋ランキング260位
  • 価格.comで見る

    2024年有機ELテレビの特徴、各社の動向

    ここで紹介しているのは各社の有機ELテレビ最上位モデルだが、実は有機ELパネル自体が異なる。まずはその違いを確認しておこう。

    集めたのは主要メーカーの有機EL最上位モデル5機種。画像内の価格は2024年12月26日時点の価格.com最安価格だ

    集めたのは主要メーカーの有機EL最上位モデル5機種。画像内の価格は2024年12月26日時点の価格.com最安価格だ

    現在、有機ELテレビの最上位モデルでは大きく分けて2種類のパネルが使われている。LGエレクトロニクス、TVS REGZA、パナソニックの3社が使っているのがLGディスプレイ(LGエレクトロニクスの関連会社)製の「MLA(マイクロレンズアレイ)+」パネル。2023年の段階で「MLA」パネルと呼ばれる細かなレンズを敷き詰めたパネルが供給されていたが、その高輝度表示の性能をさらに高めたもの。

    いっぽう、シャープとソニーが採用するのがサムスンディスプレイ製の「QD- OLED」パネル。量子ドット技術を組み合わせた有機ELパネルで、純度の高い三原色の再現が可能であること、高輝度表示が可能という点が特徴だ。厳密に言うと、シャープ「4T-C55GS1」は2024年仕様の「第3世代」パネルで、ソニー「XRJ-55A95L」は2023年仕様の「第2世代」となっている。

    2つに分かれてはいるものの、輝度などのパネル性能に大きな差がなくなっているのが2024年の有機ELテレビ。それでも画質を比べてみると、各社の映像にはけっこうな違いがある。

    有機ELパネルの供給元は大きく分けて2つ。LGディスプレイとサムスンディスプレイだ

    有機ELパネルの供給元は大きく分けて2つ。LGディスプレイとサムスンディスプレイだ

    これはパネルの実力は同程度でも、実際にはハード・ソフト両面に違いがあるからだ。まずパネルの冷却性能を高める背面構造は基本的に各社で独自に作っているため、冷却性能の違いから輝度ピークなどに違いが出る。そしてパネルを駆動する映像処理エンジンも各社で異なるため、パネルの性能をどう生かすか、最終的にどのような絵作りを目指すかの考え方の違いが出ることになる。つまり、動画でも見える有機ELテレビの画質の違いには、パネル性能よりも各社の考え方、絵作りの違いがよく表れていると考えてよい

    また、これも映像処理エンジンに関わる点だが、いわゆる超解像技術をほぼ全社が採用してきている。超解像技術とは解像度・解像感に関わる映像の品位を高める高画質技術のひとつだが、他社に先んじてこうした技術を搭載していたTVS REGZAやソニー、それを追いかけていたLGエレクトロニクスだけでなく、パナソニック、シャープも採用。ベースの性能的には各社が同等になったと言えるが、こうした技術の使いこなしによる差も少なからずある。

    明るい環境でYouTube を見てみる

    リビングルームで使った場合にどう見えるか? を確認するため、明るい環境で各社の「自動」系映像モードをチェック

    リビングルームで使った場合にどう見えるか? を確認するため、明るい環境で各社の「自動」系映像モードをチェック

    まずは明るい環境でテスト。各テレビの映像モードは「自動」系、それに該当する機能がないものは「スタンダード」や「標準」モードとした。さらに、自動画質調整機能や各種の照度・色温度センサーによる画質調整機能をオンとしている。

    再生したのは転送レートが限られるYouTube。解像度は1080/30pで撮影された価格.comマガジンのカメラ比較動画だ。ここでのポイントは、ノイズの目立ち方や精細感、動きのスムーズさ。ダンスを踊る女性だけでなく、解説の人の動きや表情の再現性もわかりやすいチェックポイントだ。

    コンテンツにはあえて1080/30pのYouTube動画をセレクト。各テレビの映像モードは写真のとおり

    コンテンツにはあえて1080/30pのYouTube動画をセレクト。各テレビの映像モードは写真のとおり

    5機種を横並びにすると、すぐにわかるのは映像の明るさ感、色温度に違いがあること。色温度が高めで(全体に青っぽく)明るさ感も強いのがLGエレクトロニクス「OLED55G4PJB」。

    TVS REGZA「55X9900N」とパナソニック「TV-55Z95A」も明るく鮮明、クールなイメージになるがあまり明るさを欲張らない。現場に居合わせた動画の撮影担当の話では、元の映像に近い見え方となっているのはこの2機種だ。

    シャープ「4T-C55GS1」とソニー「XRJ-55A95L」は少し赤みを帯びた(色温度の低い)印象になっているのは、使用パネルの違いもあると思われる。ただし、人の肌が健康的な色になるので決して不自然と感じるほどではなかった。

    ノイズ抑制を重視しているのはLGエレクトロニクス「OLED55G4PJB」とシャープ「4T-C55GS1」。その反面、表情や服の動きなどのディテールは潰れがちになる。

    写真でも明るさや色温度(ホワイトバランス)に違いがあることをわかっていただけるだろう。ぜひ動画で動きやノイズリダクションの違いもチェックしていただきたい

    写真でも明るさや色温度(ホワイトバランス)に違いがあることをわかっていただけるだろう。ぜひ動画で動きやノイズリダクションの違いもチェックしていただきたい

    そのほかの3モデルではノイズは少し目につくが、そのぶんディテールもきちんと出る精細さがある。そのうち、動きにもギクシャクした感じがなくスムーズだったのはTVS REGZA「55X9900N」とソニー「XRJ-55A95L」。普段使い性能が高い2モデルだと言えそうだ。パナソニック「TV-55Z95A」の美点は、女性や解説者の肌の再現性がよかったこと。少し強調感はあるが、トーンの変化が滑らかだった。

    明るい環境でUltra HDブルーレイ(4Kソフト)を見てみる

    HDMIケーブルやLANケーブルで定評のあるエイム電子の8系統HDMIスプリッター「AVS2-18G108」を使用。プレーヤーからの出力をすべて同じ条件で再生している

    HDMIケーブルやLANケーブルで定評のあるエイム電子の8系統HDMIスプリッター「AVS2-18G108」を使用。プレーヤーからの出力をすべて同じ条件で再生している

    続いては品位の高い(4K解像度で映像の転送レートも高めな)Ultra HDブルーレイソフトを見てみる。明るい環境はそのままで、プレーヤーからの出力をエイム電子のHDMIスプリッターで分岐してすべてのテレビへ同時出力している。

    再生映像はビコムの「8K空撮夜景 SKY WALK TOKYO/YOKOHAMA」。タイトルとおり、8Kで撮影された映像が収録されている

    再生映像はビコムの「8K空撮夜景 SKY WALK TOKYO/YOKOHAMA」。タイトルとおり、8Kで撮影された映像が収録されている

    ビコムの「8K空撮夜景 SKY WALK TOKYO/YOKOHAMA」(以下「8K夜景」)では、夜景になる前の夕焼け空にかなり差が出ていた。夕焼けらしい真っ赤な赤をきれいに見せてくれたのは「QD-OLED」勢のシャープ「4T-C55GS1」、ソニー「XRJ-55A95L」。わずかな差だがシャープ「4T-C55GS1」はやや青みが入った濃厚な赤で、“純赤”と感じるのはソニー「XRJ-55A95L」か。

    夜景のシーンでは、明部と暗部それぞれに露出を合わせて撮影。明部に合わせた映像では明部の階調性を、暗部に合わせた映像では暗部の階調性を確認していただきたい

    夜景のシーンでは、明部と暗部それぞれに露出を合わせて撮影。明部に合わせた映像では明部の階調性を、暗部に合わせた映像では暗部の階調性を確認していただきたい

    写真は明部に露出を合わせた映像。特にTVS REGZAで橋桁の足元の照明がかなり明るく見える。これは「55X9900N」が夜景に最適化するアルゴリズムを採用しているから

    写真は明部に露出を合わせた映像。特にTVS REGZAで橋桁の足元の照明がかなり明るく見える。これは「55X9900N」が夜景に最適化するアルゴリズムを採用しているから

    夜景のシーンでひときわ目を引いたのがTVS REGZA「55X9900N」。レインボーブリッジからビル街に迫っていくシーンでは、橋桁の足元の照明がかなり明るいし、ビルの窓やイルミネーションなどの灯りも鮮やかだ。各社ともにライトはしっかりまぶしく、海や空は暗く沈むように再現しているが、TVS REGZA「55X9900N」ではその度合い、コントラスト感が特に強い。これは同社の独自の高画質処理「AIシーン高画質PRO」の効果だろう。AIがシーン判別を行い、夜景と判定した映像に対して最適な処理(絵作り)が加わるのだ。

    暗部に露出を合わせた映像を見ると、黒の再現性・暗部の階調表現の違いがわかる。パナソニック「TV-55Z95A」、LGエレクトロニクス「OLED55G4PJB」は全体に明るめで暗部の階調表現も積極的だ

    暗部に露出を合わせた映像を見ると、黒の再現性・暗部の階調表現の違いがわかる。パナソニック「TV-55Z95A」、LGエレクトロニクス「OLED55G4PJB」は全体に明るめで暗部の階調表現も積極的だ

    海面に映った橋桁を見るとわかりやすいが、黒の引き込みが強い(暗部が潰れがちな)のはシャープ「4T-C55GS1」。逆に反射した橋桁をいちばんよく見せているのはパナソニック「TV-55Z95A」。パナソニックの暗部階調表現がすぐれていることを確認できる。

    TVS REGZAの特殊機能による鮮やかさを別とすると、夜景がいちばん華やかに見えるのはソニー「XRJ-55A95L」。コントラスト再現のバランスがよく、色もしっかりと出ていることが理由だろう。

    全体が明るめになるシーンでは、暗部をどのように再現するかの違いがよくわかる。本来の映像信号のとおりと思われる階調感で薄暗い部分もしっかり見せるのは、やはりパナソニック「TV-55Z95A」。LGエレクトロニクス「OLED55G4PJB」も全体に明るいこともあって暗部が見やすく仕上げられている。

    黒の引き込みが強く、少し黒が浮いた感じになる(薄暗くなる)はずの空も黒く潰れがちになるのはシャープ「4T-C55GS1」とソニー「XRJ-55A95L」。コントラスト感の高い映像とも感じるが、本来は少し見えてほしい部分が黒く潰れてしまうこともありそうだ。

    暗い環境で忠実志向の「映画」系モードを試してみる

    ここからは部屋を真っ暗にした環境で視聴。外光も入らない全暗と言ってよい状態だ

    ここからは部屋を真っ暗にした環境で視聴。外光も入らない全暗と言ってよい状態だ

    今度は外光の影響もない日没後に、部屋の照明を落とした環境(全暗)で画質をチェック。映像モードは各社とも映画系のモード(「映画」や「シネマ」など)。

    映画系のモードは、基本的には質の高い映画ソフトなどを作り手の意図を尊重して忠実に再現するモードだ。暗い部屋で映画を見ることを前提にしていることが多く、あまりテレビで絵作りをしないモードと考えてよい。

    いっぽうで明るい環境で映画らしい映像を楽しむための映像モードというのも存在する。メーカーによって名称が異なるので注意が必要だ。

     

     

    各テレビの映像モードは上のとおり。すべて暗い部屋で映画を見ることに向いたモードに統一している

    各テレビの映像モードは上のとおり。すべて暗い部屋で映画を見ることに向いたモードに統一している

    テレビの説明書も参照しつつ各社の暗い部屋で映画を見るときのモードを選んだものの、LGエレクトロニクス「OLED55G4PJB」は画面全体が明るく、夜空はもちろん海も少し黒が浮き気味(真っ黒に見えてほしいところが薄暗くなっている)。これはテレビの高輝度化も相まって、明るさやわかりやすさを重視したコンセプトなのかもしれない。

    旧来どおりに暗い環境を想定して忠実感のある絵作りをしているのはTVS REGZA「55X9900N」とパナソニック「TV-55Z95A」。少しコントラスト感を強めた感じはあるがソニー「XRJ-55A95L」も同様だ。シャープ「4T-C55GS1」は黒をしっかりと沈めてコントラスト感を強め、いっぽうで積極的にライトやビル街の明るさを強調していく方向だ。

    映画系のモードでも全体に明るい映像を志向していたのがLGエレクトロニクス。シャープは明部を積極的に明るくして、コントラスト感を強調する絵作りと言える

    映画系のモードでも全体に明るい映像を志向していたのがLGエレクトロニクス。シャープは明部を積極的に明るくして、コントラスト感を強調する絵作りと言える

    このあたりは、映画のような暗めのシーンが多い作品をどのような環境で見るかによって印象が異なる。動画で各社の画質を比べるときも、実際に自分が部屋を暗くして映画を見るかどうかを考えながらチェックするとよいだろう。

    「Train Night View 夜のゆりかもめ 新橋~豊洲 全線往復」を再生すると、明るいものをしっかり明るく見せようというシャープのコンセプトがよくわかる

    「Train Night View 夜のゆりかもめ 新橋~豊洲 全線往復」を再生すると、明るいものをしっかり明るく見せようというシャープのコンセプトがよくわかる

    映画系モードの見せ方の違いでは「Train Night View 夜のゆりかもめ 新橋~豊洲 全線往復」の夕暮れのシーンもわかりやすい。いちばん明るく見せるのはシャープ「4T-C55GS1」。空は白に近く、夕暮れが昼間のシーンにも見えてしまう。その分、高架下の道路などは見通しがよい。

    LGエレクトロニクス「OLED55G4PJB」もそれに近い印象で見通しがよく、精細感もある。ほかの3社はしっかりと夕暮れの薄暗い感じが伝わるが、夕方の空がいちばん赤いのがソニー「XRJ-55A95L」。夕暮れ感はいちばんある。

    奥にある大きな建物が比較的鮮明に見えるTVS REGZA「55X9900N」は全体が明るいというわけではないが、景色の見通しのよさは確保されている印象。パナソニック「TV-55Z95A」は忠実に夕暮れ感やリアルな階調を再現する。ソニー「XRJ-55A95L」と比べると、画面全体が夕暮れで赤く染まった感じがやや不足する印象ではある。

    今回こうした夕暮れのシーンを意識して見ているのは、晴れ渡った昼間など絶対的なパネル輝度の実力が試されるようなシーンでは各社とも甲乙つけがたくなってしまうため。こうした中間的な明るさの映像をどう見せるかで各製品のコンセプトの違いがよりわかりやすくなると考えたのだ。

    忠実再現志向が基本の映画モードでも、このように各社の考え方の違いが表れるのがよくわかったと思う。もしもよりストイックに、マスターモニターのような忠実度で映画を見たいという人は、「FILMMAKER MODE」や、「Netflix画質モード」のようなより忠実志向の強い映像モードを選ぶという方法もある。気になる人は各社の映像モードを確認してみよう。

    日が沈んだ後の様子では、暗部の階調性やホワイトバランスの違いがわかる

    日が沈んだ後の様子では、暗部の階調性やホワイトバランスの違いがわかる

    完全に日が沈んだ豊洲駅のホーム内では、各社の暗部階調再現性の違いがわかる。いちばん明るいのはやはりLGエレクトロニクス「OLED55G4PJB」。シャープ「4T-C55GS1」がそれに続くが、最暗部が引き込みがち(黒が潰れがち)になるのでよりコントラスト感のある映像になる。

    LGエレクトロニクス「OLED55G4PJB」がうまいのは、全体に明るくとも最明部の階調性を確保している点。ホーム内より明るい車内も白飛びせずに見えるのだ。いっぽうのシャープ「4T-C55GS1」はやや白が飛び気味。

    TVS REGZA「55X9900N」、パナソニック「TV-55Z95A」、ソニー「XRJ-55A95L」はホーム内の明るさ、床の黄色いガイドラインの色もはっきりしているし、車内が明るいことがよくわかり白飛びもない。暗部、明部ともに階調性にすぐれたバランスのよい再現だ。この3機種は僅差だが、ソニー「XRJ-55A95L」は最暗部が沈み気味で、TVS REGZA「55X9900N」はごくわずかに画面全体が明るく夕焼け空が白っぽい。トータルではパナソニック「TV-55Z95A」が最もリアルな再現になっていると言える。

    普段使いのテレビとして映り込みの差も気にしたい

    今回取り上げたテレビは、暗室ではまぶしいくらいの高輝度を得ていた。明るい部屋でも十分にコントラスト感のある映像が楽しめる。多くの人は映画を見るときに暗室にしていないと思う。それでも筆者は映画を見るときは部屋を暗くしている。その理由のひとつが映り込み。画面が暗転したときなど、自分や部屋の中が映り込んで映画への没入がそがれるからだ。

    この映り込みについては各社が低反射処理をパネルに施すなどの努力をしてずいぶんと改善されてきた。それでも各社には差があったので、ここでその違いを報告しておこう。

    明るい環境で電源をオフにした状態とすると、どんなテレビでも多少なりとも周囲が映り込むが、いちばん映り込みが少なかったのはソニー「XRJ-55A95L」。各社とも画面は鏡のような光沢ではなく、映り込み低減も含めて少し艶を落としたハーフグレアになっているため映り込みは少なめだが、ソニー「XRJ-55A95L」だけが特に映り込みが少なかった。

    正面に座って電源オフの画面を見てみると、ソニー「XRJ-55A95L」の映り込みが最小として、次に映り込みが少ないのがシャープ「4T-C55GS1」(何となく人影がわかる)、ほかの3機種はほぼ同じで、ぼんやりとだが自分が映っているのがわかる。

    こうしてみると、サムスンディスプレイ製「QD-OLED」パネルはそもそも映り込みに強いのかもしれない。テレビの画面が大きくなると、まるで鏡のような黒い板が常に部屋の中に置かれることになるので、映り込みが気になる人も少なくないだろう。特に明るい部屋の視聴では影響が大きいので、気になる人はよくチェックしておこう。

    【まとめ】テレビを見る環境も意識して動画を見比べよう

    今回のテストでは有機ELパネル自体の性能差がほとんどなくなったため、各社の絵作りの違いがよくわかった。

    それぞれの印象は手短にまとめていくと……

    明るく見やすさを重視したLGエレクトロニクス「OLED55G4PJB」

     

    LGエレクトロニクスは画面全体の明るさを意識した絵作り。映画であっても明るい部屋で気軽に楽しんでほしいという意図を感じる。しかもただ明るいのではない。LGディスプレイ製の有機ELパネル(WRGB方式)では「明るくなると画面が白っぽくなる」と一般的に指摘されることがあるが、「OLED55G4PJB」は明部にもしっかりと色をのせて薄味な絵にはしないところがよい。精細感などについても、ノイズが目立ちにくいように積極的に処理し、見やすくまとめていると感じた。

     

  • 関連記事

    驚くほどの明るさ! もはや“リビング向き”の有機EL「G4」シリーズレビュー

    驚くほどの明るさ! もはや“リビング向き”の有機EL「G4」シリーズレビュー

    LGのとにかく明るい有機ELテレビ「G4」の画質・音質をレビュー。暗闇で映画を見るだけでなく、明るいリビングで快適に大画面を楽しみたい人にぴったりのテレビです。

    2024/11/09 7:00:00

  • 輝度を誇示するよりも暗部階調を重視したTVS REGZA「55X9900N」

     

    TVS REGZAの2024年モデル「55X9900N」は明るくなったパネルを得たことが大きい。しっかりと明るさ感を出しながら、従来どおりの暗部階調性や高精細で立体感のある映像に磨きをかけてきた印象。完成度はかなり高くなったと感じる。夜景のような典型的な映像を学習しておき、それに最適化した映像処理を行うのもよいアイデアで効果的。すぐれた技術だと思う。

     

  • 関連記事

    REGZAの有機EL「X9900N」と「X8900N」の画質差はどれほどなの?

    REGZAの有機EL「X9900N」と「X8900N」の画質差はどれほどなの?

    TVS REGZAの有機ELテレビ「X9900N」シリーズの画質・音質をレビュー。弟機「X8900N」と比較視聴すると、価格差相応の画質差があることもわかりました。

    2024/10/30 7:00:00

  • 映画画質の完成度が見事なパナソニック「TV-55Z95A」

     

    完成度の高さ、熟成度という点ではパナソニック「TV-55Z95A」も見事なもの。階調性を厳しく見ていくと「TV-55Z95A」がいちばんスムーズだし、トータルバランスにすぐれる。特に映画でのバランスが最高。明部、暗部の階調表現が自然なのだ。2024年のモデルは、特に地デジなどの精細感が増したので、映画以外のコンテンツもバランスのよい絵で楽しめるようになった点も評価したい。

     

  • 関連記事

    画質・音質が揃う有機ELの大本命! パナソニック「Z95A」レビュー

    画質・音質が揃う有機ELの大本命! パナソニック「Z95A」レビュー

    パナソニックの有機ELテレビは画質重視の「ディスプレイ」として定評がありますが、「Z95A」は地デジ画質もアップデート。OSはFire TVで、使いやすく進化しました。

    2024/12/03 7:00:00

  • テレビ番組も映画も“映える”シャープ「4T-C55GS1」

     

    シャープ「4T-C55GS1」は明るい映像と豊かな色で、見映えのある映像を楽しめる。超解像技術で精細感を加えつつも人工的な映像にはせず、不自然さや強調感を抑えた再現性だ。コンテンツに合わせて画質を最適化する「AIオート」モードはテレビ放送を楽しく見るという点では優秀な実力だと思う。LGエレクトロニクスと同様に、「映画」モードは比較的明るい環境でも楽しめそうな明るめの映像になる。

コメント