老後の年金に対する不安の声は高まる一方です。
しかし、なかには「自分は厚生年金をもらえるから大丈夫」と安心している人もいるかもしれません。
ねんきん定期便やねんきんネットなどで見込額をチェックし、生活費と照らし合わせるなどして十分に試算した上で大丈夫と判断しているなら良いでしょう。もし、「厚生年金は手厚いらしいから」というイメージだけでそう感じているのであれば、この記事でシニアの年金事情を確認してみてください。
実は、厚生年金の加入者でも、月額10万円に満たないケースも少なくないのです。本記事で、詳しく見ていきたいと思います。
1. 老後に「国民年金+厚生年金」を受けとれる人とは?
まずは、老後に「厚生年金」を受け取ることができる人の条件について整理しておきましょう。
日本の公的年金制度には、「国民年金」と「厚生年金」の2種類があり、現役時代の働き方によって厚生年金の受給資格が決まります。
この年金制度は2階建ての構造になっており、1階部分にあたる「国民年金」は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入対象となっています。
公的年金は「2階建て」構造
一方で、2階部分にあたる「厚生年金」は、主に会社員や公務員が国民年金に上乗せする形で加入する年金制度です。
つまり、国民年金は日本国内に住むすべての人が原則として受給できますが、厚生年金は現役時代に会社員や公務員として勤務していた人のみが受け取ることができる仕組みになっています。
【年金の受給対象者の違い】
では、「国民年金のみを受給している人」と「国民年金と厚生年金の両方を受給している人」とでは、実際の受給額にどの程度の差があるのでしょうか。
1.1 「国民年金」と「厚生年金」平均月額はいくら?
次に、「国民年金」と「厚生年金(国民年金を含む)」の平均受給額について見ていきましょう。
厚生労働省年金局が公表している「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、それぞれの平均月額は以下のとおりです。
【国民年金の平均月額】
【厚生年金の平均月額(国民年金を含む)】
国民年金は保険料が一律のため、受給額に大きなバラつきはなく、平均額は全体および男女別ともに5万円台となっています。
2025年度の国民年金の満額は「6万9308円」と定められていることからも、国民年金のみで月に10万円以上の年金を受け取るのは難しいのが実情です。
一方で、厚生年金の平均受給額は全体で14万円台ですが、男女間で約6万円の開きがある点が特徴です。
厚生年金は年収に応じて保険料が決まるため、国民年金に比べて受給額の差が大きく、「月額10万円未満」の受給者も一定数存在します。
次章では、厚生年金の受給状況について、さらに詳しく見ていきましょう。
2. 【厚生年金】基礎年金を合わせても「月額10万円未満」は意外と多い
厚生労働省年金局が公表している「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、厚生年金の受給者がどれほどの年金を受け取っているかが詳細に示されています(以下のデータには国民年金分も含まれています)。
【一覧表】厚生年金の平均月額
出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
【厚生年金の受給額ごとの人数】
- 1万円未満:4万4420人
- 1万円以上~2万円未満:1万4367人
- 2万円以上~3万円未満:5万231人
- 3万円以上~4万円未満:9万2746人
- 4万円以上~5万円未満:9万8464人
- 5万円以上~6万円未満:13万6190人
- 6万円以上~7万円未満:37万5940人
- 7万円以上~8万円未満:63万7624人
- 8万円以上~9万円未満:87万3828人
- 9万円以上~10万円未満:107万9767人
- 10万円以上~11万円未満:112万6181人
- 11万円以上~12万円未満:105万4333人
- 12万円以上~13万円未満:95万7855人
- 13万円以上~14万円未満:92万3629人
- 14万円以上~15万円未満:94万5907人
- 15万円以上~16万円未満:98万6257人
- 16万円以上~17万円未満:102万6399人
- 17万円以上~18万円未満:105万3851人
- 18万円以上~19万円未満:102万2699人
- 19万円以上~20万円未満:93万6884人
- 20万円以上~21万円未満:80万1770人
- 21万円以上~22万円未満:62万6732人
- 22万円以上~23万円未満:43万6137人
- 23万円以上~24万円未満:28万6572人
- 24万円以上~25万円未満:18万9132人
- 25万円以上~26万円未満:11万9942人
- 26万円以上~27万円未満:7万1648人
- 27万円以上~28万円未満:4万268人
- 28万円以上~29万円未満:2万1012人
- 29万円以上~30万円未満:9652人
- 30万円以上~:1万4292人
この統計をもとにすると、月あたりの年金受給額が10万円未満の人は全体の約21.2%を占めており、およそ5人に1人の割合で該当します。
厚生年金は、国民年金に比べて手厚いイメージをおもちの方は少なくないでしょう。
しかし、実際には多くの人が10万円に満たない年金額で暮らしています。
3. 年金に関するよくある誤解とその真実
老後の生活設計を考えるうえで欠かせない公的年金制度。しかし、その内容にはさまざまな誤解がつきものです。ここでは、特に多い3つの誤解について、正しい情報を整理します。
3.1 「40年納めれば満額」が意味するもの
国民年金は40年間保険料を納めれば満額(2025年度は月額6万9308円)受け取れます。
ただしこれはあくまで基礎年金の話で、厚生年金には「満額」という概念はなく、収入と加入期間に応じて受給額が決まります。
3.2 専業主婦(夫)も年金をもらえる
「自分は年金に加入していないから将来もらえない」という声を耳にしますが、配偶者が厚生年金に加入していれば、専業主婦(第3号被保険者)として保険料免除のまま老齢基礎年金を受け取れる仕組みになっています。
3.3 保険料免除期間も無駄ではない
経済的理由で保険料を全額免除された場合でも、その期間は年金額の1/2として加算されます。追納制度もあり、将来の年金を増やす選択肢も残されています。
正しい知識をもとに、年金制度を上手に活用することが老後の備えには欠かせません。
4. 将来、自分が年金をどのくらい受けとれるのかチェックしてみよう!
本記事では、老後に受け取る年金の平均額や厚生年金の受給状況について、詳しく取り上げました。
「厚生年金=高額」とイメージされることもありますが、実際は加入期間や給与水準によって、受給額が月10万円に満たないケースも珍しくありません。
まだ自分の年金見込み額を確認していない方は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で早めに確認しておくことをおすすめします。
もし将来の受給額が想定よりも少ない場合には、現役時代から取り組める対策も存在します。早いうちから準備を進めることで、より安心した老後を迎えることができるでしょう。
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