2024年7月10日、日経平均株価は史上最高値の4万2224円2銭を記録した。その一方で、8月には過去最大の暴落幅を記録し、株価乱高下の時代に突入している。インフレ時代の今、自分の資産を守り抜いていくために私たちはどのような対策をすべきなのか。NVIDIA急成長の背景や新NISAとの向き合い方を見直しながら、日本経済の未来について考えていかなくてはならない。
本連載では世界的経済アナリストのエミン・ユルマズ氏と第一生命経済研究所の永濱利廣氏が語る日本経済復活のシナリオを、『「エブリシング・バブル」リスクの深層』より一部抜粋・再編集してお届けする。
『「エブリシング・バブル」リスクの深層』連載第22回
アベノミクスの効果
永濱:永濱利廣(ナガハマ トシヒロ)。第一生命経済研究所首席エコノミスト。1995年第一生命保険入社。98年より日本経済研究センター出向。2000年より第一生命経済研究所経済調査部、16年より現職。景気循環学会常務理事、衆議院調査局内閣調査室客員調査員などを務める。
普通、世界の株価指数は連動して動きますが、2011〜2012年ごろの日経平均は、世界の中で唯一上がっていませんでした。1980年代から1990年代の「ジャパン・バッシング」になぞらえて、「ジャパン・パッシング」と言われていましたが、世界の投資家が日本株だけ素通りしていたのです。
ただ、2012年12月に第2次安倍政権が誕生。2013年3月には日銀の白川総裁が任期満了を待たずに辞任。後任に財務省出身の黒田東彦氏が任命され、いわゆる異次元緩和政策がスタートします。
こうして「アベノミクス」が始まったことで、それまでの異常な円高・株安が是正されました。外国人投資家に対して、日本株を持たないリスクを意識させることに成功したのです。少なくともこの点だけでもアベノミクスには効果があったと思います。
そもそも経済政策の評価としては、株価が上がったという点より、雇用の増加のほうが重要だと思いますが、アベノミクスによって日本の雇用は500万人ほど増えていますので、その点でも評価に値すると思います。
「国民負担率の急上昇」が個人消費を痛めつけている
ただ、残念ながらアベノミクスは「3本の矢」をすべて放つ前にブレーキをかけられてしまいました。
G7諸国の国民負担率の変化幅を、2010年を基準に見てみると、一目瞭然ですが、日本の国民負担率だけダントツで上がっています。日本ではアベノミクス開始以降、消費税が2度にわたって引き上げられたほか、社会保険料負担も引き上げられました。景気が悪い中、家計にこれだけの負担を強いれば、個人消費は伸びません。日本経済が海外に劣後するのは当然というべきです。
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