ソフトバンクGは米AI開発に78兆円投資…石破首相と経団連が頭を抱える「国内設備投資」の苦しいソロバン

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トランプ米大統領(右)と孫正義会長(2024年12月)/(C)ロイター拡大する

ソフトバンクグループ(SBG)は1月21日、対話型人工知能(AI)「チャットGPT」を開発した米新興企業オープンAIや米IT大手オラクルなどとともに、米国のAI開発に4年間で5000億ドル(約78兆円)を投資する新会社「スターゲートプロジェクト」を立ち上げると発表した。うち1000億ドル(約15兆5000億円)は「直ちに開始する」という。
 新会社は、AIインフラ整備に向けて、ソフトバンクグループ、オープンAI、オラクル、UAEアブダビ首長国が支援するMGXが共同出資し、南部テキサス州で設立。ソフトバンクの孫正義氏がスターゲート会長に就任する。
 孫氏はトランプ大統領、オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)らが同席する記者会見で「数十万もの米国の雇用を創出するとともに、全世界に経済的利益をもたらす」と強調した。トランプ氏は孫氏のことを「マサ」と気楽に呼ぶほどの間柄だ。

 約78兆円という金額には驚かされるが、そのすべてをソフトバンクが引き受けるのではないとしても、「日本国内投資ではなくアメリカでの投資であることに違和感を覚える」(野党幹部)という声が聞かれる。SBGだけで78兆円もの資金が米国にキャピタルフライトするようなものだからだ。

■「円売り」加速の危険性
 実は「家計も企業もキャピタルフライトを加速させている。投機筋は仕掛けどころを探っているのかもしれない」(市場関係者)とされる。条件次第では投機筋による「円売り」が一気に進む危険性すらある。
 家計部門での最近の動きは海外向けの投資信託が好調で、財務省統計では昨年の海外株式に対する投資信託の純投資額は10兆円と23年の2.9倍に達している。今年に入って倍増に近い伸びを示しており、今の勢いでいけば20兆円になるかもしれないと予想されている。家計部門からの資金の海外流出がかなりの勢いで伸びているわけだ。
石破茂首相と経団連の十倉雅和会長らは1月27日、会合を開き、十倉会長は民間企業の国内設備投資について「2030年度に135兆円、40年度に200兆円を目指して官民で努力すべきと考えます」と強調した。国内のリスクマネーが海外に流出している現状に危機感を持っているのだろうが、「家計・企業とも海外の成長を取り込もうと海外投資に動いている。国内の成長力は相対的に見劣りする」(市場関係者)と言っていい。笛吹けど踊らずにならなければよいのだが……。

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