世界の核弾頭数は計1万2000発 運搬高度化 迎撃困難に

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世界の核弾頭数は約7万発あった米ソ冷戦期のピーク時から減少し、約1万2千発と推定される。そのうち9割を保有する米国とロシアによる核軍縮協定「新戦略兵器削減条約」(新START)は完全履行が危ぶまれる状態が続いている。ロシアが侵略するウクライナに向けて核弾頭を搭載できる新型の極超音速中距離弾道ミサイル「オレシニク」を発射するなど、運搬手段の高度化への懸念も強まっている。

米政策研究機関「軍備管理協会」によれば、核弾頭の国別保有数は、米国が5748発、ロシアが5580発、中国が500発、フランスが290発、英国が225発。中国は2030年までに核弾頭数を約1千発に増やすと推定され、不透明な核戦力の増強が指摘される。

米英仏露中の5カ国は核拡散防止条約(NPT)で「核兵器国」と定められている。一方、NPT非加盟国では、インドやパキスタンがそれぞれ170発程度を保有するとみられ、保有を認めも否定もしないイスラエルは90発保有していると推定される。NPTから一方的に脱退を表明した北朝鮮は50発の核弾頭を持つとされる。イランは「直ちに核拡散が懸念される国」(同協会)だ。

国際社会が警戒を強めているのが、ロシアによる高度な運搬手段の開発や関連技術の北朝鮮への移転だ。

プーチン露大統領は11月下旬、ウクライナ東部に向けて発射したオレシニクについて、「北大西洋条約機構(NATO)の能力では迎撃不可能だ」として、NATOを牽制(けんせい)した。北朝鮮に対し、軍事支援の見返りにオレシニクなど最新ミサイルや関連技術を提供する事態も想定される。

ロシアは23年2月、新STARTの履行停止を一方的に発表した。これを受け、米側も核戦力に関する一部データの共有停止を表明。新STARTが期限を迎える26年以降、米露の核戦力を制限する条約がなくなる恐れがあり、日本などは完全履行を呼びかけている。(岡田美月)

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