令和6年度は45.1%になると予想される「国民負担率」とは?

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税金や社会保険料の負担の重さを表す指標として、しばしば「国民負担率」が用いられています。日本の国民負担率は、40%を超えて50%に迫る水準です。

「頑張って稼いでも、税金や社会保険料でたくさん持っていかれてしまう」という、多くの方が抱いている実感に近い数値といえるでしょう。

1. 国民負担率とは

国民負担率とは、租税および社会保障の負担を合わせた義務的な公的負担の、国民全体の所得総額(=国民所得)に対する比率です。

国民負担率は、以下の式によって計算します。

国民負担率=租税負担率+社会保障負担率

租税負担率=(国税額+地方税額)÷国民所得×100%
社会保障負担率=社会保障の負担額÷国民所得×100%

簡単に言えば、国民が稼いだお金の中から、税金や社会保険料をどれだけの割合で払っているかを示した指標が国民負担率です。

2. 国民負担率と「手取り」の関係性

最近では、与野党間で「手取り」に関する議論が活発化しています。手取りと国民負担率は、言うまでもなく密接に関連するものです。

会社から支払われる賃金からは、所得税や住民税、社会保険料が控除されます。これらの控除を行った後、残った自由に使えるお金が「手取り」です。

しかし、手取りとして残ったお金も、その全額を自由に使えるわけではありません。

消費税やガソリン税(揮発油税・地方揮発油税)など、物やサービスを購入する際に支払う税金があるからです。

国民負担率には、手取りを計算する際に控除する税金や社会保険料だけでなく、物やサービスを購入する際に支払う消費税などの税金も反映されています。

したがって、稼いだお金全体のうち何%を自由に使えるのかを知るためには、手取りだけでなく国民負担率にも注目すべきでしょう。

3. 日本の国民負担率は40~50%で推移

出典:負担率に関する資料 国民負担率(対国民所得比)の推移|財務省

日本の国民負担率は、平成25年度(2013年度)に初めて40%を超えて以降、40%~50%の範囲内で推移しています(上記グラフの青線を参照)。

令和6年度(2024年度)の国民負担率は、45.1%となる見込みです。

簡単に言えば、日本国民全体を平均すると、自由に使えるお金は収入の半分強しかないということになります。

なお、上記グラフ中の「財政赤字を含む国民負担率」とは、国民所得に対する国の財政赤字額の割合を国民負担率に加えたものです。

4. 国民負担率に影響し得る最近の政策動向

国民負担率に影響し得るのは、以下の3つの要素です。

・国民所得
・税収
・社会保障費

国民所得については、近年では最低賃金の大幅な値上げが相次いでいるほか、各企業において積極的な賃上げの動きが見られるようになっています。

物価高をカバーしきれているとは言い難いですが、国民所得の増加はある程度期待できる状況です。

税収に関しては、近年では税収額が上振れていることや、2024年10月に投開票された衆議院議員選挙の結果を踏まえて、与野党間で減税の議論が行われています。

特に、自民・公明・国民民主の3党間で「103万円の壁」の引き上げと「ガソリン税の暫定税率」の廃止が合意されたことは、世間の注目を集めています。

その一方で、防衛増税などの議論も行われており、トータルで国民の税負担がどのように変動するのかは不透明な状況です。

社会保障費については、少子高齢化が加速していることが影響して、近年では社会保険料の値上げが続いています。今後も社会保障費が増大する可能性はきわめて高く、国民負担率にとっては悪影響となる見通しです。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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