出水の武家屋敷観光を牛車で支えた黒毛の「ちはる」13歳、天国へ 大河ドラマ「西郷どん」にも出演 10年の労をねぎらい関係者ら感謝の別れ

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運行中に休憩する「ちはる」=2024年7月28日、出水市麓町

 黒毛和牛が引く鹿児島県出水市の観光牛車で、10年近く活躍してきた雌「ちはる」が11日、息を引き取った。13歳だった。2日まで運行していたが、高齢もあって体力が急激に衰えた。スタッフは「よく頑張ってくれた。お疲れさま」と長年の労をねぎらい、感謝した。後継の「いずみ」(2歳雌)を調教中のため、牛車はしばらく運休する。
 牛車は観光振興を目的に、2004年の九州新幹線と肥薩おれんじ鉄道の開業に合わせて始まった。最大13人乗りの御所車を引いて出水麓武家屋敷群のコース1キロを巡り、地元の観光名物に成長した。
 「ちはる」は6代目として15年10月にデビュー。18年のNHK大河ドラマ「西郷どん」では、主演の鈴木亮平さんが牛を引くシーンで出演したこともあった。新型コロナウイルスが落ち着いてきた最近は、県外のツアー客のもてなしにも奮闘していた。
 運営するNPO法人いずみ観光牛車会によると、2日に同市野田であったイベントでの出番が最後となった。スタッフの得永小夜子さん(64)と川辺壮市さん(75)は「おとなしくて、とても頭のいい牛だった。近くの子どもたちもよく声をかけてくれた」と残念がる。「素晴らしい活躍だった。思い出をいっぱいありがとう」と感謝する。
 「いずみ」は1年ほど前から時々、麓武家屋敷群に来て、「ちはる」と仲良くしたり、スタッフに引かれて歩いていたりしていた。最近、本格的な調教がスタート。9日は御所車を引き、コースを1周した。牛車会は「ちはるの思いを引き継いでくれると思う。大切に育てたい」としている。問い合わせは、市観光特産品協会=0996(79)3030。

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