天孫降臨伝承が残る日本神話の名舞台・霧島 歴史と絶景を満喫できる霧島錦江湾国立公園の魅力

天孫降臨のもう一つの舞台・高千穂峰(霧島連山)を始め、瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)を祀る霧島神宮など、鹿児島県中央部には、神話にまつわる名舞台がひしめいている。合わせて、錦江湾を取り巻く霧島錦江湾国立公園には、桜島や開聞岳、佐多岬などの絶景地が目白押し。歴史の名舞台と大絶景をともに楽しめる、実に贅沢なところなのである。


■高千穂峰の麓に鎮座する霧島神宮へ

 天孫降臨の舞台として、宮崎県高千穂町と共に名を取りざたされるのが、宮崎県と鹿児島の県境にそびえる高千穂峰である。霧島連峰の第二峰(第一峰は韓国岳)で、標高は1574m。そこに天孫・瓊瓊杵尊が降臨したとのお話も、よく知られるところだろう。山頂には、瓊瓊杵尊が国家の安定を願って突き立てたという天逆鉾(あまのさかほこ)もある。一説によれば、日本で最初に新婚旅行を行なったという坂本龍馬が、嘘か誠か、突如これを抜いてみせたというエピソードまで伝えられている。

 ともあれ、この霧島山の神を祀ったのが、その裾野に鎮座する霧島神宮だ。ここでは、天孫・瓊瓊杵尊を主神として祀るばかりか、その妃・木花咲耶姫尊(コノハナサクヤヒメノミコト)や、子の彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)と妃・豊玉姫尊(トヨタマヒメノミコト)、孫の鵜鶿草茸不合尊(ウガヤフキアワセズノミコト)と妃・玉依姫尊(タマヨリヒメノミコト)、さらには曾孫に当たる神倭磐余彦尊(神武天皇)まで相殿神として祀っている。

 創建は欽明天皇の御世(6世紀)とされるが、当初はここではなく、高千穂峰山頂近くに建てられていたという。しかし、噴火によって炎上。天暦年間(947〜957)に、瀬多尾越と呼ばれた高千穂河原へと移転している。それもまた炎上したため、文明16年(1484)に現在の地に移されたとか。そんな社殿の変遷も興味深いが、何よりも、柱から梁、長押にいたるまで朱塗りで統一された極彩色の社殿のインパクトが強く、実に印象的。周囲に生い茂る緑の木々と調和して、独特の雰囲気を醸し出しているのだ。

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霧島神宮

 もちろん、時間があれば、ぜひとも、冒頭に記した高千穂峰にも登っておきたいもの。そのルートを簡潔に紹介しておこう。起点となるのは、高千穂河原駐車場である。ここから山頂まで、約3時間30分。霧島東神社からも登山道をたどることができるが、こちらは所要4時間前後みておいた方が良さそうだ。

 ともあれ、高千穂河原駐車場端にそびえる鳥居をくぐって300mほど参道を進んだところが、かつて社殿があった霧島神宮古宮址で、鳥居の先に御鉢と呼ばれる火口が見えてくる。高千穂峰の頂上はその先で、御鉢に隠れてまだ見えない。その鳥居の先の社殿跡が天孫降臨神籬斎場で、真っ白い玉砂利が敷き詰められた先に設けられたのが岩座である。背の馬と呼ばれる幅3mほどの道をたどり、急斜面を登りきったところが高千穂峰の頂上。御鉢まで2時間、さらに山頂まで1時間30分の道のりだ。

韓国岳からみた新燃岳と高千穂峰/写真AC

■霧島錦江湾国立公園で大絶景を満喫

 この霧島山を始め、桜島や開聞岳、佐多岬、錦江湾などの景勝地を含めたのが霧島錦江湾国立公園である。今回はこの地域を中心として、その絶景を満喫したい。もちろん、最初に目指したいのは桜島である。錦江湾(鹿児島湾)の中央にそびえる標高1117mの活火山だ。かつては島であったが、大正3年(1914)の大噴火によって大隅半島と地続きになったもの。誕生したのは2.9万年前と言われるが、それでも比較的新しい火山だとか。

 注目すべきは、今なお頻繁に火山灰を噴出させていることで、モクモクと噴煙を立ち上らせる光景には目を見張らされてしまう。これが日常茶飯の光景というから、感慨深いというべきか。ここ数年間だけをみても、爆発回数は80数回から200数十回にも及ぶというから驚くばかり。降灰も問題で、これが確認されると、役所から克灰袋が配られ、これに降灰を入れて降灰指定置き場に置いておく。と、後に役場の方で回収してくれるというシステムが構築されているようだ。

鹿児島のシンボル・桜島

 もう一つ、薩摩半島の南端にそびえる開聞岳(標高924m)も見逃せない。こちらも有史以来度々噴火を繰り返してきた火山で、平成12年(2000)に、山頂付近で白煙が確認されて話題となったこともある。そんな荒々しさとは打って変わって、遠望すると富士山にもよく似た美しい形状に感服させられてしまう。これが薩摩富士と呼ばれる所以である。

 いずれにしても、これら錦江湾を取り巻く景観は見事という他ない。それを存分に楽しみながら、点在する歴史的遺物に触れ合えることこそ、何にも代えがたい旅の醍醐味と言えるのではないだろうか。

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