実家が「空き家」に!放置するとどうなる?維持費は?知っておきたい“家じまい”が必要な理由/相続実務士®・曽根恵子さん

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2025年、団塊の世代すべてが後期高齢者に。親が亡くなったあと、「実家をどうするか」という問題に直面する人が急増しています。住む予定のない空き家にも、税金や保険料など、思いのほか多くの費用がかかります。とはいえ、売却や賃貸にも手間と時間、そして専門家の力が必要です。今回は、相続実務士®・曽根恵子さんの著書『家じまい・墓じまい・相続 実家問題が全て解決する本』(扶桑社ムック)から、「実家じまいが必要な理由と、空き家にかかる維持費」について紹介します。

実家じまいが必要な理由と空き家にかかる維持費

空き家の放置は近隣住民や行政に迷惑をかけ、さらにあるだけでお金もかかってしまいます。

空き家を放置するとトラブルの原因に

全国で拡大している空き家問題ですが、生まれ育った思い出のある家を残しておきたいという気持ちは理解できます。しかし、だれも住んでいない家はたちまち荒れ放題となります。

3カ月で庭に雑草がはびこり、壁にはカビや苔が生え、屋内は湿気や熱がこもります。

空き家を長もちさせたいなら、月に一度は家の窓をあけて風を通し、季節ごとに清掃や草刈りなどを行って家を保つ必要があります。

いずれだれかが住むだろうと考えても、きちんとメンテナンスされていない家にはだれも住もうと思いません。

老朽化した家は、倒壊や火災などのリスクも高まります。害虫が発生したり、野良猫の住処になったり、場合によっては不審者が忍び込んで犯罪の温床となる可能性さえあります。

もし自分の空き家が原因でトラブルが起こった場合、近隣に迷惑をかけるだけでなく、持ち主が責任を問われることもあるのです。

実家を放置することのリスク

築年数にかかわらず雨風で倒壊の危険性

画像1: 実家を放置することのリスク

人が住まなくなった家は換気不足で湿気がこもるなどから、早く劣化します。

長期間放置すると雨風にさらされることにより建物が劣化し、倒壊のリスクも高まります。

放火や飛び火などで火災のリスクが急上昇

画像2: 実家を放置することのリスク

山火事の飛び火や放火などで火災が起きる可能性が高まります。

無人だと消火対応が遅れるため被害も拡大する可能性があります。

家の周りが雑草だらけ害虫も大量に発生する

画像3: 実家を放置することのリスク

庭にも周辺にも雑草がのび放題となり、害虫も発生して近隣に被害を与えることにもなりかねません。

害虫によって弱ったり枯れた木が倒れることもあります。

野良猫が住みついたり不審者の出入りも!?

画像4: 実家を放置することのリスク

空き家には野良猫が住みつくことがあります。

さらに、不審者が勝手に入り込むなど不法占拠されやすく、周辺の治安を悪化させます。

空家等対策特別措置法改正で罰則が強化

空き家を維持するのに必要なのは、手間ばかりではありません。

空き家はただそこにあるだけでお金がかかります。まず水道、ガス、電気などの光熱費は、まったく使っていなかったとしても基本料金がかかります。

火災保険をはじめとした各種保険料もかかります。これらは払わないこともできますが、電気や水道が使えないと、メンテナンスの手間が余計にかかり老朽化は進みます。

保険に未加入の場合、なんらかの天災で被害を受けても補償を受けられませんし、空き家が原因で被害が広まれば賠償責任を負うことになります。

さらに、不動産の所持には固定資産税と都市計画税がかかります。また、2015年に「空家等対策特別措置法」が施行され、2023年に改正されて罰則が強化されました。

長年放置された空き家は「管理不全空家等」として固定資産税が6倍となり、「特定空家等」に認定されると、自治体による強制解体も可能となります。

この際、解体費は所有者に請求されます。空き家の現状は、きちんと維持管理するか解体するかの二者択一なのです。

空き家を維持するためにかかる年間費用の例

電気
約5000円
電気は明かりだけでなく掃除などでも必要です。

ガス
約2000円
ガスを使わない場合は解約してかまいません。

水道
約1万2000円
トイレや掃除などで水が必要になります。

電話
約1万8000円
電話を使わない場合は解約してかまいません。

火災保険
約5万円
万が一に備えて火災保険への加入が必要です。

庭の選定
約5万円(年2回)
雑草だらけになると病害虫が発生しやすくなります。

移動費
約1万円
移動にかかる高速代などで必要になります。

※上記の金額は一例として参考にしてください。
年間費用は、各種使用料、保険の内容、実家への交通手段などにより異なります。

※本記事は、『実家問題お片付け帳付き!【図解】家じまい・墓じまい・相続 実家問題が全て解決する本』(扶桑社ムック)からの抜粋です。


<監修/曽根恵子 イラスト/岡林玲>

曽根恵子(そね・けいこ)
株式会社夢相続代表取締役。相続実務士®。公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士。出版社勤務後の1987年に、不動産コンサルティング会社を設立し、相続コーディネート業務を開始。相続実務士の創始者として、1万5000件以上の相続相談に対処。夢相続を運営し、感情面、経済面に配慮した“オーダーメード相続”を提案している。TV・ラジオ出演407回以上、新聞・雑誌取材協力980回以上、セミナー講師実績671回以上と幅広く活躍。著書・監修書86冊、累計81万部発行。監修書に『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版』、『子のいない人の終活準備』、『一番かんたん エンディングノート』(扶桑社)などがある。

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