公的年金は、老後の生活を支える大切な柱です。
2025年度には年金額が1.9%増額されましたが、ご自身の年金額がいくらになるのか、そして現在のシニア世代がどのくらい年金を受け取っているのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、日本の2階建て年金制度の基本から、最新の年金額、年代別の平均受給額などを詳しく解説します。
ご自身の老後設計に役立てるため、ぜひ最後までお読みください。
1. 【2025年 年金カレンダー】公的年金の支給日は「偶数月の15日」
公的年金の支給日は「偶数月の15日」です。15日が土日・祝祭日の場合、支給日は直前の平日に前倒しとなります。
【一覧表】2025年 年金支給日カレンダー
出所:日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」などをもとにLIMO編集部作成
年金支給日:支給対象月
このように、前月までの2カ月分がまとめて支給されます。
年金は私たちの暮らしとは切り離せない大切なライフラインです。次で、国民年金と厚生年金の基本をおさらいしておきましょう。
2. 公的年金は「国民年金+厚生年金」の2階建て
日本の公的年金制度は、基礎部分となる「国民年金」と、上乗せ部分となる厚生年金から成り立つ「2階建て構造」です。
「国民年金+厚生年金」2階建ての年金制度のしくみ
出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成
2.1 1階部分:国民年金(基礎年金)
※1 国民年金保険料の月額:2024年度 1万6980円、2025年度 1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の月額:2024年度 6万8000円、2025年度 6万9308円
2.2 2階部分:厚生年金(被用者年金)
現役時代は働き方や立場に応じて「国民年金のみに加入する人」「厚生年金に上乗せ加入する人」に分かれます。
老後に受け取る年金は、厚生年金に加入していた人であれば「国民年金+厚生年金」です。厚生年金加入期間がない人の場合、「国民年金のみ」となります(※4)。
※3 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算されます。
※4 受給資格期間(保険料納付済期間と保険料免除期間などの合算)が10年以上ある場合、65歳以降で受給できます。
次は、厚生労働省の一次資料をもとに、今のシニア世代が実際に受け取っている年金額の平均を見ていきます。
3. 【一覧表】60歳~90歳以上「令和の老齢年金世代」国民年金・厚生年金の平均はいくら?
ここからは、令和の老齢年金世代がどの程度の年金を受け取れているか見ていきましょう。
厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、国民年金と厚生年金(※1)について、年齢階級別(5歳刻み)の平均額と、全受給権者(60歳~90歳以上)の平均年金月額を確認していきます。
※1 厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。
3.1 【一覧表】60歳~90歳以上《国民年金・厚生年金》5歳刻みの平均はいくら?
【一覧表】60歳~90歳以上《国民年金・厚生年金》5歳刻みの平均受給額
出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
国民年金
- 60~64歳:4万4836円
- 65~69歳:5万9331円
- 70~74歳:5万8421円
- 75~79歳:5万7580円
- 80~84歳:5万7045円
- 85~89歳:5万7336円
- 90歳以上:5万3621円
厚生年金
※国民年金部分を含む
- 60~64歳:7万5945円
- 65~69歳:14万7428円
- 70~74歳:14万4520円
- 75~79歳:14万7936円
- 80~84歳:15万5635円
- 85~89歳:16万2348円
- 90歳以上:16万721円
一般的な年金受給開始年齢である65歳以上の平均年金月額は、国民年金(老齢基礎年金)のみを受給する人の場合で5万円台、厚生年金(国民年金部分を含む)を受給する人であれば14万円台~16万円台です。
64歳までは、繰上げ受給を選択した人や(※2)、特別支給の老齢厚生年金(※3)を受け取る人の年金額となっているため、65歳以降よりも低めです。
※2 繰上げ受給:老齢年金を「60歳から64歳」の間に前倒しして受給を始めること。繰上げた月数に応じて減額率が適用されます。
※3 特別支給の老齢厚生年金:昭和60年の法改正により厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられた際、受給開始年齢を段階的に引き上げるために設けられた制度。年齢など一定条件を満たす場合に受け取ることができます。
次では、全年齢の受給権者の平均月額についても見ていきます。
3.2 【一覧表】60歳~90歳以上《国民年金・厚生年金》全体・男女別の平均はいくら?
【一覧表】60歳~90歳以上《国民年金・厚生年金》全体・男女別の平均年金月額
出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
国民年金
- 全体 5万7584円
- 男性 5万9965円
- 女性 5万5777円
厚生年金
※国民年金部分を含む
- 全体 14万6429円
- 男性 16万6606円
- 女性 10万7200円
国民年金のみを受給する場合、全体、男女別ともに平均月額は5万円台です。一方、厚生年金を受給する場合、国民年金部分を含めた平均月額は全体で14万円台です。
一般的には、厚生年金を受け取る人は、国民年金のみを受給する場合と比べて手厚い受給額となります。ただし男性16万円台、女性は10万円台と男女差が大きいです。
また厚生年金を受け取る人の間でも、大きな個人差がある点には留意が必要です。
老後の受給額には、それまでの年金加入状況が反映されます。ご自身の年金見込み額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で把握しておきましょう。
4. 年金額増えても実質目減り。シニアの3割が「年金だけでは日常生活費もまかなえない」現実
公的年金は賃金や物価を考慮して年度ごとに見直しがおこなわれます。
2025年度(令和7年度)の年金額は、前年度より1.9%引き上げとなりました。3年連続のプラス改定ではあるものの、「マクロ経済スライド」によって物価上昇率を下回る改定率となっており、実質的には年金額は目減りしています。
なお、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査 2024」では、60歳代・70歳代の二人以上世帯において、60歳代の32.6%、70歳代の30.6%が「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と答えています。
老齢年金世代が「年金にゆとりがない」と感じる理由
出所:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」をもとにLIMO編集部作成
また、年金にゆとりがないと感じる理由として、下記のような理由が上位に挙がりました。
- 物価上昇で支出が増えると見込んでいるから:60歳代63.3%・70歳代62.8%
- 医療費負担の増加:60歳代28.3%:70歳代34.8%
- 介護費負担の増加:60歳代18.1%・70歳代26.4%
また、介護保険料や後期高齢者医療制度の保険料なども引き上げ傾向が続いています。年金受給者の多くは、こうした社会保険料や税金を老齢年金からの天引きで納めています。
いずれも生涯にわたり納付が必要となるため、シニア世代の負担感が増すことも懸念されるでしょう。
5. まとめ
この記事では、日本の公的年金制度の仕組みから、2025年度の年金額、そして年代別の平均受給額までを詳しく解説しました。
年金は増額されたものの、物価上昇に追いつかず実質的に目減りしている現状や、年金だけでは生活費をまかなうのが難しい世帯が多いことをご理解いただけたでしょう。
ご自身の年金見込み額を「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認し、平均額を参考にしながら、計画的に老後資金を準備していくことが大切です。
参考資料
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は前年度から 1.9%の引上げです~」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 日本年金機構 年金用語集「さ行 受給資格期間」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」
- 厚生労働省「令和7年度からの後期高齢者医療の保険料について」
- 厚生労働省老健局「給付と負担について」
- 日本年金機構「年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税を特別徴収されるのはどのような人ですか。」
LIMO編集部
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