息子は「理学療法士」と「作業療法士」のどちらになるかで悩んでいるようです。仕事内容と勤務先の違いや収入について教えてください。

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医療機関などで需要の高い職業である「理学療法士」と「作業療法士」ですが、その違いをはっきり理解できる人は、それほど多くないでしょう。
理学療法士、作業療法士ともに国家資格で、患者さんのリハビリを担当することが、おもな業務です。しかし、リハビリの実施方法や勤務先など、若干異なる部分があります。
そこで今回は、理学療法士と作業療法士の仕事内容や勤務先、収入の違いについてご紹介します。

作業療法士と理学療法士の違い

高齢化社会が進む昨今、医療や介護の現場で活躍する理学療法士や作業療法士の需要が高まっています。理学療法士と作業療法士は、共通点が多い職種ではあるものの、異なる点もあるため、以下について比較してみましょう。

●仕事の内容
●年収
●働く場所

仕事の内容

理学療法士と作業療法士の仕事には共通する部分もありますが、リハビリやケアの内容には違いが見られます。
理学療法士のおもな仕事は、運動機能の回復や維持・向上を目指し、医師の指導の下、運動療法や物理療法を行うことです。
運動療法では、立つ・座る・歩くといった基本的な動作を行うことを目標に、平行棒を使用した歩行訓練や、ベッドから起き上がる訓練を行います。マッサージ・電気刺激といった物理療法を行うケースもあります。
作業療法士が行う心身機能回復訓練は、身体機能に障がいがある方だけでなく、精神に障がいのある方も対象です。
日常生活における、家事や食事・入浴・スポーツといった細かい動作を行えるようになることを目的に、リハビリをします。医師の指導の下、運動療法を行うほか、料理や着替えといった、一人ひとりが必要とする動作の練習も行います。また、アルコール依存症などに対して指導するのも、作業療法士の業務です。

年収

「令和5年賃金構造基本統計調査」では、理学療法士と作業療法士の年収は、言語聴覚士・視能訓練士とともに1つの区分にまとめられているため、同程度であると推測できます。
「令和5年賃金構造基本統計調査」の結果を基に、企業規模10人以上の施設に勤務する「理学療法士と作業療法士」の年収を計算したものが表1です。なお「きまって支給する現金給与額」とは、基本給に通勤手当・家族手当・超過労働給与額などを加えた額で、社会保険料や所得税を控除する前の状態です。
表1

きまって支給する現金給与額
年間賞与その他特別給与額
年収

30万900円
71万4400円
432万5200円

※総務省統計局 e-Stat「令和5年賃金構造基本統計調査」を基に筆者作成
国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者全体の平均年収は459万5000円であるため、理学療法士・作業療法士の年収は、平均よりも少ないことが分かります。
ただし年齢が上がるにつれて、年収は上昇する傾向にあるようです。賃金構造基本統計調査によると、もっとも給与額が高くなる55歳〜59歳時点で、理学療法士・作業療法士の平均年収は589万2600円になることが分かります。

働く場所

基本的に、理学療法士と作業療法士の勤務先は共通しています。例えば、以下のような施設が該当します。

●介護福祉施設
●病院やクリニック
●保健所
●訪問リハビリテーション
●小児施設

このほかに、理学療法士が働く場所としてはスポーツ施設もあり、中にはスポーツチーム専属の理学療法士として働くケースもあるようです。
一方、作業療法士は、心身のケアを行う特性から、精神科のある病院やメンタルクリニックなどでも需要があるでしょう。
勤務先によってケアする相手が異なるため、働く場所を探す際には、自分自身がどのような仕事をしたいのか検討する必要があります。

理学療法士と作業療法士は仕事内容に若干違いはあるものの、年収や働く場所の差は少ない

理学療法士と作業療法士の仕事内容には、類似する部分が少なくありません。しかし、理学療法士が身体のリハビリのみを行うのに対し、作業療法士は精神面のケアも行うなど、異なる点もあります。
とはいえ理学療法士と作業療法士は、どちらも同程度の年収でそれほど違いはありません。
高齢化社会において、理学療法士と作業療法士は、どちらも非常に重要な職業であり、今後ますます需要が高まるでしょう。

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