JR九州の古宮洋二社長=福岡市の同社
JR九州の古宮洋二社長(62)は2日までに、南日本新聞社など報道各社とのインタビューに応じた。ローカル線の存続には観光面だけでなく、地元利用を重視している考えを強調。その上で指宿枕崎線の指宿-枕崎間の地域交通の在り方を検討する会議が始まったことについて「日常利用を地元の人に考えてもらう良い機会」と述べた。
同社は2023年11月、同区間の地域交通の在り方に関する議論を県や沿線3市に打診。24年8月に学識者も加えた任意協議会として発展させ、初会合で鉄路を生かした地域づくりを当面話し合う方針を決めた。24年に協議を1回、ワークショップを2回実施した。「まだ出口(結論)は設けていない。24年度までにもう1回は協議会を開きたい」との考えを示した。
同社は24年11月末、日南線の油津(日南市)-志布志間についても今後の在り方に関する議論を沿線自治体と行う意向を示した。県内2区間が他の区間より先行した理由に、利用者が同社発足後に7割ほど減ったことや「(2区間とも)終点が他の路線と接続しない『盲腸線』で利用者が低迷している」と指摘した。
20年7月豪雨の被災で不通が続く肥薩線の八代(熊本)-吉松間にも言及。同社は24年4月に「川線」と呼ばれる八代-人吉(同)間を熊本県と国で鉄路復旧することで基本合意。24年度末の最終合意を目指し、県を中心にJRから求められた日常利用と観光需要の創出を柱とした復興案をまとめている。「互いに理解を深めてやっていく。(最終合意へ)着実に進んでいる」と語った。
一方で、「山線」の人吉-吉松間は、同社と鹿児島、宮崎、熊本の3県を交えた協議は始まっていない。「川線が詰めの段階で力が注がれている」として、山線は川線の最終合意後、本格議論へ移る見通しを明かした。山線は川線に比べて被害件数が少なく、全体の復旧費約235億円のうち2%ほどだが、「復旧することは金額だけで計れない。利用状況も含めてかけるお金は当然違う」と述べ、川線とは違う議論になり得る含みも残した。
同社は25年4月から運賃全体で平均15%の値上げを予定する。他の輸送機関に利用者が流れるため、増収率は11.4%と見込む。「安全対策や維持費、災害復旧や、人的投資の4つを中心に充てたい」と話した。
同社子会社が日韓高速船「クイーンビートル」の浸水を隠し運航を続けた事件に関しては「24年で一番の反省事項」と陳謝。24年末には運航再開を断念し、同航路撤退を発表した。
「JR九州グループは安全とサービスを基盤としている。子会社の問題でも一体的に評価される。今年はグループ全体の安全の底上げを絶対第一の課題としてやっていきたい」と語った。
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