古墳時代の大規模集落跡が見つかった敷領遺跡=指宿市十町
鹿児島県指宿市の敷領(しきりょう)遺跡で、古墳時代中期から後期(5~6世紀)の50基超の竪穴建物を含む大規模集落跡が見つかった。朝鮮半島製の「鋳造鉄斧(ちゅうぞうてっぷ)」と呼ばれる鉄器も出土。古墳分布の最南端にある弥次ケ湯(やじがゆ)古墳(5世紀後半)に近く、鹿児島大学総合研究博物館の橋本達也教授(考古学)は「古墳を造った人々が暮らした集落と考えられる」と話す。
市教委によると、集落跡は弥次ケ湯古墳から約700メートル離れた場所にある。3000平方メートルの範囲に約4メートル四方の建物跡が集まっていた。
古墳の副葬品として出土することが多い鋳造鉄斧は長さ13.4センチ、幅5センチ、重さ約360グラムで建物跡から見つかった。当時の日本に製造技術はない希少品。市教委の西牟田瑛子学芸員(36)は「広域にネットワークを持つ有力者の存在をうかがわせる」と話す。県内では指宿市の成川遺跡や尾長谷迫(おばせざこ)遺跡、大崎町の二子塚遺跡で見つかっている。
このほか、大量の土器が廃棄された場所からは国内製とみられる鉄剣(長さ21.5センチ、幅2.9センチ)と板状の鉄斧(長さ4センチ、幅5.8センチ)が見つかった。祭祀(さいし)や埋葬儀礼に使って捨てた可能性があるという。
橋本教授は「弥次ケ湯古墳に埋葬されたのは集落の有力者かもしれない。不明な点が多かった古墳と集落との関係性に迫ることができる」と指摘。尾長谷迫遺跡からは同時期の約100基の竪穴建物跡が見つかっており、「集落同士の関係性などの評価を進めることで、当時の社会構造の分析にも役立つ」と語った。
敷領遺跡は弥生時代から平安時代の複合遺跡で総面積は24万7000平方メートル。これまで30回以上の発掘調査が行われた。平安期の開聞岳噴火による噴出物で建物や水田が埋没した災害遺跡として知られる。
今回の発掘地点は市営住宅建て替え工事に伴い2018年度に調査が始まり、今年3月末まで続く。9日には現地説明会を開く。要事前予約。時遊館COCCOはしむれ=0993(23)5100。
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