奈良県橿原市の藤原京(694~710年)跡で出土した木簡が、九九の早見表だったことが奈良文化財研究所の調査でわかった。早見表としては国内最古級で、長さ約30センチの板にコンパクトにまとめたとみられる。奈文研の桑田 訓也くにや ・主任研究員は「出勤日数の管理や租税の徴収に掛け算が必要。役所で使ったのではないか」と話している。
藤原京跡(大和三山)(2007年12月5日、奈良県橿原市で)=読売ヘリから
木簡(縦16・2センチ、幅1・2センチ)は2001年、門の護衛をつかさどる役所「 衛門府えもんふ 」の推定地付近で出土した。当初の調査では「九々八十一」(9×9=81)だけ判読でき、九九の計算を練習した跡とみられていた。見えにくい線が浮かぶ赤外線観察装置でさらに調査したところ、「九々八十一」の下に「四九卅六 六八八」(4×9=36 6×8=48)と書かれていた可能性が高いことが判明した。
九九を5行ずつ並べて段組みにした早見表とみられ、1段目は「9×9=81」から、頭の数を1ずつ減らしながら左方向に「5×9=45」まで記したと推定される。2段目は「4×9=36」で始めている。「1×1=1」まであったとすれば、全体で8段、縦32・6センチになる。
右から左へ書き進める九九の早見表は、紀元前3世紀~後2世紀の古代中国の木簡に見られ、規範的な書式と考えられている。日本では九九の木簡は平城京跡(8世紀、奈良市)などで約80点、うち早見表は約10点出土している。
調査内容は「奈良文化財研究所紀要2024」に掲載し、同研究所のホームページで5日午前10時から閲覧できる。
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