国内ではじめて国立公園に指定された霧島山など、豊かな自然の中で観光が楽しめる鹿児島県霧島市。近年、人気観光スポットとして注目を集めているのが、2022年に国宝に指定された「霧島神宮」だ。最寄り駅となるJR霧島神宮駅もリニューアルされ、霧島はますます魅力あふれるエリアへと進化中。そんな霧島を、機動力の高いレンタサイクルでめぐる“BIKE&TRIP”のスタイルで楽しんできた。
■まずは、霧島神宮駅からスタート!
国宝・霧島神社へのアクセス拠点にふさわしい駅へと生まれ変わった
今回の旅の起点となるJR霧島神宮駅は、2024年3月22日にリニューアルオープンしたばかり。国宝・霧島神宮の最寄り駅とあって、以前から駅舎の外観は神社のような朱色に塗られていたが、リニューアルとともに塗り直されてより映える姿へとアップデート。ホームの柱や鉄骨なども朱塗りになっているので駅全体に味がある。
駅舎の内装には鹿児島県産の杉材がふんだんに使われ、ナチュラル感のある雰囲気に生まれ変わった。待合室には樹齢100年の杉が装飾に使われ、訪れる人々を出迎えてくれる。
レトロな雰囲気を残しつつ、朱色が映える霧島神宮駅のホーム
木材がたっぷりと使われている改札とホームを繋ぐ通路
JR九州では、「36 ぷらす 3」という観光列車を運行しており、曜日によって5つのルートを走行。霧島神宮駅は今回のリニューアルを機に、鹿児島中央~宮崎を走る金曜日ルート「黒の路」で停車する“おもてなし駅”として加わった。運行日、観光列車が駅に停車すると、その間に駅のホームや構内で霧島茶や黒酢をふるまったり、足湯を体験してもらったりと、乗車客をおもてなしするという。
“手仕事”にこだわったショップは木の温もりが感じられる落ち着いた雰囲気
駅舎内の飲食ブースでは、霧島のそば粉を使ったガレットなどを提供。九州の“手仕事”に焦点を当てたショップには扇子やうちわなどのこだわり品が並び、店舗のすぐ裏で製造したオーガニックのお菓子なども販売している。
駅だけでも見どころが多く、つい長居してしまいたくなるが、今回はここからバスで霧島神宮を目指し、その近辺でレンタサイクルを借りるというスケジュールだ。
■レンタサイクルで、観光地をめぐる
レンタサイクルの台数は限られているので、事前に予約しておくと安心
レンタサイクルが利用できるのは、「霧島市観光案内所」と「霧島市西郷公園観光案内所」の2か所。今回は霧島神宮温泉エリアにある、霧島市観光案内所を利用した。
大鳥居と呼ばれる、霧島神宮一の鳥居のすぐ隣りに観光案内所があり、ここでレンタルの手続きをする。電動アシスト自転車と、電動アシストが付いていないクロスバイクを借りることができ、このエリアは起伏が多いというので迷わず電動アシスト付き自転車を選択した。
レンタサイクルを利用する際は、スニーカーとパンツスタイルのような動きやすい服装がベスト。スカートや長さのあるマフラー、ショールを身につけていると、走行中にペダルやチェーンに巻き込みやすいので大変危険だ。ヘルメットも貸し出しており、乗車中は必ず着用しておきたい。
※西郷公園観光案内所は現在、閉館中。令和6年12月から営業予定。
電動アシスト付きの自転車なら登り坂でもすいすい進んでくれて快適だ
レンタサイクルの良い点は、徒歩では味わえない爽快さがあり、道が渋滞していてもすいすい進めることだろう。錦江湾に桜島がドーンとたたずむ景色や、丸尾滝が見えるスポット、さまざまなレジャー遊具で遊べる「霧島神話の里公園」など、さまざまな場所まで気軽に出かけられる。また森が広がるこのエリアは、春から初夏は新緑が輝き、11月中旬~下旬は色鮮やかな紅葉に染まる。
「霧島神話の里公園」の近くに架かる大きな橋。後ろに見えるのが錦江湾と桜島
遊覧リフトや展望台などがある「霧島神話の里公園」。今回は駐車場でひと休み
■国宝「霧島神宮」を参拝
朱色の鳥居をくぐった森の奥に「霧島神宮」が鎮座されている
今回の旅のメインとなる目的地が「霧島神宮」。6世紀に創建されたという古い歴史をもつ古社で、南九州最大の神宮でもある。
古くは霧島山の高千穂峰と噴火口(御鉢)の中間に本宮があったとされ、噴火による焼失や再建を繰り返し、現在はこの場所に鎮座されているのだとか。御祭神の瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)は、天照大神は孫であり、天孫降臨の建国神話に登場する主人公だ。
手水舎でお清めをして拝殿などがある社殿に参る
豪華絢爛な装飾が施された拝殿。その奥に続く勾配に沿って幣殿や本殿が建っている
現在の社殿は、正徳5年(1715年)に薩摩藩第4代藩主の島津吉貴によって建立されたもの。朱色の鳥居をくぐって杉並木の参道を進むと、拝殿、幣殿、本殿が勾配に沿って縦に並んで建っている。少し離れた場所に立つと、3つの建物の屋根が重なるように見える。
一番高い場所にあるのが本殿で、その向拝柱は、無数の瑞雲に2匹の龍が巻き付いた青、赤、緑に塗られた極彩色の龍柱。薩摩藩独自の意匠を取り入れた、まさに南九州の社殿建築を代表する建造物なのだ。2022年2月、これら本殿、幣殿、拝殿は国宝に指定されている。
ほかにも境内には神楽殿やご神木の杉、さざれ石などがあり、参拝とともにあちこち見て回れる。見どころの多い霧島神宮は時間をかけて観光を楽しみたい。
まずはお参りを済ませ、それから国宝の社殿をじっくり鑑賞
■スイーツでエネルギーチャージ!
軽い甘さの紫いもと、濃厚なソフトクリームが相性抜群の「いもソフ」。小さめサイズの「mini」もある
レンタサイクルのメリットは、フットワークが軽いこと。気になるお店があったら「ちょっと寄ってみよう」と気ままに動けるのだ。霧島神宮の一の鳥居のすぐ側にある「TAKE OUT 霧花 moca」も、「いもソフ」の看板が目に入って立ち寄ってみたテイクアウトのお店だ。
目当ての「いもソフ」は、ソフトクリームの上に、鹿児島県産の紫いものモンブランがこれでもかと盛られた極上スイーツ。紫いもの錦糸は1mmという細さで、一口食べるとふわっとほどけて、口の中いっぱいに甘さが広がる。その下の濃厚ソフトクリームはほどよい甘さで、いものおいしさを引き立ててくれる。さらに下にはフルーツグラノーラが敷き詰められており、食べ進めるごとにさまざまなおいしさが楽しめる。さらに、さつまいもがトッピングされている。
お店の前にベンチがあるので、座って休憩しながらスイーツや軽食を味わえる
お店には、「霧島抹茶のアフォガード」など、気になるスイーツが揃っている。ほかにも、パンに合うお肉をセレクトした「黒豚角煮サンド」「黒毛和牛ハンバーグステーキサンド」などの軽食もある。
■休憩にぴったりな「霧島温泉市場」
地元の特産品が手に入るお土産店や鹿児島名物の黒豚が食べられるレストランが揃った「霧島温泉市場」
霧島温泉郷の中心ある「霧島温泉市場」は、食事処やお土産店などが集まる便利な立ち寄りスポット。建物の前の広場には、温泉の蒸気で蒸した温泉たまごや野菜、温泉まんじゅうが食べられる「蒸しもの販売所」があり、さまざまなメニューをテイクアウトして楽しめる。蒸し野菜の種類はコーンやさつまいもなど。ソーセージなどもあるので、小腹がすいたときにぴったりだ。
また、広場には有料の「湯けむりの里・足湯」があり、100円(小学生以下50円)で楽しめる。湯は40~45℃とちょっと熱め。足湯で疲れを癒すと、まだまだ元気いっぱいでサイクリングの旅を続けられそうだ。
「蒸しもの販売所」で一番人気は風味豊かな温泉たまご
1時間かけて蒸しあげた温泉たまごはほんのり黄色がかっている
蒸し野菜は食べきりしやすいほどよいサイズ。あれこれ食べてみたくなる
■各所に点在する快適な足湯
霧島市観光案内所に設置されている屋根付きの足湯
霧島は各地に温泉郷が開かれ、エリアごとにさまざまな泉質の湯を楽しめる。また、観光施設に足湯を設置しているところも多く、例えば、霧島温泉市場や霧島市観光案内所、霧島神宮駅などが無料・有料の足湯を完備。霧島をあちこちめぐりながら、足湯でくつろぎ、適度に休憩をはさんで観光を楽しめる。
神社や温泉、グルメスポットなど、レンタサイクルと観光路線バスを組み合わせて広くめぐろう
現在、霧島市では、霧島神宮駅や霧島温泉郷、そして国宝「霧島神宮」といった主要観光地まで、鹿児島空港から乗り換え無しでアクセスできる「霧島神宮アクセスバス」の実証実験を行なっている。
また、市内をバスで観光する「のったりおりたりマイプラン」というお得な一日乗車券も販売。この観光路線バスとレンタサイクルを組み合わせれば、機動力がぐっとアップする。
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