理学療法士として働くなかで、今後どのくらい昇給できるのか気になる方もいるのではないでしょうか。理学療法士は年齢に応じて平均年収が高くなりますが、ほかの医療職と比較して昇給しにくい面もあります。ただし、昇給する方法も多くあるため、それらを実践することが重要です。
この記事では、理学療法士の昇給額や平均年収の推移、給料アップの方法についてご紹介します。理学療法士の給料事情を把握することで、年収を増やすためのきっかけとなるでしょう。
理学療法士の平均年収と昇給額は?
理学療法士の年収や昇給額は、現状どの程度なのでしょうか。ここでは、公的機関の調査結果をもとに、理学療法士の給料事情について詳しく解説します。
理学療法士の平均年収は約432万円
令和5年度の調査によると、理学療法士の平均年収は「約432万円」とされています。この平均年収の内訳は、以下のとおりです。
● 月々の給料:約30万円
● ボーナスを含めた給与:約71万円
また、理学療法士の平均年収は職場規模によっても変動します。例として、企業規模が1,000人以上の場合、平均年収は「約442万円」とされています。現在勤めている職場の規模によっては、一般的な平均年収と比較して増減する可能性がある点に注意しましょう。
理学療法士の年齢に応じた昇給額
理学療法士の年齢に応じた平均年収と、新卒と比較した場合の昇給額について、以下の表にまとめました。
このように、新卒の年齢といえる20〜24歳の平均年収と比較すると、最大で250万円ほどの増加が見込めます。これは月々の給料に換算すると、約21万円(ボーナス等の給与含む)の昇給となります。
出典:令和5年賃金構造基本統計調査
理学療法士は昇給しにくい職種?
理学療法士は以下の表のとおり、ほかの医療職よりも給料が安く、昇給しにくい傾向にあります。
ここでは、理学療法士がなぜ昇給しにくいのか、その理由について解説します。
出典:令和5年賃金構造基本統計調査
理学療法士の増加による課題
昇給が難しい理由の1つに、理学療法士の数が年々増加していることがあげられます。日本理学療法士協会によると、2023年度の段階で理学療法士の数は約21万人とされています。2013年度では約11万人であることから、10年間で理学療法士の数は2倍になっているのです。
理学療法士の数が増えすぎると、競争が激化するだけでなく、供給が多いことで給料や昇給額が上がりにくくなる恐れがあります。高齢化が進んでおり、需要こそ増えているものの、理学療法士の数の増加は給料に影響があると考えられます。
制度による課題
理学療法士の昇給がしにくい理由として、診療報酬制度による制約も大きな要因だと考えられています。理学療法士は、リハビリを提供することで診療報酬を得ています。1単位20分として、リハビリの提供時間に応じて点数が決められているのが特徴です。
しかし、理学療法士が提供できるリハビリには限界があり、1日24単位(8時間)、1週間108単位までとされています。つまり、理学療法士のスキルや経験に関わらず、1日に提供できるリハビリの量には上限があるのです。この状況があるため、理学療法士はスキルアップによる昇給があまり望めない職種といえるでしょう。
理学療法士は今後昇給が期待できる?
これまで理学療法士は昇給しにくいと説明してきましたが、診療報酬の見直しによる一定の給料アップは十分に見込めます。実際に2024年の診療報酬改訂にて、理学療法士を含む医療従事者の給与引き上げが行われました。
その結果、職場によって変動はあるものの、理学療法士は月額換算で5,000円前後の昇給が実施されています。このように、理学療法士の昇給に向けた動きもみられているため、今後も給料アップがなされる可能性があります。
理学療法士で昇給するための4つの方法
理学療法士は制度の見直しだけでなく、個人の力によって昇給することも十分に可能です。具体的な方法としては、以下の4つです。
1. 資格を取得する
2. 管理職につく
3. 転職する副業で別の収入を得る
ここでは、それぞれの方法について詳しくみていきましょう。
1.資格を取得する
1つ目は、資格を取得することです。職場によっては、特定の資格を取得した理学療法士に対して「資格手当」を受けられる場合があります。そのような職場で働いている方は、手当のために資格を取得するのもよいでしょう。
資格取得のメリットは昇給だけではありません。専門的なスキルや知識が身につくことで、より質の高いリハビリの提供につながります。さらに、転職時にも有利に働くため、長期的なキャリアアップにもなるでしょう。理学療法士に関連した資格は「認定理学療法士」や「専門理学療法士」など、数多くあります。資格の取得は簡単ではありませんが、理学療法士として優位になるケースが多いので、ぜひ検討してみましょう。
2.管理職につく
2つ目は、管理職につくことです。管理職に昇給すれば役職手当が付与されるため、給料アップが期待できます。理学療法士はほかの医療職よりも平均年齢が若い傾向にあるため、職場によっては早い段階から役職につくことも珍しくありません。
ただし、管理職につくためには臨床技術だけでなく、他スタッフからの信頼や、組織をまとめるマネジメントスキルも求められます。管理職を目指す場合は、日々の業務のなかで信頼関係を築きつつ、必要なスキルを磨くことが大切です。
3.転職する
3つ目は、転職することです。現在の職場よりも条件がよい場所に転職できれば、スムーズに昇給が可能です。資格の取得や管理職の昇進と比べると、転職は昇給の実現性が高い方法といえるでしょう。
今の職場で昇給が望めない場合は、転職も検討してみてください。転職の際は給与だけでなく、以下のようなポイントもよくチェックしておくことが重要です。
● やりがい
● 将来性
● ワークライフバランス
転職は大きな決断ですが、キャリアアップと給料アップの絶好の機会にもなります。自分のスキルや経験を活かせる環境で、より高い給料を目指してみましょう。
4.副業で別の収入を得る
4つ目は、副業で別の収入を得ることです。理学療法士の昇給ではありませんが、副業による収入アップもおすすめの選択肢といえます。理学療法士ができる副業は、おもに以下のとおりです。
● リハビリのアルバイト
● ブログ運営
● 動画編集
● Webライター
このように、パソコン1つで収入を得られるような副業も多くあります。副業は収入アップだけでなく、新たなスキルや人脈を得る機会にもなります。これらの経験が、将来のキャリアアップにつながる可能性もあるでしょう。在宅ワークに興味がある方は、ぜひ副業も検討してみてください。
理学療法士の昇給方法を実践してみよう
理学療法士はほかの医療職と比較して給料が安い傾向にあり、昇給しにくい職種といえます。しかし、診療報酬の改訂による昇給もあったため、今後も少しずつ給料アップが期待できる可能性があります。
理学療法士として昇給するためには、資格の取得や転職など、自発的に行動することも重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、理学療法士として昇給するための方法を実践してみましょう。
内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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