「悪いのは我々ではなく、甘すぎる日本の制度だよ」。ある中国人ブローカーは、そう笑った。彼らがしゃぶり尽くす、我が国の実態に迫る。
前編記事『中国人はなぜタワマンを爆買いして即売却するのか…!「日本の制度」の穴をつき所得税を踏み倒す者も…その衝撃の方法』より続く。
神社仏閣を爆買い
不動産に関わる「脱税」は、他にもある。
「日本では収益性のない『負動産』にも固定資産税がかかり続けるが、日本人が敬遠する山林や雑種地を格安で取得する中国人も一部にはいます。『日本の国土を所有する』満足感も動機の一つです。
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しかし最近は、意図的に固定資産税を滞納するケースもある。所得税と同じく、外国籍の非居住者であれば日本の行政は徴収できないからです」(前出の不動産業者)
本誌はこのケースについても総務省固定資産税課に取材。すると、「国内に納税管理人(納税に関する手続きや納税を行う代理人)が選任されておらず、納税者が海外に所在する場合には、納税通知や徴収は、難しいこともある」とあっさりと認めた。
さらに、彼らの触手は神社仏閣にまで及んでいる。大阪のある宗教法人ブローカーによると、「いまでは問い合わせの3割が中国人」だという。
高額療養費制度にタダ乗り
中国人が日本の神社仏閣を欲しがる理由は何か。元国税庁職員で税理士の松嶋洋氏が語る。
「宗教法人の『宗教活動』による収入は非課税で、その他の収益事業も税率が優遇される。しかも、10年程度保有した資産であれば、収益事業の廃止と同時に売却することで、売却益が非課税になる場合もあります」
悪用しようと思えば、他の事業を宗教活動と言い張り、非課税で転売することもできる、というわけだ。
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また、住民税を悪用する一部の中国人移住者もいる。住民税は前年所得に基づいて課税されるため、来日1年目の外国人は基本的に住民税を課されない。この制度を利用し、「恩恵」を受けるのだ。
「住民税非課税世帯は、高額療養費制度で医療費の自己負担上限が月額3万5400円(70歳未満)に抑えられる。この制度は中国でも広く知られており、病気療養目的で移住する者もいる」(前出の移住コンサルタント)
そして出国時にも、最終年の住民税が支払われないケースがあるという。総務省市町村税課の担当者が嘆く。
「ある年の12月末で帰国する場合には、翌年に請求される住民税を事前に一括でお支払いいただくか、納税管理人を選任して帰国後に支払っていただく必要がある。しかし、そのまま帰国され、連絡先もわからずに徴収が難しくなるというケースもあります」
なぜ日本の制度は穴だらけなのか
ごく一部ではあるが、通称名を悪用するケースもある。
中国人に限らず在留外国人は、本名とは別に通称名を登録して住民票に記載することができ、法的効力のある名前として使用可能だ。この制度を利用すれば、さまざまなサービスを二重取りすることができるという。日本在住歴6年の中国人女性が明かす。
「たとえば、購入限度のあるプレミアム商品券が欲しい場合、本名と通称名を使えば2人分を購入できます。また、公営住宅の抽選では、本名と通称名で申し込み、当選確率を2倍にする方法が一部で広まっている」
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なぜ日本の制度はこれほどまでに穴だらけなのか。特定行政書士の三木ひとみ氏はこう指摘する。
「制度上の問題点としてはいくつかの要因があると考えています。まず、縦割り行政の弊害。法務省、厚労省、国税庁など関係機関が個別に制度運用しているので、横断的な情報共有が乏しい。
そして、法改正スピードの遅さです。制度の趣旨と実際の使われ方が乖離していることは多々ありますが、悪用・濫用されていることが判明しても、実態調査や国会審議を経た法改正には時間がかかってしまう」
人口の多い中国に根付く考え方
もちろん、日本にいる大多数の中国人はきちんとルールを守っている。法の穴をかいくぐっているのはごく一部だ。だが今後は、さらに問題が深刻化する可能性もあるという。中国事情に詳しいジャーナリストの中島恵氏が明かす。
「人口の多い中国では、ルールを守って順番を待っていては、いつまで経っても恩恵を受けられないという考えが根付いています。そのため、悪いことをしているというよりは、『制度に抜け穴があるんだったら通ればいい』と考える人が少なくないのです。
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中流より下の経済状況の人々だと、その傾向はさらに顕著になる。これまで日本に移住する中国人は富裕層に限られていましたが、近年はそういった層の人も多くなっています」
日本人の排斥感情が高まり、対立を招く事態にもなりかねないだけに、早急に手を打つ必要があるだろう。
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「週刊現代」2025年07月07日号より
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