所有者不明の土地や家屋の増加を防ぐために不動産の相続登記が義務化されて1年たったが、民間調査によると義務化を「知らない」人が過半に上った。正当な理由なく3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が科されるが、間に合わない人も少なくなさそうだ。
一般財団法人の国土計画協会によると、2016年時点で「所有者不明土地」の面積は約410万ヘクタールで、40年には北海道本島に相当する約720万ヘクタールまで増えると試算されている。
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所有者が分からなければ、災害時の復興計画などの妨げとなり、土地活用が進まない。国土計画協会は17~40年の経済的損失が、少なくとも約6兆円に上ると見積もっている。
3年以内の相続登記義務化について「知らない」人が全体の過半を占めた=すむたす提供
所有者が分からない主な原因は、所有権移転の相続登記がされていないことだ。登記は任意だったため、不動産の価値が低くて売却が難しいケースでは、手続きの手間や費用のかかる登記を避ける人が多く、所有者不明の土地や家屋が増えてしまった。
このため、国は24年4月に改正不動産登記法を施行。相続を知った日から3年以内の登記を義務付けた。改正前に相続した未登記の不動産も、改正法施行から3年以内の27年3月末が期限となる。
相続登記の義務化はどの程度認知されているのか。不動産売却サービス「すむたす売却」を運営するすむたす(東京)が3月、50~89歳の男女223人にインターネットで調査した。
その結果、義務化を「知っている」は48・9%、「知らない」は51・1%だった。不動産相続の未経験者に絞ると、「知らない」が7割を占めた。すむたすの担当者は「相続が発生したタイミングで(義務化を)知る人がまだまだ多い」という。
登記に要した期間が「3年以上」や「まだ登記していない」も少なくない=すむたす提供
相続から登記まで「3年以内」と定められているが、適当なのだろうか。不動産相続の経験者に聞くと「適切」と答えた人は39・3%にとどまり、30・4%が「短い」と感じていた。
登記の手続きに要した期間を聞くと、最も多い「半年未満」(34・8%)など、3年未満で完了した人が計71・4%と大部分を占めた。一方、「3年以上」(5・4%)、「まだ登記していない(3年以上経過も含む)」(11・6%)という人も少なくなかった。
すむたすは、不動産相続について「必要書類を集めるのに時間を要したり、相続人同士の話し合いが難航したりするケースもある。(3年以内は)余裕のある期間とはいえない」と指摘している。【嶋田夕子】
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