暖かい季節になり、ヘビとの遭遇機会が増えてきました。今回は、登山で注意したい毒ヘビについて、正しい知識と対処法をお伝えしていきます。
日本の毒ヘビ、実は少ない
「ヘビ=猛毒」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、日本に生息する30数種のヘビのうち、毒ヘビは意外にも3種類だけです。
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マムシ(本州から九州まで広く生息)
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ヤマカガシ
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ハブ(沖縄)
興味深いことに、見た目の怖さと毒性は必ずしも一致しません。つぶらな瞳で愛らしく見えるヤマカガシが最も毒性が強く、凶悪な見た目のハブが実は3位なのです。毒性を示すLD50値(半数致死量)では、ヤマカガシが最も低い数値を示しています。
マムシの生態を知る
今回は、最も広範囲に生息し、遭遇する可能性が高いマムシについて詳しく見ていきましょう。
マムシは、首と尻尾が細く、胴体が太いという特徴的な体型をしています。頭部は三角形で、瞳は縦長になっています。この縦長の瞳には理由があります。夜行性動物である彼らにとって、明暗の変化に素早く対応できる利点があるのです。
活動温度は10度前後が目安です。日中は藪や岩陰などの暗い場所で休み、夜間に活動します。特に水辺を好み、小さな沢のある藪は彼らにとって最高の住処となります。
遭遇時の注意点
基本的にマムシは人間に寄ってくることはありません。むしろ、人間が気づかずに近づいてしまい、驚かせてしまうことで咬まれるケースがほとんどです。
ただし、8月から10月の出産期には例外的な行動を見せることがあります。マムシは体温調節ができないため、特に妊娠中は日光浴のために日中でも姿を見せることがあります。
毒の特性と症状
マムシの毒は主に「出血毒」の性質を持っています。タンパク質を分解する酵素が血液凝固を阻害し、血管の細胞を破壊して出血を引き起こします。これにより、血圧低下や内臓機能の低下などの症状が現れることがあります。
咬まれた時の対処法
不幸にも咬まれてしまった場合、以下の手順で対応します:
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ポイズンリムーバーがあれば使用し、毒を吸い出す
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なければ口で吸い出して吐き出す
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咬まれた場所から10-20cm上を、静脈のみを圧迫する程度に縛る(指一本入る程度の強さ)
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できるだけ早く医療機関を受診する
医療機関では、症状の程度によって血清治療が検討されます。ただし、血清は馬から作られるため、アレルギー反応に注意が必要です。また、生涯で投与できるのは原則1回限りという制限があります。これは2回目の投与で重篤なアレルギー反応を起こす可能性があるためです。
実は、マムシによる死亡例は年間数件程度と比較的少なく、咬傷の報告も年間推定3,000件程度です。しかし、重症化を防ぐためには適切な初期対応と医療処置が重要です。
予防が最善の対策
マムシ咬傷は、藪こぎや不用意な足運びで予期せず遭遇することで起こることが多いものです。登山の際は、
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藪の中を歩く時は十分な注意を
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休憩時の座り場所をよく確認
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特に水辺の藪では警戒を怠らない
といった基本的な注意を心がけることが大切です。
より詳しい登山時の安全対策については、YouTube「低山ハイカー英武ゆう」チャンネルでご紹介していますので、ぜひチャンネル登録をお願いします。みなさんと山でお会いできる日を楽しみにしています!
※この記事の医療情報は、各種医学文献や学会誌を参考に作成していますが、実際の治療については必ず医療機関の指示に従ってください。
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