教えて! 移住プランナー仲西さん vol.10
移住プランナー、移住専門ファイナンシャルプランナー、空き家相談士など様々な顔を持ち、これまで約2500組もの移住相談に多角的な視点で対応してきた、仲西康至(なかにし・こうじ)さんが、地方移住についての疑問、質問に答える連載「教えて! 移住プランナーの仲西さん」。第9回のテーマは「絶対に利用すべき! 魅力ある移住者支援」です。
「最近は地方移住に興味を持つ人が増えていると聞きます。地方では人口減少も進んでいるので、移住促進に力を入れているのだと思います。私自身も地方移住や特に二地域居住に興味があり、気になる自治体を調べているところです。どこの自治体も様々な移住支援を行っているのですが、絶対に利用すべき制度を教えていただけますか。(Aさん、千葉県在住、30代夫婦、小学生3年生の男の子1人)」
「お試し移住体験」を活用
皆さんこんにちは、移住プランナーの仲西です。
今回のご相談は、「魅力ある移住支援制度を教えて欲しい」とのことです。そこで、私から絶対に利用すべき移住支援制度についてご紹介いたしますね。
まず、移住を希望する方全員に利用していただきたいのが「お試し移住体験」ですね。
「お試し移住体験」とは、移住先の地域で一定期間暮らすことで、地域の文化や生活環境を体験し、移住後の地域とのミスマッチを減らすことを目的とした移住支援制度です。
一般社団法人 移住・交流推進機構「2019年移住体験 施設実態調査」によりますと、全国の約37%の自治体が、移住体験施設を準備しています。
ちなみに、移住体験住宅の形態は、自治体が空き家等の民間住宅をリフォームしたものが約50%、教職員住宅等の公有住宅を活用したものが約40%です。
この「お試し移住体験」を利用するメリットは次の通りです。
1.利用料金が安い
一棟貸しが多く、家族(大人数)でも安心して利用ができます。
2.生活用品一式が準備されている
自炊が可能なため食費を抑えることができ、長期間の利用でも安心です。
3.自治体の助成の対象となる
自治体によっては、レンタカー助成金や温泉施設の割引等の特典を受けられます。
4.自治体の担当者と知り合える
窓口となる自治体職員との距離が縮まり、サポートを受けやすくなります。
5.近隣の人と触れ合える
体験住宅の近隣の方は、移住希望者が利用していることを認識しているため、コミュニケーションが取りやすくなります。
6.体験プログラムが用意されている
先輩移住者との交流など、様々な体験プログラムを利用できます。
二地域居住の支援制度を活用
今回のご相談者Aさんのように二地域居住に興味をお持ちの方は増えています。
二地域居住は、都会と田舎のメリット両方を享受することができるので、注目度が高まっていますね。
また、国全体で人口が減少する中、すべての地域で「定住人口」を増やすことはできません。
そこで、移住促進から二地域居住の促進にシフトチェンジする自治体が増えており、それに合わせて、二地域居住者向けのコワーキングスペースやインターネット環境の整備等、さまざまな支援制度が準備されてきています。
例えば、長野県佐久市では二地域居住者向けに「リモートワーク支度金」や「新幹線乗車購入費支援金」を提供しています。
また福島県では、二地域居住者等を対象に滞在期間中の宿泊費、コワーキングスペース等の施設利用料等の経費の一部を補助する支援制度を設置しています。
二地域居住等を目指している方は、様々な移住支援制度が用意されていますので、ぜひ活用してくださいね。
子どもの留学支援
二地域居住者等を促進するうえでネックになるのが、子どもの通学問題です。近年、徳島県の「デュアルスクール」が話題となっています。都市部の学校と徳島県の学校間で学籍管理等の連携を行うことで、都市部に住民票を置いたまま、徳島県の学校に短期間学籍移動を可能としたものです。
ただし、全国的に拡大していくためにはいくつかの課題があります。そこで、注目したい制度が「山村留学」と呼ばれるものです。
山村留学制度は、都市部の小中学生が自然豊かな農山漁村に一定期間移り住み、地元の学校に通いながら地域の生活や自然体験を行う教育制度です。NPO法人全国山村留学協会「2023年度全国の山村留学実態調査報告書」によると、実施自治体58市町村、実施小中学校123校、参加者632名となっています。
ちなみに、山村留学には4つの方式があります。
1.学園方式
専門指導員が常駐する寮で集団生活を送りながら、地域の家庭でホームステイも体験。
2.ホームステイ方式
地域の家庭に年間を通じて滞在。
3.寮方式
山村留学センター等の寮で生活。
4.家族方式
家族全員で地域に移住し、地域の学校に通学。
近年は、家族方式が最も多く、ホームステイ方式は減少しています。
このことから、山村留学制度と移住施策が重なり、子どもの留学をきっかけとした移住の促進に期待が持たれています。例えば、母と子どもが移住し、父は都市圏で仕事を継続するスタイルも見られます。
この制度は年度ごとの受付となり、義務教育期間は継続して留学を続けることができます。
また、多くの自治体が参加家族に対して、補助金制度を設置しており、生活費に充てることができます。
山村留学は子どもたちに自然との触れ合いや地域文化の体験を通じて、自己成長や生きる力を育むだけでなく、過疎地域の活性化や学校の存続にも寄与する制度になります。
ちなみに、山村留学の受け入れ数が多いのは、1位長野県、2位鹿児島県、3位北海道となっています。
まだまだある、全国の受けたい移住支援制度
最後に、全国の自治体が実施する、ぜひ受けたい移住支援制度をいくつかご紹介しますね。
1.一定期間住み続けると土地を無償譲渡(北海道雄武町他)
北海道雄武町では、移住者に向けて土地を無償貸与し、住宅を建てて一定期間住み続けると土地を無償譲渡してもらえます。また、茨城県境町では新築の戸建て賃貸住宅に25年住み続けた方へ、土地と住宅を無償譲渡されます。
2.引越し費用助成(北海道大空町他)
北海道大空町では、町内に定住を目的として転入し、賃貸住宅に居住した方に、引越し費用の実費分を最大20万円まで助成しています。
3.移住者記念品贈答(山形県鶴岡市他)
山形県鶴岡市では移住世帯に、米(二人以上世帯:60kg、単身世帯:40㎏)・味噌(二人以上世帯:3㎏、単身世帯:2㎏)・醤油(二人以上世帯:3リットル、単身世帯2リットル)を贈っています。移住者に対する記念品は、各自治体の特産品が多く取り入れられていますね。
4.奨学金返済支援(北海道深川市他)
大学(大学院、短大含む)、高等専門学校及び専修学校(修業年限2年以上の専門課程に限る)を卒業し、市内事業所に正規社員等として就業(自営業を含む)した方を対象に、返済した奨学金の相当額の助成が受けられます。
今回は、移住支援制度についてお話をしました。確かに、移住支援制度は有効に活用したいものです。
しかし、移住支援制度ありきで移住地を決めるのにはリスクがあります。
最終的には、自分が住みたいと思えるところや、田舎に移住する目的を第一に考えて、移住先を決定してくださいね。
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