米の値段の高騰が止まらない!でも政府は「何もしたくない」…!農水大臣の発言から透けて見える「米価上昇」と「政府無策」のヤバすぎる深層

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米暴騰…!「供給増で価格高騰」の不思議…??

米の価格高騰が止まらず、スーパーの店頭価格が5キロ4000円を超えたことが話題になっている。

1年前は2000円程度だったから、1年で2倍の上昇だ。

備蓄米の販売を渋っていた農水省もさすがに売却を実施したが、売却価格はむしろ上がっており、下がる見込みはなさそうだ。なぜ米価が高騰しているのだろうか。また、どうしたら良いのだろうか。

まずは事実を見てみよう。

下の図1は、米、パン、麺類(パスタも含む)の価格と米の生産量を見たものである。

米価は傾向的に下落傾向にあったが、2022年中頃から上昇し、2024年から急激に上昇するようになった。この間、米の生産量は2023年まで減少していたが、24年には前年の716.6万トンから734.6万トンにまで18万トン増加している。

米の生産量が増加しているのに、価格は急騰したのだ。しかも、JA全農などの集荷業者が買い集めた量は前年より21万トン少なかったという。生産量が増えているにもかかわらず、市場に流通する量が減少しているという不可解な状況が発生している。ただし、猛暑の影響で品質が低下しており、販売できる米はこれほど増えてはいないらしい。

JA全農が買い集めた量の減少分21万トンの所在について、江藤拓農水相は「どこかにスタック(滞留)していると考えざるを得ない」と発言している。農水省も米の流通状況を完全には把握できていないようだ。

実は「米」は「パン」に負けている…!

図2は、家計の米、パン、麺類への月ごとの支出額を示したものである。

米への支出が増える前の2023年、米と麺類への支出額は、月平均1700円程度でほぼ同じ、パンへの支出額は月2800円程度で米の1.6倍だった。

ここで23年までを見ると米と麺類への支出額は低下傾向でむしろパンへの支出額が増加傾向にあった。22年以降、パンと麺類の価格は、前掲図1に見るように上昇傾向にあったのである。

家計は、価格が上昇しているパンと麺類への支出を増やしていたことになる。

おそらく、家計はパンや麺類が割高になっていることに気が付いて、相対的に安価になった米への支出を増やそうとしたら、米価が上がったということではないだろうか。パンへの支出は2024年4月以降減少しているように見えるから、おそらくそうなのだろう。

実質で見ても米の購入量は増えている

図2は名目の支出額であり、価格上昇の効果が入ってしまうので、実質化した支出を示したのが図3である(実質化の方法は図の注を参照)。

実質で見ると米への支出は増加していない。ただし、米への支出には下方トレンドがあるので、このトレンドとの差(緑の棒グラフ)を見ると、支出が増えていると分かる。 

図の緑の縦棒を足すと1年でほぼゼロとなるが、24年ではプラスになる。ただし、このプラスは0.5ヵ月分にすぎない。つまり、米価の高騰に慌てた家計が買いだめをしたのかもしれないが、その量はせいぜい半月分ということだ。当然である、白米を何ヵ月も保存したら味が低下してしまうからだ。

冷凍庫に入れるか、玄米を買って自宅で精米すればもっともつだろうが、費用もかかる。半月分、余計に買っても来月からは元の購入量に戻る。ただし、半月分としても、生産量720万トンの30万トン分(720÷12月÷2)である。これは一時的には米価を押し上げる力があるだろうが、次の月にはなくなってしまう。

なお、家計が半月分の在庫を増やしたという私の推計は、多くの仮定によるものなので、絶対に正しいとは言えない。

また、前述の農水省発言にあるように、仲介業者が買い占めている可能性もあるが、やはり在庫には費用が掛かり、来年の米の出荷時までには売り抜けなければならない。これはそうたやすいことではない。

無策が露呈する「江藤発言」

食糧法(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律)第1条には、「主要食糧の需給及び価格の安定を図り、もって国民生活と国民経済の安定に資することを目的とする」と書いてある。

農水省は、米の価格の安定を図り、国民生活を安定させないといけない訳だが、そうしなければいけないとはあまり思っていないらしい。

Photo/gettyimages

なぜなら、江藤農水相が、2025年2月28日の衆院予算委員会分科会で、そもそも食糧法には「価格の安定は書いていない」と答弁しているからだ。

さすがに役人が耳打ちして、間違いを訂正したが、農水相は米の価格安定を重要と思っていない訳だ。

また、農水省は米の価格が上がっているのに、2024年に17万トンの備蓄米を購入していた(農林水産省「米穀の需給及び価格の安定に関する基本方針」2024年10月)。このことは、農水省が米の価格の上昇要因を見極められていないということだ。

つまり彼らは、なぜ米の価格が2倍になったかよく分かっていないのだ。だとすれば、当然だが、農水省はどうすれば、米の価格が元に戻るのかも、よく分かっていないということだ。

政府の本音は「米価を下げたくない」

もっとも、価格や流通をコントロールすることは至難の業である。

価格を下げるもっとも確実な方法は、減反政策を止めて米の増産をすることだ。しかし、米の生産量は作付面積を決める時の年に1度しかコントロールできない。しかも、その後の天候でどれだけの生産量になるかも分からない。米が取れすぎて価格が暴落してしまうかもしれないのだ。

江藤農水相は、流通部門でのJA以外の業者が買い付けていることが原因だとしたいらしい。しかし、その業者もどれだけ溜め込んでいるかは正確には分からない。

そもそも、図3で見てきたように、国民の米への支出は、実はわずかなもの。もはや米は嗜好品となっている。国民がパンや麺類を減らして急に米を余計に食べたり、家庭内備蓄をしたりすれば、一時的には価格は上がる。むしろ、農水省にとってこれは喜ばしいことなのだ。

農水省の「やってるフリ」

政府は備蓄米を放出し、これで多くの国民は米価が下がると思っている。しかし、買い戻し条件が付いており、備蓄米を売りはするが、後から買い戻すと言っているので、これでは価格は下がらない。

これまで農水省は、減反政策を駆使して米価が下がらないように苦心してきた。

Photo/gettyimages

せっかく上がったのに無理に下げることはないと考えるのが当然である。下手に手を打てば、どれだけ米価が下がるか分からないので、結局、彼らは何もしないのが得策となる。

結局、政府は米の価格を下げようとしているフリをしているだけなのである。

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