終戦の日、『平和へのメッセージ from 知覧 スピーチコンテスト』
鹿児島県南九州市知覧町。
この町はかつて、特攻隊の出撃拠点があった場所として知られ、現在も「知覧特攻平和会館」に多くの人々が足を運び続けています。
そして、もう一つ。
終戦の日となる8月15日に、毎年ひとつの静かな誓いが発信されています。
それは、『平和へのメッセージ from 知覧 スピーチコンテスト』。
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ひとりの女子高校生の手紙から始まった、声のリレー
このコンテストの始まりは、今から30年以上前の平成元年。
当時高校2年生の女子生徒が、修学旅行で知覧特攻平和会館を訪れた後に綴った一通の手紙がきっかけでした。
「私は、生まれて初めて真剣に考えさせられ、心にズシンと何かが入ってきたような気がしています。
多くの死の上に、平和があるのですね」
彼女はその後、アメリカへ留学する予定でした。
かつて敵国とされた土地へ旅立つ直前に感じた、戦争と平和の重み。
その真っ直ぐな思いは、町に届き、翌年の平成2年からこのスピーチコンテストがスタートしたのです。
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テーマは「あした いのち かがやけ」
以来、知覧町では平成6年以降、毎年8月15日の終戦の日にこのコンテストを開催しています。
テーマは一貫して「あした いのち かがやけ」。
日本全国から、そしてさまざまな立場の人々から、平和への想いが言葉として寄せられ、今年の応募総数は2,654点となりました。
その中から選ばれた中学生・高校生それぞれ4人、一般の部1人、さらに市内小学生の作文優秀賞1人が、知覧の地でスピーチを行います。
命の尊さとは何か、平和とは何かを、自分の言葉でまっすぐに見つめたメッセージです。
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若者たちの言葉が、未来を照らす
「戦争を知らない世代」が圧倒的多数を占めるいま、このコンテストを見ていると、「知らない」からこそ「学びたい」「伝えたい」という声が、確かに生まれているのだと感じさせられます。
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また今年は、記念アトラクションとしてジャーナリストの池上彰さんが「ニュースから世界を見る」と題し講演を行い、日常に潜む戦争や平和の問題をやさしく、けれど鋭く解説。
言葉と向き合う若者たちに、新たな視点を投げかけました。
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「考える」きっかけは、いつだって身近にある
南九州市は、このコンテストについて次のようにコメントしています。
「このスピーチコンテストが、多くの方々にその“きっかけ”を提供できますように」
戦争の記憶は、だんだんと遠ざかっていきます。
しかし、誰かの言葉が誰かの心に届くとき、それは新たな“平和の芽”となって芽吹きます。
知覧から始まったその小さな声のリレーは、世代や地域を越えて広がり続けています。
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