老後資金のマネープランを考えるためには、まず、なににいくらかかるかを把握しておくことが大切です。年齢を重ねるほど病院へお世話になることは増えるもの。病気をしたときにお金について教えてくれたのは、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんです。見とおしを立てることで漠然とした不安から解消されるはずです。
知っておきたい、生涯にかかる医療費
医療費よりもむしろ心配なのはオムツ代!?
年をとれば、病院にお世話になることは増えるもの。入院時のお金も知っておく必要があります。
「医療費は高額療養費制度がありますから、支払いが青天井になるということはありません。でも、医療費以外の入院日数に応じて積み上がる費目が大きな負担となります」
そう話すのは介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さん。想定外の負担となるのは「差額ベッド代」「食事代」「オムツ代」だそう。
「オムツ代に補助金が出る自治体もあります。高額療養費制度もそうですが、これらのサポートは“申請主義”なので、忘れずに自治体へ相談を」
生涯医療費2800万円!でも心配しないで
厚生労働省の試算によると、生涯に必要となる医療費は「2800万円」。また60代後半には医療費が「年間226万円」というデータも。
ただし、実際には公的医療制度に加入しているので、保険証を提示すれば自己負担はこの「1~3割程度」。さらに高額療養費制度もあるので、負担額はさらに抑えられます。
「限度額適用認定書」を忘れずに入手!
高額療養費制度は通常、先に医療費を支払い、自己負担額を超えた分は申請後に還付されます。ただし「限度額適用認定書」があると、病院窓口の支払いが自己負担限度額となり、多額の費用を用意する必要もなくなります。
また、マイナ保険証を利用すれば、事前の手続きなく、高額療養費制度における限度額を超えた支払いが免除されます。
80歳が個室に2週間入院したら「29万4688円+α」
もし入院となってしまったら…。一部の例をシミュレーションで紹介します。
●医療費5万7600円
医療費には「高額療養費制度」があり、その月に支払った医療費の自己負担額が上限を超えると払い戻しを受けることができます。一般的な所得者の上限は5万7600円です。
●食事代2万580円
病院の食事代の自己負担額は厚生労働省の定めにより1食当たり490円(ただし、非課税世帯には負担軽減あり)。これは高額療養費制度の対象外なので、実費として支払う必要があります。
●入院保証金10万円
入院が決まると通常、入院保証人と入院保証金が求められます。入院保証金の相場は5万~10万円程度。退院時に精算されますが、病院によっては現金のみでの支払いの場合も。
●差額ベッド代11万6508円
1~4人部屋を希望すると差額ベッド代(特別療養環境室料)がかかります。1人部屋の差額ベッド代の平均は8322円。こちらも高額療養費制度の対象外です。
●差額ベッド代の平均額
1人部屋 8322円
2人部屋 3101円
3人部屋 2826円
4人部屋 2705円
※ 厚生労働省「中央社会保険医療協議会」(令和5年7月5日)資料「主な選定療養に係る報告状況」より
●差額ベッド代を払わなくていいケースも!
以下のケースでは「病院は差額ベッド代を請求してはいけない」と厚生労働省が通達を出しています。病院の都合で個室に入る際は、きっちりと事前に伝えておきましょう。
□患者が同意書にサインをしていない。あるいは、サインをしても説明が不十分
□大部屋にあきがない場合や、患者の治療上の必要性により差額ベッド室を使用した場合
まだまだかかる+αの入院費
上記で紹介した以外にも、入院でかかる費用を紹介します。
●オムツ代2万1000円
オムツの持ち込み不可の病院は日額で支払います。その額は病院によって異なり、1日1500円というケースも。医療費控除の対象になるので、オムツ使用証明について病院に確認を。
●家族の交通費
想定し忘れがちなのが、家族の交通費。診察のつき添いであれば医療費控除の対象となりますが、入院のお見舞いの場合は控除の対象外。
●入院セット
多くの病院で、入院に必要な病衣やタオルなどのレンタルを行っています。入院の準備が不要で、洗濯などの手間が省けますが、入院日数分の請求になるため、長期入院となるとそれなりの額に。医療費控除の対象外です。
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