自民党の県連で相次ぎ浮上している「支部への支出不記載」問題で、新たに愛知県連(会長=丹羽秀樹氏)と鹿児島県連(会長=森山裕・党幹事長)でも多数の不記載が存在することが、調査報道グループ「フロントラインプレス」の取材で明らかになった。いずれも2022年分で、愛知県連は44件・総額約1498万円、鹿児島県連は16件・約105万円に達する。
これらのケースではいずれも、傘下の県内各支部には「県連から交付金を受け取った」との記録が残っているにもかかわらず、県連側には対応する支出の記録がない。そのため、県連は正規の会計とは別の財布、すなわち“裏金”を使って各支部に資金をばらまいていたのではないか、との疑いが出ている。
丹羽氏・森山氏ら6人を政治資金規正法違反容疑で地検に告発
政治資金規正法は政治団体に対し、会計帳簿を備えて収支を厳格に管理することを求め、それに基づく政治資金収支報告書は資金の移動を正確に記載することを義務付けている。不記載や虚偽記載などは同法違反となり、刑事罰の対象になる。
このため、神戸学院大学の上脇博之教授は10月27日、新たに明らかになった不記載に関し、愛知県連代表の丹羽氏と鹿児島県連代表の森山氏、さらに両県連の会計責任者や事務担当者ら合計6人を政治資金規正法違反(不記載、虚偽記載)容疑で、東京地検に刑事告発した。
県連での不記載はこれまで、鳥取県連(会長=石破茂首相)で2020〜2022年の3年間に245万円余り、神奈川県連(会長=小泉進次郎・党選対本部長)の2022年分で698万円余りがフロントラインプレスの取材で発覚している。一方、同様の問題は群馬県連にも存在することが、週刊文春の報道で明らかになっており、こうした不記載は「一部の県連だけでなく、全国の自民党の地方組織でまん延している可能性が強い」(安野右修・日本大学法学部専任講師)との見方が強まっている。
愛知県連は1500万円近く不記載、1件あたりの金額も大きく
新たに明らかになった不記載のうち、愛知県のケースでは、県連からの交付金収入を各支部が収支報告書に記載していたケースは合計71件。このうち半数以上、実に44件(36支部)については県連に支出の記録がなかった。
1件あたりの金額も大きく、自由民主党愛知県郵政政治連盟支部の114万6900円をはじめ、知多郡第二支部への114万円5000円、西尾市支部への83万円、春日井市第1支部への30万円などが目立った。いずれも年間を通じての金額ではなく1回あたりの金額で、100万円以上は2件、50万円以上は13件、30万円以上は26件。10万円以上も39件を数えた。
フロントラインプレスの取材では、これまで単年での不記載額は神奈川県連の約698万円が最高だったが、愛知県連の約1498万円はこれを大きく上回っている。
鹿児島県連では約138万円の不記載「単純なミスとは言い難い」
一方、鹿児島県連の支出不記載は、2022年分だけで少なくとも16件・総額約105万円に上った。関係する支部は15支部に達しており、ここでも「事務的な単純ミス」とは言い難い広がりを見せている。
両県連に関する告発状はいずれも、少なくとも県連にはこれらの支出を賄うだけの収入があったはずなのに、それが記載されておらず、「裏金収入があったと考えざるを得ない」と強調。裏金の原資については、愛知県連代表の丹羽氏、鹿児島県連代表の森山氏がそれぞれ率いていた派閥・グループの政治資金パーティー収入が裏金になっていた可能があると指摘している。
一連の問題について、フロントラインプレスは関係団体に取材を申し入れているが、愛知県連、鹿児島県連、寿はじめ後援会からは期日までに回答を得られなかった。
スローニュースでは、石破首相が代表を務める鳥取県連や、小泉進次郎氏が代表を務める神奈川県連で発覚した不記載についても詳しく伝えている。
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