親の死後に実家を相続したものの、使い道もなく空き家のまま放置しているという方は意外といるようです。しかし、管理が行き届かないと、雑草の繁茂や建物の劣化により、近隣住民とのトラブルが発生することもあります。
この記事では、空き家の維持に伴う課題と、土地を売るべきかどうかの判断ポイントについて解説します。放置がリスクにつながる今、最適な選択を見極めるための視点を紹介します。
空き家を放置するとどのようなトラブルが起きるか
空き家を定期的に掃除・管理しないまま放置すると、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。とくに以下のような点が問題になります。
●雑草が伸び放題で景観が悪化し、害虫が発生する
●雨漏りや外壁の劣化により建物が倒壊しかねない状態になる
●ポストにチラシや郵便物があふれ、不在が明らかで空き巣被害の標的になる
●近隣住民から「不衛生」「景観を損ねる」といったクレームを受ける
これらの問題は、単なる見た目の問題にとどまらず、行政から「特定空家」に指定され、改善命令や固定資産税の増額という形で影響が及ぶこともあります。
親から引き継いだ土地は売るべきかどうかを判断する視点
親の死後に実家を引き継いだものの、住む予定も貸す予定もなく、管理が難しい場合には「売却」が有力な選択肢となります。ただし、すぐに手放すのではなく、以下の観点から慎重に判断する必要があります。
●今後、自分や家族が住む可能性があるか
●賃貸や活用に適した立地・状態か
●維持費用(固定資産税・管理費)が収益を上回っていないか
●相続人間でトラブルなく売却の合意が取れるか
これらを踏まえて、将来的に活用の見込みが低く、管理コストが高い場合は、資産価値が下がる前に売却を検討すべきといえます。
売却以外にも選択肢はあるのか? 空き家活用の方法
実家を売ることに抵抗がある場合や、手放したくない事情がある場合には、以下のような活用方法も考えられます。
●定期借家契約による貸し出し
●シェアハウスや民泊としての運用
●空き家バンクに登録する
●週末利用やセカンドハウスとしての運用
定期借家契約による貸し出し
一定期間のみ貸し出せば、将来的に自分や子が戻る選択肢を残せます。
シェアハウスや民泊としての運用
立地によっては、観光需要や学生ニーズを生かした利用が可能です。
空き家バンクに登録する
地方自治体を通じて移住希望者とマッチングが図れます。
週末利用やセカンドハウスとしての運用
ライフスタイルに応じて、自ら活用する道もあります。
こうした手段には初期投資やメンテナンスの手間が伴うため、費用対効果をしっかりと試算して判断することが求められます。
空き家の維持には予想以上のコストがかかる
空き家は使用していないからといってコストゼロではありません。実際には、以下のような費用が継続的に発生します。
表1
※筆者作成
特に遠方に住んでいる場合、管理のために交通費や移動の手間もかかります。このように、空き家を維持することは精神的・金銭的にも想像以上の負担となるのです。
実家の土地を売却するメリットと注意点
不要な空き家や土地を売却することには、以下のようなメリットがあります。
●管理負担や税金から解放される
●売却代金を老後資金や生活費に充てられる
●相続人間の争いの火種を減らせる
●資産価値が下がる前に現金化できる
ただし、売却には以下の点にも注意が必要です。
●建物の老朽化が進むと、解体費用が売却代金を圧迫する
●土地の評価額と市場価格にギャップがある場合、思ったより安くしか売れないことがある
●複数人で相続している場合は、共有者全員の同意が必要
これらを考慮し、売却する際には不動産会社や専門家への相談を通じて、適切な手続きを進めることが重要です。
まとめ
実家を相続した後に放置していると、思わぬ形でトラブルや金銭的負担が生じます。とくに、掃除や管理が不十分なままでは近隣からの苦情や行政指導の対象になることもあり、問題を先送りにすることで損失が大きくなる可能性があります。
親から引き継いだ土地や建物を「売るべきか」と悩んだときは、使用予定・維持コスト・資産価値の3点から冷静に判断しましょう。手放す決断は感情的なものではなく、長期的な負担軽減と財産管理の合理性に基づく選択です。今こそ、実家の未来に向き合うタイミングと考えましょう。
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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