〈資料写真〉西之表港
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鹿児島県の塩田康一知事は23日、有事に自衛隊などの利用を想定する「特定利用空港・港湾」を巡り、県内8カ所の指定受け入れを表明した。施設がある市町住民は攻撃対象とならないかと不安を募らせた。有識者は「7月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)でも施設の共同使用に言及がある」とし、米軍の利用についても懸念を示した。
川内原発建設反対連絡協議会の鳥原良子会長(75)=薩摩川内市=は、川内原発近くの川内港が自衛隊の拠点となる可能性に触れ、「優先して攻撃対象となり得るのではないか。不安でならない」と憤った。伊仙町の無職富純一さん(70)は「こんな大事なことが住民への説明なしに決まった。県知事選でも説明がなかった。民意をないがしろにしている」と県の対応を批判する。
名古屋学院大学の飯島滋明教授(憲法学)は「ロシアのウクライナ侵攻をみても空港は真っ先に攻撃される。軍事と一体化した民生利用は危険だ。国際法上、軍が利用する空港や港湾は、攻撃対象となっても文句は言えない」と強調。県が否定した米軍の利用に関しては「国からそういう説明を受けたのだろうが、沖縄を例に挙げると米軍は日本との約束を守らない」と指摘した。
市民生活の影響を心配する声も。西之表市の市民団体「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」の山内光典会長(73)は西之表港の指定に、「種子島を基地化する足掛かりに思える。生活に欠かせないフェリーや高速船に影響は出ないか」と訴え、「どんな目的でいつ使うのか、それを周知するのか」と国に情報開示を求めた。
◇対象自治体「適切な情報を」
鹿児島県の塩田康一知事が「特定利用空港・港湾」の指定受け入れを表明した23日、対象施設のある自治体からは国や県に適切な情報提供を求める声が相次いだ。
西之表市の西之表港は、国や県による岸壁や物流機能の強化が計画され、災害時には輸送拠点になる見通しだ。これまで自衛隊訓練や馬毛島への基地整備で活用され、特定利用指定について市総務課は「今までと変わらないと認識している」とする。一方、国や県の情報提供に不足を指摘する市民の声もあり、市担当者は「しっかりしてと県に2度要望した」と話した。
県に調整役としての役割を期待する声は他にも上がり、鹿児島空港が対象となる霧島市安心安全課は「正式決定した場合は、県と一緒に必要な情報を国に求めたい」と述べた。川内港のある薩摩川内市の田中良二市長は「必要に応じた情報提供を国や県にお願いしたい」とのコメントを出した。
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