また後手の遅すぎる決断だ。石破首相が、江藤農相(衆院宮崎2区)を更迭する方針を固め、21日になって最終判断した。事実上の引責辞任だ。江藤氏は辞表を提出した。米価高騰の中、江藤氏は「コメは買ったことがない」と言い放ち、「家に売るほどある」とコメ持ち自慢。石破は叱責して続投させたが、当の本人は反省ゼロ。消費者の怒りは収まらず、政権運営への懸念から方針を一転させた。石破内閣の発足から230日あまり。江藤氏が辞任第1号となった。後任には小泉進次郎元環境相の起用が決まった。
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立憲民主、日本維新の会、国民民主、れいわ新選組、共産の野党5党はそろって江藤交代を要求。21日午後の党首討論で立憲の野田代表が石破に直接更迭を求め、応じなければ農相不信任案を提出する構えだった。少数与党下で可決される公算が大きく、続投は困難な情勢に。与党内からは石破首相の判断の遅れに批判の声が出ている。
江藤氏の放言が飛び出したのは、佐賀市内で18日に開かれた自民党佐賀県連の政治資金パーティー。約4年7カ月ぶりの開催だった。来賓として出席した江藤氏は「私もコメは買ったことありません。支援者の方がたくさんコメをくださるんですね。まさに売るほどあります、私の家の食品庫には」と得意げにスピーチ。地元紙が翌日に報じて全国ニュースとなった。
20日の参院農水委員会で答弁に立った江藤氏は「ウケる話ではなく全くピント外れだった」「妻からも叱られた」「わが家の食品庫は2畳くらいしかないので、(コメを)山積みにできるはずが、そもそもない」などと陳謝したが、垂れた頭は実った稲穂に及ばず。憔悴した様子もなく発した次の釈明が、大臣生命を縮めた。
「言い訳はしたくないが、宮崎ではコメをたくさんいただくと『売るほどある』というふうに言うんですよ。だから、宮崎弁的な言い方でもあった」
言うに事欠いて、県民性にすり替えるなんて火に油だ。
「ちょっとした贈り物をする時に、〈たくさん持っているから気にしないで〉というニュアンスで『売るほどある』とは言いますがねえ……」(宮崎県政関係者)
江藤拓事務所が「米直売所」と表示される珍現象
後任は小泉進次郎氏に
この発言に地元・宮崎県民も「そんな方言はない」とカンカン。宮崎に限らず、謙遜する場面で「売るほどある」という言い回しはする。江藤氏の噴飯解釈は地元にすれば「てげてげにせえよ」という話だ。グーグルマップで「江藤拓事務所」を検索すると、「米直売所(江藤拓日向事務所)」と表示される珍現象まで起きる始末。見苦しく重ねた言い訳が自らトドメを刺した格好だ。
「あの発言はガッカリ。ただ、尊父の江藤隆美元建設相が激しい性格で、失言も多かったから、やっぱり親子なんだよなあ」(前出の宮崎県政関係者)
パーティーで江藤氏は「ホントに私が大臣になると、ロクなことが起こらない」とも力説していた。確かに、第2次安倍政権で初入閣した際はコロナ禍による外食需要の激減が農業を直撃。九州豪雨でも甚大な被害を受けた。予言的中で大臣辞任ドミノ、内閣総辞職まで招いてしまうのか。見ものだ。
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江藤拓農相とはどんな人物なのか。●関連記事【もっと読む】『江藤拓“年貢大臣”の永田町の評判はパワハラ気質の「困った人」…農水官僚に「このバカヤロー」と八つ当たり』で詳報している。
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