今年は戦後80年です。これだけの年月が経ちますと、戦争を経験したことのない世代がかなり多くなっています。そして戦争の話を聞く機会も減ってきていますよね。節目の年の今だからこそ、知っておきたい戦争のことを詳しく解説してまいります。
世界大戦って何?
日本がアメリカやイギリスなど連合国と戦った、第2次世界大戦。そもそもこの世界大戦とは一体何でしょうか?戦争とは基本的に国と国の争いです。世界大戦というのはその規模が違います。よく日本では「太平洋戦争」なんて言い方をしますが、これはあくまで第2次世界大戦の一部です。実際にはヨーロッパやアジア、北米・南米の一部やオセアニアまで、世界中が戦場となり、多くの国が参加したいわば団体戦でした。連合国と枢軸国、この言葉はご存知かと思います。日本は枢軸国ですが、どんな国が参加していたのか知っていますか?日本・ドイツ・イタリア以外にもハンガリーやルーマニアなども参加していました。一方、アメリカやイギリスがいる連合国、こちらはなんと47もの国が参加しています。
世界中が戦場となったこの戦争の結果、世界で5000万人以上の方が犠牲となりました。人類史上最悪と言われています。この戦争がその後の世界に大きな影響を与え、今の国際情勢、政治体制に大きく関わっています。この戦争がなければ今とは全く違った世界になっていた可能性がありますね。
国連は連合国!?
国連の正式名称、ご存知ですよね?そう、国際連合です。では英語ではなんというかわかりますか?United Nations、これ、直訳すると、連合国となります。そうです。日本では国際連合と訳していますが、つまりは「連合国」なんですね。国連は第2次世界大戦で勝った国々の組織がそのまま続いている、というものなんです。
国連には安全保障理事会、という世界の争いや安全について話し合う組織があります。
その組織の中でも常任理事国と呼ばれるのが、アメリカ・フランス・イギリス・中国・ロシアです。なぜこの5か国かというと、戦争の時連合国として活躍をした、軍事的・政治的に強い力を持つ国、ということです。ここにも戦争の結果が色濃く出ています。
そして国連が連合国、ということから実は日本は80年経った今も敵国扱いを受けています。
それが敵国条項です。例えば敵国以外の国からある国が軍事行動を受けた場合、反撃するにも国連の安全保障理事会の許諾を得ることが必要です。しかし敵国の場合は安保理の許諾なしに、その場で反撃をすることができるのです。つまり敵国相手の場合、ちょっとした偶発的な事故からも戦争に発展する可能性がある、というわけです。もちろん日本もドイツもいい加減この敵国条項をなくしてくれ、という話はしています。でもなかなか話は進みません。もしかしたら、この条項を残しておいた方が都合がいい、と思っている国があるのかもしれません。
靖国神社はなぜニュースになる?
毎年閣僚が参拝した、総理が参拝した、しない、などこの時期になるとニュースになるのが靖国神社です。戦争で亡くなった人がまつられていることは何となく知っていると思いますが、実は靖国神社では第2次世界大戦よりもずっと前から日本がかかわった争いで亡くなった人をまつっているんです。例えば皆さんご存知の幕末の英雄、坂本龍馬や高杉晋作、吉田松陰などもまつられています。こうした日本を発展させるために貢献した人たち、特に明治政府側にたって戦った人たちをまつるために1869年に創建されたのが靖国神社なのです(当時の名称は招魂社)。そのためここには西郷隆盛はまつられていません。というのも最終的に反政府側として亡くなったためです。
ではなぜそんな靖国神社への閣僚の参拝がニュースとなったり、中国や韓国から批判されたりするのでしょうか。
それは靖国神社には戦争犯罪人と呼ばれる人たち、いわゆるA級戦犯の人たちがまつられているからです。中国や韓国には「戦争犯罪人を参拝するのか」「戦争を正当化するのか」と批判してくる人たちがいる、というわけです。ちなみにこのA級戦犯というのはA級・B級・C級とあるなかで一番悪い、と思われがちですがそういうことではありません。3つに分類した中でA級、という意味です。A級は平和に対する罪、侵略戦争を計画遂行した、と言った場合に適用されます。
戦後戦争犯罪人を釈放するように国民の間で運動が起き、服役者は釈放され、死刑となった人は公務による死、という扱いになりました。そしてそれを受けて、1978年、靖国神社はA級戦犯14人を他の英霊とともにまつった、という経緯があるんです。靖国神社としては「国家のために一命を捧げられた方々の霊を慰め、それを後世に伝えることが目的」であり「祖国を守るという公務で亡くなられた方々を平等にまつっている」ということなのです。ただその結果、中国や韓国からは反発をうけるようになってしまった、というわけです。
今は戦後80年です。でも20年後、戦後100年といえているかどうかは実はまだわかりません。もしかすると今が戦前なのかもしれません。今を戦前とせず、これからもずっと戦後のまま数字を重ねていけるよう、是非皆さんも歴史を知り、未来へ向けて皆で努力をしていきましょう。
(池上彰のニュースそうだったのか!!8月16日OAより)
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