「お茶どころといえば静岡!」多くの人がそう思っているだろう。しかし2024年、お茶の生産量で鹿児島が日本一に。そこには需要の安定に加え、機械による効率化や土作りといった品質維持など業界全体での取り組みがあった。
統計開始以来初の全国1位
鹿児島県が日本一に輝いたのは「荒茶」と呼ばれる、製品となる一段階前のお茶の2024年の生産量。
2月18日に発表された農林水産省の作物統計調査によると鹿児島県は2万7000トンで、2位の静岡県を約1200トン上回り、1959年の統計開始以来初の全国1位となった。
この快挙について、鹿児島県茶生産協会の坂元修一郎会長は「農家の努力はもちろんだが、行政、農協、指導機関、茶商と、皆さんの協力があって今があると思う。これを機に、さらに鹿児島だけでなく、日本のお茶自体が世界で売れていけばいいと期待している」と話した。
2000年からの鹿児島県と静岡県の荒茶の生産量の推移を比べてみると、鹿児島県は長らく静岡県に次いで2位となっていたが、その差は2008年ごろから徐々に縮まっていた。
そして2024年、静岡県の2万5800トンに対し、鹿児島県は2万7000トンと、ついに1位となった。
機械による効率化と“先人の教え”
2月も折り返しを過ぎ、鹿児島市で茶の生産・加工・販売を手掛ける坂之上製茶の茶畑を訪ねると、新茶の収穫を前に肥料をまいたり、茶葉を切り揃えたりする作業に追われていた。
坂之上製茶の坂之上勝利社長は、生産量日本一について「やはりうれしい。今年の一番茶に向け、テンションが上がった」と喜びの声を上げた。
鹿児島県の茶業は大型機械が支えている。茶摘みや肥料散布などを担う大型機械は、平坦な茶畑が多い鹿児島県で導入しやすく、大型の乗用茶摘み機の導入率は98%に上る。
坂之上製茶でも40年前から大型機械を導入していて、現在は実に30台を保有。坂之上社長は「昔と比べ百人力」と話す。
しかし生産量や品質を維持するには、人の手による取り組みも欠かせない。
坂之上社長は「収量を上げるために土作りをして、茶園を小まめに見回って害虫にやられないよう気を使う。先人の教えを守って茶園を管理すれば、結果が付いてくる」と語った。
「鹿児島茶」をPRして全国へ
農林水産省は、鹿児島県が生産量日本一となった主な要因として、鹿児島県はペットボトル飲料や抹茶、お菓子に使うパウダーなども含めて、産地での茶葉の需要が安定したことで収穫量が増加した一方、静岡県はこの10年で栽培面積が3割減少していることを挙げた。
また静岡県では、価格低迷により農家が生産を辞めてしまっているという。
お茶の生産を巡って鹿児島県は2019年、茶葉や荒茶の販売額などから計算された“産出額”で静岡県を上回り日本一となったことがあるが、“生産量”での日本一は悲願だった。
鹿児島県茶業会議所の光村徹専務理事は「日本一になれば、みんなに知れ渡る。日本一の富士山は知っているが、2位の山は知らない。だからみんなで1番になろうよ」と話し、業界全体で取り組んで勝ち取った日本一を次につなげたいとしている。
さらに「日本茶の需要が厳しい。そこは静岡と一緒に産地間で取り組む必要があると思う」と、二大産地が協力する必要性を訴えた上で「鹿児島は鹿児島茶として全国に知ってもらえるよう、色々なイベントでPRしていく」と展望を語った。
「お茶といえば鹿児島!」と、これまで以上に全国での知名度を上げられるか、鹿児島県の取り組みが注目される。
(鹿児島テレビ)
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