鹿児島のご当地スーパーが熱い! 人気の秘密に迫る!
鹿児島の南さつま市でご当地スーパーが頑張っている。店内各所に卒業生を祝福する「卒業おめでとう」の張り紙があったり、地元で作られた総菜が並んだり。地元愛あふれる大人気のスーパーには、知られざる長い歴史があった。
地域に根ざした「ピコ」の魅力
鹿児島市中心部から車で約1時間、薩摩半島の南西に位置する南さつま市加世田。その街なかにそびえ立つ「ピコ」は、1階が食料品、2階に衣料品などを取りそろえる大型スーパーだ。一見デパートのような外観だが、その内部には地域密着型の温かみが溢れている。
地元愛あふれる店舗づくり
ピコの特徴の一つは、地元への愛情が随所にみられることだ。店内には南さつま市内の小・中・高校の卒業生を祝福する張り紙が張られ、店をあげて地元の卒業生を祝福している。取材したのは卒業シーズンで、店内各所で「卒業おめでとうセール」を開催していた。子どもたちが見たらうれしいだろう。
この地元愛は、取り扱う商品にもたっぷり込められていた。精肉コーナーに並ぶのは鹿児島ならではの「鳥刺し」。もちろん地元加世田の業者、畦元食鳥にお願いして取り扱いを始めたもの。地域の店から商品を出してもらうのは、地元スーパーだからできる仕入れ方法だ。
鹿児島名物「つけあげ(さつま揚げ)」も、地元・竹添商店の商品が販売されている。「つけあげ自体も骨まですり身にして、昔ながらの作り方のつけあげ」という、店長おすすめの逸品だ。
さらに、隣の南九州市川辺の梅木商店から取り寄せた郷土のお菓子も豊富に取り揃えられている。「あくまき」と言って、もち米を竹の皮で包み木灰の煮汁で煮たもの。きなこをまぶして食べるも良し、しょうゆをつけて食べれば焼酎のつまみにもなる、鹿児島伝統の食品だ。後野隆公店長は「お店に来られた地域以外のお客様に、地域の商品の良さを知っていただきたい」と品揃えへのこだわりを語る。
大人気の唐揚げ
ピコの総菜コーナーは店の売上げの約3割を占める人気コーナーだ。中でも特に人気なのが唐揚げ。「唐揚げがすごく評判」と語る来店客もいるほどだ。九州産の鶏肉を使用し、にんにくじょうゆの味付けが食欲をそそる自慢の品で、鹿児島市内からわざわざ買いに来る客もいるという。後野店長によれば、平日でも1日約30キロの唐揚げが揚げられ、ほぼ完売する人気ぶりだ。
長時間タレに漬け込み、2分揚げて1分休ませ、また2分揚げる「二度揚げ」で作られるピコの唐揚げ。記者も食べてみたところ、ニンニクの風味がよく効いていて、醬油の甘さが絶妙にマッチしていた。後野店長によると、ピコの総菜の味は、「バイヤーや、作業場のスタッフが食べながら『こっちの方がおいしい』という感じ」で決めているという。
「大平デパート」からの歴史
ピコの歴史は意外に古い。1946年、終戦の翌年に呉服などを扱う松下商店として創業。1960年には永遠の平和を願って「大平デパート」と名を改め、日用雑貨から衣料品、おもちゃなどを扱うデパートとして1993年まで営業を続けた。
現在の「ピコ」は、1980年にタイヘイホームプラザピコとして別に誕生し、隣接するタイヘイ食品館が今のスーパーの原点となった。屋上の看板に残る「たいへい」の文字は、その歴史を物語っている。
来店客の中には、「『ピコ』とは言わないで『大平デパート』と言っていた」「そこに行けば珍しいものや欲しいものが手に入る。気持ちがワクワクして楽しんで行っていた」と懐かしむ声も聞かれた。
地域に根ざし続けるピコの未来
後野店長自身も、子ども時代の思い出がきっかけでピコで働くことを決めたという。「小さい頃からピコがあった。お店の人を見て『ここに勤めたい』という思いもあって勤めている」と語る後野店長。「そういう地域に根ざした店作りをしていきたい」という言葉には、ピコの未来への思いが込められている。
創業からもうすぐ80年を迎えるピコ。地元を愛し、地元の人々からも愛される、まさに地域にどっしりと根を下ろしたスーパーだ。その歴史と共に歩んできた加世田の街並みを見つめながら、ピコはこれからも地域の人々の暮らしを支え続けていくだろう。
(鹿児島テレビ)
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