80代以上が激増していく日本は本当に大丈夫なのか「厳しすぎる現実」

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人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

100万部突破『未来の年表』シリーズのベストセラー『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか?人口減少が10〜20年後の日本のどの地域をどのような形で襲っていくのか?についての明らかにした必読書だ。

※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。

「在宅医療・介護」から転換する

第4の視点は、「在宅医療・介護」からの転換だ。令和は高齢者の中でも80代以上が増えていく時代となる。

家族介護から社会全体で負担を分かち合うという理念のもとに、介護保険制度は2000年にスタートした。ところが、高齢化に伴う利用者の増大によって、介護費用は爆発的な伸びを続けており、政府は方針を転換し、「『病院や介護施設』から『自宅を含む住み慣れた地域』へ」というスローガンのもとに在宅シフトを推進している。

“介護難民”の増加が懸念されている中で、社会的入院の必要性や要介護度の高くない人が入る特別養護老人ホームを減らすことで、真に必要とする人のベッドを確保するとともに、社会保障費の抑制につなげたいというのが狙いである。

「2025年問題」が迫る中で、慢性疾患を抱えて自宅で暮らせない高齢者も少なくないわけだが、厚労省は長期入院の受け皿となってきた「療養病床」の患者の受け入れ先として、医療や介護が必要な高齢者向けに看取りにも対応する「介護医療院」を新設した。いわば看板の掛け替えのような存在だが、これは広がりを欠いている。

「住まい」としての機能を重視するあまり、「療養病床」よりも広いスペースの確保やレクリエーション室の設置を求められたためだ。将来、建物の建て替えを迫られる病院側には様子見を決め込んでいるところが少なくないことに加え、介護保険で負担するため財源の増加を不安視する市区町村の後押しが十分ではないという事情もある。とても、多くの人が気軽に使える状況にはない。

今後、高齢者が激増していく。介護医療院の普及に時間がかかるとなれば、結局、大半の人は「在宅」を推進するにあたって考え出された地域包括ケアシステムに頼らざるを得なくなっていく。これは、医師や看護師、介護スタッフだけでなく、地域住民の協力なども得ながら高齢者が地域で最期の時を迎えられるようにしようというものだ。

元気なうちから高齢者は集まり住んでおく

ところが、この地域包括ケアシステムは、熱心な医師がいる地域などでは先駆的な取り組み事例も見られるが、こちらもあまり定着していないのが実情だ。というのも、少子高齢化や人口減少問題は、家族や地域に支え手となる年代がいないことが課題だからである。

在宅での介護は医療や介護の専門職だけでは成り立たない。買い物や洗濯、掃除など、患者や要介護者の日常生活の多くは、家族や地域住民のサポートを当て込んでいる。

そこで、肝心の家族や地域住民がいなくなってきていることが問題なのである。都会では近所づきあいが乏しく、住民同士の助け合いが期待できない地区も少なくない。とても受け皿とはなり得ない。

これは、介護離職を余儀なくされる人の増大を招く。総務省の「就業構造基本調査」(2017年)によれば、2016年10月~2017年9月の1年間に離職した人は約9万9000人に上り、5年前の前回調査(約10万1000人)からほとんど減らず、高止まりしていることが明らかになった。若い世代が減っていく現状を考えると、決して小さくない数字だ。介護離職者を減らすことは、人手不足の悪化を防ぐことにもなる。

介護を担う年代は40~50代であり、各職場のリーダー的存在である。こうした人々が突如として抜けてしまったのでは企業は大打撃であり、生産性向上にもブレーキをかけることとなろう。

社会の支え手不足を考えれば、むしろ少ない医療・介護スタッフの人数で患者や要介護者に効率よく対応できる態勢を組むことである。社会保障費の抑制ペースが落ちたとしても、トータルでは歳出削減が進むことだろう。

このためには、元気なうちから高齢者が集まり住んでおくことだ。交通の便利な中心市街地に高齢者向けの居住スペースを建設するか、あるいはこうした建物の周辺に第1の視点にある「王国」を作ることだ。

こうすれば、元気なうちは自律的な暮らしを続けることができるし、大病を患って重度の要介護状態になったときには医療や介護のスタッフは効率よく患者宅を回ることができる。いつでも家族や友人が顔を見に行けるので、介護離職も減らせるだろう。

仕事と親の介護の両立が求められる令和時代にあって、「高齢者の高齢化」が進む前の政治決断が求められている。

つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、多くの人がまだまだ知らない「人口減少」がもたらす大きな影響を掘り下げる。

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