イチジクの木にはたくさんの魅力があります。裏庭にイチジクの木がある幸運な人はそれを実感していることでしょう。葉は美しい緑色で、その葉を茂らせて周辺に生えている光をあまり必要としていない植物に嬉しい日陰をつくってくれます。もちろん果実も美味。収穫したばかりの新鮮なものを楽しむことも、それを使って好きなレシピで焼き菓子をつくることもできます。
イチジクの木には他にもたくさんの利点があります。カリフォルニア州マリンに本社を置くバックヤード・ファーム・カンパニーの創設者にして受賞歴のあるランドスケープデザイナー、クリスチャン・ダグラスは「機能的な点からいえばイチジクの木は剪定が簡単で、水やりの回数も少なくて済みます」と語ります。「日当たりがいい場所に植えれば実をたくさんつけます。挿し木でも簡単に育ち、生育可能な気候帯も広いのが長所です。気候の低い場所でも保護すれば大丈夫です」
イチジクの木が最初に栽培されたのは1万年以上前。オリーブやブドウより約5千年前に遡ります。当時の人々も自宅で栽培していましたが、今もそれは難しくありません。それでは早速イチジクの木の植え方と手入れについて知っておくべきポイントを見てみましょう。
木の手入れ方法
ダグラスによるとイチジクは「生育具合が安定していて、比較的育てやすい木です」。きちんと世話をすれば毎年たくさん実をつけます。そのために覚えておきたい点をレクチャーします。
水やり
ダグラスによるとおいしい果実を収穫したいなら、夏の間の水やりは週に1度で十分です。
「乾燥地農業でトマトを育てるときと同じです。水を減らせば糖分が薄まらず、その結果果実はより甘くなります。果実よりも葉を茂らせてより大きくて密集した木陰をつくりたいのであれば、水やりを週に2回に増やしましょう」
肥料
成長期を通して木が栄養を維持できるように春、芽が出る頃に肥料を与えましょう。ダグラス曰く「私は通常、成分をバランスよく配分した緩効性肥料を4月から7月にかけて2~3回与えています」。
収穫
イチジクは樹上では熟さないので、触ってみて感触が柔らかかったら収穫しましょう。皮がデリケートなので潰さないように注意します。果実が固いようであれば、何か問題がある可能性があります。
「実がなっているのになかなか熟さない場合は、糖度を上げるのに十分な日光が当たっていない可能性があります」とダグラスは指摘しています。「太陽が糖分の生成を促進することを覚えておきましょう」
最低でも年に1回は収穫できます。比較的的温暖な地域では夏に2回実をつけます。
剪定
ダグラスによると剪定に最適の季節は春。早い時期に実施するのが効果的です。「一般的には霜が降りなくなってから2週間後くらいがいいでしょう」。夏に枝が伸びて道を塞いでしまう場合は必要に応じて剪定してください。樹液が皮膚を刺激することがあるので、剪定するときは必ず長袖と園芸用手袋を着用しましょう。
病気と害虫
イチジクは病気にかかりやすく、害虫がつきやすい植物です。特に次のものに被害を受けやすいので気をつけましょう。
さび病: 葉に褐色や黄色の斑点が現れるカビの病気です。見つけたら落ち葉と病気の葉の両方を取り除き、害虫駆除用の珪藻土を与えましょう。
黒葉枯病: これもカビの一種で、対応が遅れると他の植物に伝染する恐れがあります。高温多湿の環境で発生し、葉に淡い黄色の斑点が現れ、その後茶色に変色します。罹患した葉は全部取り除いて廃棄しましょう。
ハダニ: 小さな虫で、葉の裏について油を吸い取り栄養分を奪います。ホースで水を勢いよくかけて吹き飛ばしましょう。広範囲についている場合は石鹸成分由来の殺虫殺菌剤を使用します。
イチジクモザイク病: ハダニによって引き起こされる感染病で葉に薄緑色の斑点が出ます。切り戻し剪定(勢いよく伸びている枝の下の方から出ている、若い枝のすぐうえで切って、枝の勢いを抑える方法)で対応しましょう。
植える時期と場
イチジクの木の休眠期に植えるのに最適ですが、気候によっても時期が異なります。暖かい地方では秋に、寒い地方では霜が降りなくなった春に植えます。
植えてしまえば簡単に育ちますが、そのためには日当たりがいい場所に植えること。敷地内のどこに植えるかは戦略的に決めましょう。
「イチジクの木は地中海原産なので暑さを好みます」とダグラス。「涼しい気候なら南西の壁際が最適です。イチジクは地表面から地上1.5mくらいの間の大気層の気候、つまり微気候のつくりだす暖かさを生かして成長します」。1日に6時間以上に日が当たらなくても育ちますが、実がなりにくくなることはあらかじめ知っておきましょう。また生長には広いスペースが必要なので4.5mから7.5mほど間隔を開けて植えます。小柄な品種は1.8mから2.5m程度にしかなりませんが、ハーディシカゴなどの品種は9m程度にまで成長します。
また家の近い場所に植えないことも大切です。家の土台を傷つけてしまいます。
木の植え方
苗木屋でイチジクの木を買うことを決め、日当たりのよい場所を選んだら以下の手順で植えます。
木の殖やし方
イチジクの木が十分に育ったら、繁殖させてみましょう。敷地内にもう1本植えるのも素敵ですし、ご近所にプレゼントするのもおすすめです。ここでは挿し木で増やす方法を紹介します。
イチジクの種類
イチジクの木は何百種類もあります。以下が一般的な品種ですが、それぞれ適した地域があります。
ブラックミッション種
「1本だけ植えるなら私は普通、ブラックミッション種を選びます。果実はジャムのようで甘くて、健康にいい抗酸化物質が豊富に含まれています。実の賞味期限も適当で、ドライフルーツにすることもできます」とダグラスもすすめています。
アドリアチック種
アドリア海沿岸地域が原産地のイチジク。温暖な気候に適しています。果皮は薄緑色で果肉は蜂蜜のような味です。ペーストをつくるのによく使われます。
ブラウンターキー
他の種類よりも寒い気候の地域で育つので、より北の地域で選ばれています。実はメロンやはちみつのような風味です。
シカゴハーディ
ダグラスが冷涼な気候の地域で栽培するのにすすめているのはシカゴハーディ。枝の一部は枯れてしまいますが、マイナス28℃の土壌温度でも耐えられます。チェリーやストロベリーのような香りの実が楽しめます。
デザートキング
名前は「砂漠の王様」ですが熱い気候には向いていません。でも寒い気候には強く、マイナス15℃という温度にも耐えることができます。成長も早いのが特徴です。果実は熟すと淡い黄色になり、とても甘いのが特徴です。
※この記事は一部抄訳しています。
from House Beautiful
Translation : Yoko Nagasaka
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