【定説を再検証】「九州に熊はいない」は本当か? 過去の捕獲記録や研究者・登山ガイドへの取材で 改めて真相に迫る | きばいやんせ!鹿児島

【定説を再検証】「九州に熊はいない」は本当か? 過去の捕獲記録や研究者・登山ガイドへの取材で 改めて真相に迫る

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近年、“日本各地”でクマの目撃情報や人的被害が報告されます。6月上旬には、神戸市の山林で、初めてクマの出没が確認されたということです。

環境省のまとめでは、昨年度はクマの出没が全国で5万件を超えました。これはそれまで最多だった2023年度の2倍に上ります。

“日本各地”の中で「クマはいない」とされる地域があります。それが九州です。

本当に、九州にクマはいないのか。歴史の専門家や山に詳しい登山ガイドに〝真相〟を聞きました。

古文書にある“九州のクマ”

さかのぼること江戸時代。

クマの毛皮や皮下脂肪、そして「胆のう」が、今の熊本県、肥後細川家の藩主に献上されていたことが、熊本大学の永青文庫研究センターの古文書調査で分かっています。

皮下脂肪は「脂」として傷口に塗り、胆のうは薬として重用されたようです。

九州でクマが出た!?

九州でクマが最後に捕獲されたのは1987年です。大分県の祖母山系で捕獲されたというニュースは、九州に住む人達を驚かせました。当時「クマは九州では絶滅した」が定説だったからです。

ところが、このクマは、遠くからやってきたものでした。森林総合研究所・東北支所による遺伝子調査で、“本州由来のクマが持ち込まれた”ことが明らかになったのです。

で、結局、九州にいるの?専門家と環境省の見立て――

森林総合研究所・東北支所は、“九州産のクマ”が最後に捕獲されたのは1941年と結論づけています。

一方で「クマの目撃は続いている」という見方もあります。

宮崎県高千穂町在住の写真家、栗原智昭さんは「祖母山系では2000年から10年間に複数の目撃があった」と専門誌に報告しています。

野生動物の歴史に詳しい森林総合研究所・九州支所の地域研究監、安田雅俊さんは「いるかいないかは、はっきりとは言えない」と慎重に説明します。

森林総合研究所九州支所 安田雅俊さん

ただ「いるならば、個体数が増えて、もっと目撃情報が増えるはず」とも。

環境省の九州地方環境事務所も「現在、九州にはいなくなった」とみています。

四国や本州から海を渡る可能性は――

今は九州にクマがいないとしても・・・九州は、海を挟んで四国と約14km、本州とはわずか650mしか離れていません。クマが泳いで九州へ渡ってくることはないのでしょうか?

森林総合研究所の安田さんは、四国のクマが20頭ほどいるとされるものの、愛媛県内では近年は目撃・出没情報がないことに着目したうえで、九州に最も近い愛媛県の佐田岬までクマがたどり着き、さらに潮の流れがある海を泳いで渡ってくることは「考えにくい」と言います。

一方で、山口県では、近年クマの目撃情報があるとのことですが、クマが泳いで島に渡ったような形跡はないといいます。これもまた、九州への到達は「考えにくい」とのことです。

その上で、安田さんは「九州の山に入る時にはクマの出没を心配するよりも、ダニにかまれたり、ハチに刺されたりを気にする方が現実的では」とアドバイスしています。

“山が趣味”の人にとっては――

となれば・・・登山や渓流釣りの愛好家にとって、九州は安心して山と触れ合える貴重な場所と言えるのでしょうか?

熊本市中央区などに店舗を構えるアウトドアと登山の専門店「シェルパ」の阿南大吉社長(50)は、山岳ガイドを約30年続け、特に九州の山は隅々まで知り尽くしている第一人者です。

九州の山に詳しい阿南大吉さん

そんな阿南さんは「九州の山で、クマ独特の臭いや糞、足跡など、その気配を感じたことはない」といいます。

「九州の山は安全」と訪れる人も

つい最近も東京から来た登山客が「九州にはクマがいないからね」と九州の山を選んだ理由を話していたといいます。本人以上に家族が心配して九州を薦めることが多いそうです。

さらに、台湾など海外からの登山客は、日本で連日報じられるクマのニュースに、より強く反応していて、九州を選んで来日しているようだと話します。

阿南さんやスタッフは、本州では客を日本百名山のようなポピュラーな山に案内することが多く、そういった山にはヒトが多く、クマが近寄りにくいだろうと考えています。それでも九州外の山へ客を案内する場合には、いわゆる熊スプレーを2本携帯しているそうです。

「熊スプレー」1本1万円前後で売られている

阿南さんは話します。

「クマは自然界の頂点にいる。そのクマが頻繁に人里へ降りてくる昨今のニュースに接する時、クマが種として生き延びようとする進化の過程を見ている気もする。人的被害が出ているのでうかつに共存・共生ということは言えないが、クマが生活しやすい自然を整えることは、ひいてはヒトも生活しやすい環境になると言えるのではないか」

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