貯金が少しずつ減っていくとき、この先どうなるのだろうと不安になる方は少なくありません。
厚生労働省が2026年3月4日に公表した被保護者調査(令和6年度確定値)によると、令和6年度に生活保護が始まった世帯は年度累計で19万7785世帯でした。開始の理由で最も多かったのは「貯金等の減少・喪失」の9万6537世帯です。
この記事では、保護が始まる理由の内訳を13の区分すべてで確認し、あわせて生活扶助の基準額がどのように組み立てられているのかを見ていきます。
1. 生活保護が始まる理由で最も多いのは「貯金等の減少・喪失」
生活保護が始まるきっかけは、被保護者調査の「保護開始の理由別」という集計で毎年度まとめられています。
まずは全体の数から確認します。
1.1 令和6年度に保護が始まったのは年度累計で19万7785世帯
被保護者調査(令和6年度確定値)の第26表によると、令和6年度に保護が始まった世帯は年度累計で19万7785世帯、1か月平均では1万6482世帯でした。
この集計には注意したい点があります。第26表には「転入及び一時的性格を有する扶助のみによる保護開始世帯は除く」という注記が付いており、他の市区町村から移ってきた世帯などが含まれていません。
同じ調査の報道発表資料にある保護開始世帯数は1か月平均1万9045世帯で、こちらは転入等を含んだ数です。理由別の内訳を見るときは、母数が1万6482世帯であることを押さえておきましょう。
1.2 保護開始の理由は13の区分に分かれている
第26表では、保護開始の理由が13の区分に分けられています。令和6年度の年度累計をすべて挙げます。
令和6年度に生活保護が始まった世帯の、理由別の内訳1/2

出所:厚生労働省「被保護者調査(令和6年度確定値)第26表」を参考にLIMO編集部作成
【令和6年度・保護開始世帯数(年度累計)】
最も多い「貯金等の減少・喪失」の9万6537世帯は、全体の48.8%にあたります。
2番目に多い「傷病による」の3万4092世帯は、内訳が世帯主の傷病3万2798世帯と世帯員の傷病1294世帯に分かれます。「失業」の1万2044世帯も、定年・自己都合が8914世帯、勤務先都合(解雇等)が3130世帯という内訳です。
2. 保護開始の理由は世帯類型によって並びが変わる
第26表は、保護開始の理由を世帯類型別にも集計しています。
世帯類型は高齢者世帯・母子世帯・傷病者世帯・障害者世帯・その他の世帯の5区分で、合計すると19万7785世帯になります。
2.1 高齢者世帯は54.6%が「貯金等の減少・喪失」
高齢者世帯で保護が始まったのは7万9402世帯でした。このうち「貯金等の減少・喪失」は4万3346世帯で、54.6%を占めます。
全体の48.8%よりも高く、高齢者世帯ほど貯金の減少がきっかけになりやすいことがうかがえます。
世帯類型別に見た、保護開始理由に占める「貯金等の減少・喪失」の割合2/2

出所:厚生労働省「被保護者調査(令和6年度確定値)第26表」を参考にLIMO編集部作成
【世帯類型別・保護開始世帯数と「貯金等の減少・喪失」の数(年度累計)】
2.2 母子世帯と傷病者世帯では2番目に多い理由が異なる
母子世帯では「働いていた者の離別等」が1393世帯で2番目に多く、離婚などが直接のきっかけになっていることが読み取れます。
傷病者世帯は「傷病による」が1万1369世帯で最も多く、「貯金等の減少・喪失」は2番目です。その他の世帯では「失業」が7530世帯で2番目に入ります。
3. 生活保護の生活扶助基準額は第1類と第2類を足して決まる
保護が始まると、世帯の収入と最低生活費の差額が保護費として支給されます。その最低生活費の中心になるのが生活扶助です。
厚生労働省の「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和8年4月)」をもとに、組み立て方を確認します。
3.1 75歳以上の単身世帯の生活扶助基準額は月7万1900円
生活扶助基準額は、個人ごとにかかる費用の第1類と、世帯ごとにかかる費用の第2類を合算し、そこに特例加算などを上乗せして算定されます。
最も基準額が高い1級地-1に住む75歳以上の単身世帯では、次のような積み上げになります。
【1級地-1・75歳以上の単身世帯の場合(2026年9月時点)】
最低生活費は、この生活扶助基準額に住宅扶助や医療扶助などを加えたものです。生活扶助だけで最低生活費が決まるわけではありません。
3.2 第1類の基準額は級地によって6780円の差がある
生活扶助の基準額は、住んでいる地域を6段階に分けた級地によって変わります。
75歳以上の第1類基準額は、1級地-1が3万9890円、最も低い3級地-2が3万3110円で、その差は6780円です。
一方の第2類は、単身世帯であれば級地にかかわらず2万7790円で共通しています。
4. 保護開始月に認定される手持金は最低生活費の5割を超える額に限られる
保護開始の理由で「貯金等の減少・喪失」が最も多いと聞くと、貯金を使い切らないと申請できないように感じるかもしれません。
しかし生活保護実施要領には、保護が始まる月の支給額を決めるときの手持金の扱いが、はっきりと書かれています。
4.1 実施要領は「最低生活費の5割を超える額」と定めている
厚生労働省の生活保護実施要領等(2026年4月1日施行)には、次のように示されています。
「保護開始時の程度の決定に当たって認定すべき手持金は、当該世帯の最低生活費(医療扶助及び介護扶助を除く。)の5割を超える額とする」
つまり保護が始まる月には、最低生活費の5割にあたる額までは手持金として手元に残り、それを超えた分が収入として認定されるという整理です。
4.2 この5割は要否判定の基準ではない
ここは読み違えやすいところです。実施要領は同じ箇所で、この取扱いについて「要否判定の結果保護要とされた世帯についての開始月における程度の決定上の配慮であり、要否判定、資産・収入の調査についての取扱いを変える趣旨のものではない」と補足しています。
保護を受けられるかどうかという判定の基準ではなく、開始月にいくら支給するかを決めるときの配慮である、ということです。
貯金がいくらまでなら申請できるという線引きとして読まないようにしましょう。
5. 理由別の集計には転入した世帯と一時的な扶助だけの世帯が入っていない
保護開始の理由別の数字を引用するときに、もうひとつ気をつけたい点があります。
5.1 報道発表資料の数と第26表の数は一致しない
被保護者調査(令和6年度確定値)の報道発表資料では、保護開始世帯数は1か月平均1万9045世帯と示されています。
一方、理由別を集計した第26表の1か月平均は1万6482世帯です。第26表が転入と一時的性格を有する扶助のみによる保護開始世帯を除いているため、数が食い違います。
どちらかが誤りということではなく、集計の範囲が違うだけです。ふたつの数字を並べて増減を語ると、実態とずれた読み方になってしまいます。
5.2 月次調査の概数には理由別の集計がない
被保護者調査には、毎月公表される月次調査と、年度ごとにまとまる確定値があります。
毎月の概数で公表されるのは被保護実人員数・被保護実世帯数・世帯類型別世帯数・保護の申請件数・保護開始世帯数で、理由別の内訳は含まれていません。理由まで見たいときは、年度の確定値を待つことになります。
6. まとめ|生活保護が始まる理由の半分近くは貯金の減少だった
令和6年度に生活保護が始まった19万7785世帯のうち、9万6537世帯は「貯金等の減少・喪失」がきっかけでした。高齢者世帯にかぎると、その割合は54.6%にのぼります。
生活扶助の基準額は第1類と第2類を積み上げて算定され、1級地-1の75歳以上の単身世帯では月7万1900円でした。
数字はあくまで全国の集計です。ご自身やご家族の家計に当てはめて考えるときは、住まいの地域の福祉事務所で、世帯の状況にもとづいた説明を受けてみてはいかがでしょうか。
相談した内容は書面で受け取り、ご家族とも共有しておくと、あとから確認しやすくなります。

統計の区分名は似たものが並ぶので、記事にするときは必ず表のラベルを確認しています。
ご家族の家計を心配されている方は、調査の数字をそのまま当てはめる前に、どの区分の数字なのかを一緒に確かめてみてください。


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