主原料を入れ発酵させた2次もろみをかき混ぜる杜氏ら=10月31日午前8時すぎ、南さつま市の杜氏の里笠沙
焼酎など日本の伝統的酒造りが国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録される見通しとなった5日、鹿児島県内の酒造現場の担当者は「受け継いできた技が認められた」と喜んだ。観光や物販関係者は「焼酎を売り込む好機」と捉えて歓迎する。
多くの蔵元で機械化が進む中、焼酎づくり伝承展示館「杜氏の里笠沙」(南さつま市)の工場はほとんどの工程を手作業でしている。政府はユネスコへの申請内容に、担い手である杜氏(とうじ)・蔵人(くらびと)が築き上げてきた技術を盛り込んだ。
昨春、杜氏に昇格した黒瀬道也さん(51)は「鹿児島の先人たちが大事に伝承してきた技が世界に認められ誇らしい」と笑顔を見せた。こうじ造りが風味を左右すると教わってきた。「こうじがいい働きをしてくれるように手助けし、全国、世界へ焼酎の魅力が広がることを願っている」
政府は登録を機に、日本の酒類の海外客への売り込みや観光振興に役立てる考えだ。
111の蔵元が加盟する県酒造組合の浜田雄一郎会長(71)は「焼酎は日本酒と比べて国酒のイメージが十分でなかったが、アピールしやすくなる。職人魂が生み出す高付加価値の産品を国内外に売り込みたい」と話す。地域に根差す中小規模の蔵元が登録の利点を生かせるとみる。自然・文化と三つある県内の世界遺産と連携した観光振興も視野に「焼酎造り体験や現地での食と組み合わせた展開も可能」と力を込める。
鹿児島市で観光コンサルティング会社を経営するアレキサンダー・ブラッドショーさん(45)は「まずは国内客を中心に蔵元見学の希望が増えそう。焼酎になじみの薄い海外客にも効果的に宣伝するきっかけになる」と見込む。
県商工会連合会が運営する同市の「かごしま特産品市場」には県外客や訪日客も訪れる。焼酎は県内各地の100種類以上が並ぶ。鳥丸亮支配人(44)は「かつお節やさつま揚げなど焼酎とセットで楽しんでほしい特産品がたくさんある。どちらも広がってくれたら」と期待する。
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