「腎臓」一度悪くなったら元に戻らず…健康診断の数値のポイントと「腎臓」を労わる方法

image
CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』

身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
メインMCに石丸幹二さん、サブMCは坂下千里子さんです。
ドクターは、東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 医学博士 横尾隆先生です。

今回のテーマは「〜あなたの寿命を左右する!?〜名医に学ぶ!腎臓の数値の見方」

実は、成人の5人に1人が「慢性腎臓病」と考えられているそうです。腎臓は一度悪くなったら元に戻らず、人工的に機能を補う人工透析治療が一生続きます。しかも、腎臓は他の臓器と密接に関係。腎機能が低下すると、その関係性が崩れ心筋梗塞や脳卒中などの心血管病が起こる危険性が高まり、近年は認知症に関係することも分かってきているのだとか。そこで今回は、腎臓の衰えをイチ早く察知すべく、健康診断の数値を読み解くポイントや腎臓を労わる方法を専門医に教えてもらいました。

腎臓の基礎知識

CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』

<腎臓について>
腎臓は身体の中央、背中側に2つあり、1つの重さは120〜150gと人体の中でも比較的小さな臓器です。その主な役割は、血液をろ過し体の毒素を尿として排出する事や、体の水分量を一定に保つ事などがあるそうです。

<慢性腎臓病はどんな病気?>
慢性腎臓病(CKD)とは、腎機能の低下や腎臓の障害が3か月以上続いた状態の事を言うそうです。

<健康診断の腎臓の数値は?>
腎臓の機能や異常をチェックする時に注目するのは「尿蛋白」「クレアチニン」「eGFR」の3項目だそうです。

腎臓の数値の見方(1)「尿蛋白」

尿蛋白は、主に「-」「±」「1+」「2+」「3+」の5段階で診断され、「±」以上が基準値以上で注意が必要だそうです。

<尿蛋白の原因>
正常な腎臓は、「糸球体」という血液をろ過する組織がたんぱく質などの栄養分を血液内に残し、老廃物や水分などを尿として出します。ところが、腎臓のフィルターの網目が大きくなるなど働きが低下すると、たんぱく質などの栄養分が血管から漏れ出て尿に混じり尿が泡立つ事につながるのだとか。これが尿蛋白の原因。先生によると、尿蛋白の検査は感度があまり良くなく、数値が「−」でも、約10人に1人は尿蛋白が出ている事があるのだとか。そのため、数値が正常であっても泡立つ尿が出る人は一度精密検査を受けた方が良いそうです。尿蛋白が悪化すると、息切れや貧血などの症状が出る事もあるそうなので、健康診断の結果だけではなくトイレの際はぜひ確認をしてみてください。

腎臓の数値の見方(2)「クレアチニン」

クレアチニンとは、筋肉を動かすための物質が代謝されて出てくる老廃物のこと。基準値は、男性0.65〜1.07mg/dl、女性は0.46〜0.79mg/dLだそうです。

<クレアチニンの数値が高いとどうなる?>
先生によると、腎臓は2段階で悪くなっていくそうです。第1段階は「尿蛋白」。糸球体の網目が大きくなり、必要な栄養素であるたんぱく質が尿として身体から出てしまいます。第2段階は、100万個近くある糸球体が徐々に潰れていき、通常よりもろ過できる量が減少します。すると、血液が腎臓に運ばれてきてもクレアチニンなどの毒素を排出できず体内に蓄積するため、クレアチニンの数値が高くなるのだとか。尿を濃くする濃縮力も低下するため、夜間多尿や倦怠感などの症状が出やすくなってしまうそうです。

<クレアチニンの数値が上がる?腎臓に悪い食生活>
先生によると、腎臓に一番負担をかけるのは「塩分」。塩分を過剰に摂ると血圧が上がり、糸球体のろ過膜にかかる圧力が上昇して膜を壊してしまうのだとか。お味噌汁やきゅうりの漬物など、和食にも意外と塩分が多く使われているので注意が必要だそうです。

腎臓の数値の見方(3)「eGFR」

eGFRは性別・年齢・クレアチニンの数値から算出される、腎臓のろ過量を表す数値。「G1(90以上)」「G2(89〜60)」「G3a(59〜45)」「G3b(44〜30)」「G4(29〜15)」「G5(15未満)」のステージに分かれており、G1は正常でG2がほぼ正常。G3aからは慢性腎臓病と診断されるそうです。

<正常でも安心できない?eGFR値の落とし穴>
eGFRの基準値は60ですが、75を切ると心不全のリスクが上がり始めるそうです。腎臓は心筋梗塞や脳梗塞とも密接に関わっているため、早期に発見して早めに手を打つ事が大切なのだとか。そのため、健康診断では異常なしでもeGFRの数値が75を切ったら要注意。腎臓に負担をかけるような食生活や生活習慣を改善して健康寿命を伸ばしましょう。

腎臓は寿命を左右する?沈黙の臓器の恐ろしさ

CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』

腎臓は“沈黙の臓器”と言われており、慢性腎臓病になっても自覚症状はほとんどないそうです。有名な症状には「むくみ」がありますが、お酒などさまざまな理由があるため、腎臓が原因だと考えず見過ごされやすいのだとか。さらに、むくみは足などの見える部分だけでなく、肺や心臓など身体の内面にも及ぶといいます。例えば心臓がむくむと、心臓を包む膜の中に水が溜まり、心臓の動きが悪くなってしまうそうです。

腎臓を労わる食事法

腎機能は生活習慣に大きく影響するため、先生の病院では患者に合わせて管理栄養士が個別で栄養指導を行なっているそうです。内容は、主な食品の塩分量の説明や、1週間の献立からどう食生活を変えるかのアドバイス。実際に病院で指導している管理栄養士さんおすすめの食事法をご紹介します。

<腎臓を労わる調味料>
厚生労働省の設定する1日の推奨塩分摂取量は男性7.5g、女性6.5g。しかし、現在日本人の平均塩分摂取量は約10gとかなり多めだそうです。腎臓のためには塩分は控えつつもカロリーは減らさない方が良いので、塩分が少なくてカロリーが摂取できる調味料としてマヨネーズやケチャップがおすすめ。調味料小さじ1杯分の塩分量はソース0.7gに対して、マヨネーズは0.09g、ケチャップは0.2g。そのため、例えばカキフライやエビフライを食べる時は、ソースを少なめにしてタルタルソースを多めにすると良いそうです。

<腎臓を労わる減塩レシピ「出汁をきかせた減塩お味噌汁」>
食卓に並ぶ回数が多いお味噌汁。通常の味噌汁は塩分2g程度ですが、味噌の量を減らして出汁をきかせる調理法によって、塩分を1g程度にする事ができるそうです。
≪材料(4人分)≫
・シメジ
・シイタケ
・玉ねぎ
・味噌小さじ4
・無塩の顆粒だし小さじ2
・水400cc
≪作り方のポイント≫
一般的な味噌汁と作り方は同じですが、大事なポイントはシイタケ・シメジを食べやすい大きさにカットして12時間冷凍させる事だそうです。冷凍する事でキノコの細胞を壊し、旨味成分であるグアニル酸などのアミノ酸が増加。旨味や栄養価が生の状態と比べて、約3倍に増えると言われているのだとか。味噌汁を作る際は、凍ったまま鍋に入れて加熱すればOK。先生によると、この減塩味噌汁を飲んで薄味に感じた場合は、普段の塩分摂取量が多いと考えられるそうです。

減塩生活の大事なポイント

先生によると、減塩は一時的なものではなくて、ずっと頑張らなくてはいけないもの。そのため、ゆっくりと減塩に慣らしていく事と無理なく継続できるようにする事が大切だそうです。

(2024年11月17日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)

コメント