知的障害は予防や治療の方法がわかっておらず、患者さん自身が社会生活を送るうえでも大きな影響を及ぼすことが少なくない障害です。
この記事では知的障害の概要や原因のほか、混同されることがある発達障害との違いや、知的障害と診断された場合に利用できる制度・窓口などについて解説します。
身近に知的障害の患者さんがいる方だけでなく、知的障害について知りたいと思っている方も、ぜひ参考にしてください。
≫「知的障害と発達障害の違い」はご存知ですか?それぞれの特徴も解説!【医師監修】
※この記事はMedical DOCにて『「知的障害の原因」はご存知ですか?症状や特徴も解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
知的障害の原因や特徴・症状
知的障害の原因について教えてください。
知的障害の原因には、大きく分けて遺伝的要因や外的要因があります。遺伝的要因の具体例として挙げられるのは、ダウン症やコフィン・ローリー症候群などの染色体異常です。また、先天的な代謝異常も知的障害の発症リスクを高めるとされています。一方、傷病や環境など外的要因の例は下記のとおりです。
その他に、母体の健康状態が知的障害の発症リスクを高める可能性があります。例えば、妊娠中に風疹や麻疹などの感染症に罹患した場合や、母体の栄養不足、アルコールの摂取も原因になることがあるため注意が必要です。ただし、複数の要因が影響しあって発症する場合もあり、知的障害の原因が断定できるケースは多くありません。
知的障害の特徴について教えてください。
知的障害の特徴としては、知的機能の低下と、それに伴う適応行動の困難さが挙げられます。まず、知的機能の低下とは、学習能力のほか概念的思考や問題解決能力、思考の柔軟性に課題がある状態を指します。また、適応行動には社会的なスキルを身につけたり、環境に合わせて行動を変えたりといった幅広い能力が含まれます。こうした機能の発達が不十分なため、知的障害がある方は自己管理や対人関係のほか仕事の遂行など、生活のさまざまな領域において困難を抱えやすいという特徴があります。さらに、こうした影響から年齢相応の社会的な役割を果たすことや、独立した生活を送ることが難しいケースも少なくないでしょう。
知的障害の症状にはどのようなものがありますか?
知的障害の症状は、知的機能や日常生活における適応行動に関する困難が中心です。具体的な症状としては、下記のようなものが挙げられます。
また、社会的なスキルにも影響が出ることが多く、他者とのコミュニケーションや対人関係の構築に困難を抱えることがあります。同じ知的障害のなかでも障害の重さは幅広く、また個人の特性により抱える困難にも差があります。
知的障害と発達障害の違いについて教えてください。
知的障害では知的機能全体に影響がみられ、知能指数(IQ)がおおよそ70未満で、学習や日常生活スキルの制限が見られる状態を指します。先天性の原因も多く、18歳までに症状が現れることが特徴です。一方、発達障害は脳の特定の機能の発達に問題があり、知的機能には問題がない場合も多いのが特徴です。特定の領域での困難が特徴ですが、不得意とする領域以外の活動は一般的な水準で行えるため、小児期には異常が目立ちにくく成人してから診断されるケースも少なくありません。なお、発達障害は単一の疾患ではなく自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などを含む障害の総称であり、それぞれの特性に応じた支援が必要です。
編集部まとめ
知的障害を抱えている方は、ほかの人が日常的に行っていることや何気なくできていることにも大きな困難を感じていることも多いでしょう。
また、発症に先天的要因が関わっていることや患者さんの自立した生活が難しいことから、知的障害がある方の兄弟や親が大きな負担を抱えている場合もあります。
こうした背景のなかで、周囲の人たちが知的障害の特性や支援の在り方について理解を深めることは、患者さん本人や家族の負担を和らげることにつながるかもしれません。
参考文献
この記事の監修医師
伊藤 有毅 医師(柏メンタルクリニック)
専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
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