どうする空き家?どうする相続?法改正で責任所在も明確に 将来誰にでも起こり得る問題を考える

総務省によると、鹿児島県は2023年10月時点の空き家率(賃貸・売却用、別荘などを除く)が全国で最も高い。親族が亡くなり主を失った家が空き家になると現実化するのが「相続」の問題だ。誰しもに起こり得るこの問題、私たちはどう向き合うべきなのか。

親から引き継いだ家 相続人は10人以上

2024年6月、母親の妹で80代になる叔母を亡くした鹿児島市の60代男性は「それまでの付き合いがほとんどなかった。かなり混乱をしてどうしていいか、わからなかった」と語る。

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叔母は独身で、親から引き継いだ実家で1人暮らしだった。高齢の母に代わって相続手続きを行っているが、叔母と目立った付き合いはなかった。

司法書士に建物と土地の調査を依頼したところ、いずれも叔母の名義と確認できた。相続人は、県内外の10人以上に上り、どう整理するのか話し合いが必要で、それまでは「空き家」になりそうだという。

男性は、とりあえず相続人全員の共同持ち分で相続登記した後、第三者に売却していかざるを得ないと話し、最後に「このまま、放置するわけにはいかない」と自分に言い聞かせるように語った。

相続後空き家になるケースが多い

鹿児島県は、特に使用目的がない空き家の割合が13.6%と全国で最も高い。

主な要因として、地域柄、九州地方では親と別々に住む傾向があること、そして鹿児島は、65歳以上の高齢者の1人暮らしの割合が16.5%と全国で2番目に高いことが挙げられる。

空き家となるケースが多いのが、先ほどの男性のような相続だ。鹿児島市で相続のコンサルタント業を営む、かごしま相続不動産・取締役の裁原萌衣さんによると、空き家になっているのは親の家、つまり相続した人の実家であるケースが多いという。50代、60代の人が実家を相続するとき、大抵の人は自分の家がある状態で相続することになるため、「解決しなきゃという優先順位が低くなってきてしまうのではないか」と裁原取締役は分析する。

空き家の問題点は、倒壊の恐れや災害時のリスクなど、近隣の迷惑になる可能性があることだ。2023年8月には鹿児島市の住宅街で空き家が突然崩壊し、道路が7時間近く通行止めとなった。

“空き家”の固定資産税が6倍に

そんな中、空き家の所有者の責任を明確にする2つの法律が改正されている。

1つ目は、「空き家特別措置法」だ。空き家を放置して問題が生じている場合、住宅としての税金の優遇措置がなくなり、固定資産税が上がる。2023年12月からは、対象となる空き家の基準がこれまでより広がった。裁原さんは、倒壊寸前や管理不全の空き家に認定されると、最大で固定資産税が6倍になったり、罰金50万円が科せられる可能性を指摘する。

もう1つは、「相続登記の義務化」だ。これまで土地、建物の名義について、持ち主が亡くなった後、特に名義を変えなくても問題はなかった。しかし、法改正により、相続人が協議した上で名義を変更することが義務化された。

鹿児島地方法務局によると、法律が施行された4月以降、例年を上回る人が相談に訪れているという。

家族内で話し合い所有者を決める

今後、問われる空き家の所有者の意識。では、どうすればいいのだろうか。

鹿児島市内に住む土手由美さん。母親が亡くなり、父親も施設に入っているため、実家は、約4年間空き家になっている。

「いつかはどうにかしないといけないと思った」と話す土手さんは、父親、弟と話し合って実家の所有者になり、夫婦の“ついのすみか”として建て替えることを決めた。土手さんが現在住んでいる家には、長男家族が入る予定になっていて、空き家も生じないことになる。

「片付けが一番大変だった」という土手さんは、建て替える場合も、売る場合も早めに片付けをして準備することが大事だとアドバイスをしてくれた。

かごしま相続不動産・裁原さんは「スムーズな相続のためには、前向きに将来のことについて話し合いの場を設けることが必要」と強調する。

少子高齢化の時代に空き家を減らすという根本的な解決策は見当たらないが、所有者となりうる私たちは意識を高める必要がありそうだ。

もうすぐお盆。家族や親類で集まったときに、自分たちが生まれ育ち、思い出が詰まった実家をどうするのか、少しでも話をする機会を持ちたいものだ。

(鹿児島テレビ)

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