夢のマイホームを手に入れるには、新しく建てる以外にも「中古住宅」を購入する方法もあります。新築よりも低予算で手に入るので、魅力的に思えますよね。しかし、そこには落とし穴も……。
建築歴23年。人気YouTubeチャンネル「職人社長の家づくり工務店」の配信者で、10年間で100軒以上の住宅を解体・修繕し、住宅の性能の特徴を理解しつくしている平松明展さん。今回は「新築or中古」について、平松さんの解説を著書『住まい大全』よりお届けします。
新築と中古のメリットとデメリット
初期費用だけを見てどんな住まいにするかを決めるのは、「ちょっと待った!」です。住み続ける過程で発生するランニングコストこそ把握しておく必要があります。新築と中古住宅を比較し、最適な住まいを模索しましょう。
中古住宅は建物の状態を把握しきれない
ここ数年の物価上昇は財布の紐を締めますよね。住宅も同様で価格が下がるのを少し待ってみようという人もいるでしょう。しかし、住宅の価格は一時的に下がったとしてもすぐに上昇します。過去約60年で一時的に下がったのはリーマンショックなど大きな経済変化があったときのみ。そう考えるとできるだけ早く購入したほうが賢明だといえます。
先行き不透明だからこそ、少しでも初期費用を抑えたいという気持ちになるのはわかります。そう考えると、中古住宅は魅力ですね。ローン返済の期間を長くできない年配の方などには、有効な選択になるかもしれません。
新築と中古のどちらが適しているかは一概にいえませんが、ライフプランを考えたうえで判断してもらいたいです。というのもメンテナンスコストや光熱費などランニングコストが新築と中古では大きく変わってくるからです。ここで解説する新築は高性能住宅を指します。
※画像はイメージです
新築と中古住宅を比較する前に、中古住宅のメリットとデメリットをお伝えします。メリットは初期費用を抑えられることと、物件がすでに存在しているので立地や周辺環境のほか、外装、間取りなどが把握できることです。しかし、それは表面的なことにすぎません。
基礎や構造、建材がどのような状態になっているかはわかりませんよね。壁の内側や床の下を目視することができませんから。また断熱性、耐震性なども同様です。仮にそうした性能を有していた物件だったとしても、築年数が長くなれば劣化していたり、機能不全になっていたりすることがあります。例えば漏水があった場合、そこから壁、床、柱などあらゆるところに悪影響が及びます。多いのが窓の性能が低くて結露し、カビやシロアリが発生してしまうこと。リフォームに1000万円以上を要することもあります。これは中古住宅の典型的なデメリットで、新築を買ったほうがよかったというケースも少なくないのです。
もし、中古住宅を選ぶ場合は、平屋のほうが安心です。構造面で懸念があっても家がつぶれにくいですから。鉄筋の住宅も同じことがいえます。それでも安全・安心というわけではないので以下の9点を注意して確認していただきたいです。
①床の傾きやシミなどの汚れ
②天井やその付近のクロスのシミ
③水まわりの収納
④設備
⑤配管
⑥間取り・配置・生活動線
⑦暖かさと涼しさ
⑧臭い
⑨駐車場の位置
物件にもよりますが、窓の位置や間取りを変えるのは大掛かりな工事になります。住宅の性能を下げてしまうこともあります。リフォームできることが限られていることも念頭において検討するとよいでしょう。
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長期的に見るとコストの捉え方が変わる
新築は経済的に重荷だけれど、中古住宅のリスクも避けたいという場合、建売住宅の選択肢もあります。注文住宅よりは割安で購入できます。ただし、高性能住宅とは限らないので、そのあたりは念頭において判断してください。
新築、中古、新築の建売のどれかを選択するにせよ、ライフプランに基づいて判断することが必須です。30歳の人が100歳まで住むことを想定し、70年の期間でシミュレーションしてみます。わかりやすくするため土地代は抜きにし、中古住宅は住む前のリフォーム代を入れていません。
初期費用は新築3000万円、中古は1000万円と設定します。ここでは2000万円の差がありますよね。次に光熱費を見ていきます。新築が月々2万円、中古が月々3万円と設定した場合、年間で12万円の差額が出ます。次にメンテナンス費用ですが、新築の場合は10年おきに約100万円、中古の場合は10年おきに約200万円が必要になると考えておいたほうがよいでしょう。40年後の70歳の時点で比較すると、光熱費は中古が新築より480万円プラス、メンテナンス費用は400万円プラスということになります。880万円の差が出ているわけです【表1】。
ここから先はさらにその差が広がっていきますが、それより重大なことがあります。物件の性能にもよりますが、仮に築20年の中古物件を購入したとすると、40年後は築60年。建て替えが必要になる可能性が高いのです。あと30年間を生きるとしたら、そこから新たに物件を購入するにしても、賃貸にするにしても費用が発生します。70年後を待たずして新築のほうがお得であることをご理解いただけるでしょう。
このシミュレーションはあくまでも30歳の方を想定したケースです。購入する年齢によって比較結果は変わってくるのは当然ですが、新築の場合、売却して収入を得られるという側面もあります。こうした事態を考えてもライフプランの重要性がわかることでしょう。
『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』(著:平松 明展)より一部抜粋・再編集
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