日産の切り札「第三世代e-POWER」はトヨタやホンダ製HEVを超えられるのか?

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 日産が、2025年2月13日に開催した2024年度第3四半期決算発表会で登場を予告した、第3世代e-POWER。大幅な燃費性能改善とコスト低減を実現するとされており、トヨタの「THS-II」やホンダの「e:HEV」と比べて、弱点を指摘されがちだったe-POWERにとっては、待望の進化といえる。

 とはいえ、新世代のe-POWERがトヨタやホンダのハイブリッドシステムを凌駕する性能を持つのかは、やはり気になるところだ。はたして、第3世代e-POWERはライバルを超えることができるのか——!?

e-POWERの燃費向上策は、現実的かつ最適な戦略

 2025年2月13日の決算発表では、2025年度から2026年度にかけての新型車投入計画が明らかになった。PHEVを搭載した新型車や、新型の軽自動車、大型ミニバンなどが含まれており、さらには次世代「リーフ」や新型コンパクトEVの登場も予告。一気に商品力を強化し、ターンアラウンドを加速させる構えだ。

次期リーフのベストカー予想CG。 デザインはさておき、次世代リーフをはじめとする電動車では、高速燃費の改善と、上昇してしまった車両価格の低減が必須だ
次期リーフのベストカー予想CG。 デザインはさておき、次世代リーフをはじめとする電動車では、高速燃費の改善と、上昇してしまった車両価格の低減が必須だ

 この発表の中で、第3世代e-POWERについても言及されたわけだが、日産によると、第3世代e-POWERは、初代e-POWER比で燃費を20%向上させ、コストも20%削減。さらに、高速走行時の燃費については、第2世代e-POWER比で15%の改善を達成するという。具体的な燃費向上の鍵を握るのは、「新燃焼コンセプトを採用したe-POWER専用エンジン」とのこと。察するに、従来のe-POWERのように走行シーンに応じてエンジン回転を変動させながら発電するのではなく、発電効率が最も高い定点で集中的に燃焼させる仕組みを採用するものだと思われる。

 参考に、第2世代e-POWERを搭載する現行ノートと、ホンダ「フィット」の e:HEV、トヨタ「アクア」の燃費データをまとめた。従来のe-POWERは高速道路モードでの燃費低下が顕著であり、この点がe-POWERの弱点としていわれ続けているわけだが、第3世代e-POWERで高速道路モード燃費が15%向上するならば、ノートの燃費は31.1km/L(高速道路モード)となり、現行フィット e:HEVを上回り、トップのアクアに迫る水準に達する可能性がある。

 とはいえ、トヨタやホンダも絶えず技術進化を続けているため、e-POWERだけが進化する状況にはならないとは思われるが、大規模な新規投資が難しいいまの日産にとって、新燃焼コンセプトを採用したエンジンによる進化は、現実的かつ最適な戦略といえるだろう。

第3世代e-POWERは、初代比で燃費を20%向上、かつコストは20%削減、さらに高速走行燃費は第2世代で15%向上と説明。それが本当ならば、他車ハイブリッドに太刀打ちできるかも!??
第3世代e-POWERは、初代比で燃費を20%向上、かつコストは20%削減、さらに高速走行燃費は第2世代で15%向上と説明。それが本当ならば、他車ハイブリッドに太刀打ちできるかも!??

高速走行モードの落ち込みが激しい現行ノートe-POWER
高速走行モードの落ち込みが激しい現行ノートe-POWER

コスト低減は、2023年に発表された「X-in-1」の採用によるものか!??

 また、20%ものコスト低減を実現する具体的な方策については、2023年春ごろに「X-in-1」という名前で公開していた新技術の採用によるものだろう。「X-in-1」には、e-POWER用のモーター、インバーター、減速機、発電機、増速機を一体化した「5-in-1」と、バッテリーEV用の「3-in-1」があり、この2つに共有のユニットを使うことでコストを下げていく作戦だ。

 当時日産は「X-in-1」によって、パワートレインのコストを2019年比で約30%削減できると説明しており、「2026年にe-POWER車のコストをエンジン車と同等にする」としていた。2025年に登場予定の次世代「リーフ」や新型コンパクトEV、新型軽自動車、さらに2026年に登場が予定される大型ミニバン(エルグランド)にも採用される可能性が高い。

日産が2023年に3月に技術発表した、モジュール化した新開発電動パワートレイン「X-in-1」。パワートレイン コストを2019年比で約30%削減し、e-POWERは2026年までにエンジン車と同等の車両コストを目指すとしていた
日産が2023年に3月に技術発表した、モジュール化した新開発電動パワートレイン「X-in-1」。パワートレイン コストを2019年比で約30%削減し、e-POWERは2026年までにエンジン車と同等の車両コストを目指すとしていた

「飛び道具」投入はまだ先? それでも地道な進化に期待!!

 世間から期待されているのは、e-POWER用の高速走行用2速ギアや、ホンダe:HEVのような直結モードの採用といった、インパクトのある「飛び道具」(新技術)だろう。しかし、現時点の日産には、多額の投資を必要とする大規模な技術開発は容易ではない。収益が安定するまでは、地道な改良を重ねた新型車をコツコツと投入し、確実に商品力を高めていくのが最善の戦略といえる。

 ただ、裏では、しっかりと新技術の研究開発を進めておき、落ち込んでしまった中国市場、より盛り上げたい米国市場、足元の日本市場、いずれかの市場が盛り上がった段階で、満を持して「飛び道具」が投入される、くらいのサプライズは期待したいところだ。

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