甲突河畔で夜桜を楽しむ花見客=鹿児島市加治屋町
地球温暖化が進むと、30年後の鹿児島では桜の花見ができなくなる?-。県内の染井吉野(ソメイヨシノ)を調べている森林総合研究所九州支所(熊本市)の勝木俊雄支所長=農学博士=は、開花が遅かったり、花芽が少なかったりする近年の異常を挙げ、「気温上昇が続けば、正常に開花しない年が増え、だんだん咲かなくなる」と指摘する。
気象庁は毎年、全国各地の桜の開花日と、8割の花が咲いた満開の日を発表している。勝木さんは、開花だけで満開にならない年があることに着目。記録では分からない実際の変化を調べるため、ソメイヨシノの分布南限の鹿児島県で2022年春に調査を始めた。
22年は県内各地の開花や満開の時期にほとんど違いはなかったが、23、24年と異常が続いた。鹿児島市、指宿市、屋久島町で開花が遅く、咲く時期にばらつきがあった。さらに花芽が成長せずに落ちてしまい、木全体の開花した花数が減っているという。
原因と考えられるのが冬の温暖な気候だ。勝木さんによると、桜は冬の寒さによって低温刺激を受けることで「休眠打破」と呼ばれる目覚めを迎え、春先の暖かさで花芽が発育する。開花異常が観察された年の調査区では、目覚めに必要な低温刺激が不足していた。ただ、刺激が十分な調査区でも開花がそろわず、他の要因も考えられるという。
勝木さんが鹿児島市の甲突川左岸で調査している木(10本)は、昨年の異常な開花の影響で、枝が冬芽から成長せずに、枝の途中の「不定芽(ふていが)」から突然新しい芽が成長する現象がみられる。冬が暖かい所で顕著にみられ、県内では屋久島町安房の木に多い。
勝木さんは「不定芽に由来する枝は、前年の暖冬の影響でつくられ、ふつう花芽を付けない。今年の鹿児島市では比較的正常に咲いているが、前年の影響で花芽が少ない。このまま気温が上昇すると、東京の桜のように多数の花が咲きそろうことはなくなっていく」と話した。

コメント