日本人人口が過去最大の89万人減 → 日本ってどうなるの?

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日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんがヒントを教えます。
※写真は、総務省による「日本の推計人口」発表を伝える2025年4月15日付朝日新聞朝刊

減り続ける日本の人口、速まる減少ペース

総務省が2024年10月1日時点の日本の推計人口を発表しました。それによると、3カ月以上日本に滞在する外国人を含めた日本の総人口は前年から55万人減少し、1億2380万2千人になりました。14年連続の減少です。そのうち日本人に限ると、前年に比べて89万8千人減って、1億2029万6千人です。減少数は過去最大でした。日本人の人口減少ペースは速くなっていて、25年に1億2千万人を割るとみられます。

都道府県別でみると、総人口が増えたのは東京都と埼玉県だけで、あとの道府県はすべて減っています。中でも東北や山陰や四国の減り方が大きく、地方から東京などの都市部へ人が移動しているとみられます。

国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来推計人口(23年)の中位推計によると、70年に日本の総人口は8700万人になるとしています。ただ、今の減少ペースだと、もっと大きく減ることが心配されます。

減少の理由ははっきりしています。生まれる子どもの数が減っているためです。24年の出生数(外国人を含む速報値)は72万988人と過去最少でした。日本人だけの出生数はまだ公表されていませんが、70万人を切っていると予想されています。16年に100万人を切ってから、わずか8年のことです。

世界の人口はまだ増えています。国際連合(国連)が発表した世界人口推計24年版によると、24年の世界の人口は82億人で、これからも増え続けます。そして80年代半ばに103億人でピークを迎えるとしています。アフリカなどの発展途上国の人口がまだまだ増えるという予測がもとになっています。ただ、その後はゆっくり減りはじめ、21世紀末までに102億人になると予測しています。世界も今世紀中に人口減少時代に入ると考えられているのです。

すでに人口減少が始まっている国は日本だけではありません。国連は中国、ロシア、ドイツなど世界63の国と地域でピークを過ぎているとしています。

23年の世界の人口ランキングを見ると、インドが中国を抜いてトップになりました。この両国は14億人台で群を抜いています。3位は3億4千万人のアメリカで、インドネシア、パキスタン、ナイジェリア、ブラジル、バングラデシュ、ロシア、メキシコ、エチオピアと続き、12位に日本がいます。20世紀後半には日本は世界6位だったのですが、アジアやアフリカの国に抜かれ、順位を下げています。今後もフィリピン、エジプト、コンゴ民主共和国、ベトナムといった1億人を超える人口を抱える国に抜かれていくと予想されます。

人口減対策には実現や効果に多くの課題

人口が減ると、混雑が解消されるなどして住みやすくなるという利点もありますが、国力、とりわけ経済力が落ちて、わたしたちの暮らしの豊かさが失われていくことが想定されます。すでにその兆候は表れています。企業の人手不足が深刻になってビジネスチャンスを逃すことが増えています。また、地方では過疎化が進み、交通の便が悪くなったり買い物がしづらくなったりしています。

こうした人口減のマイナスを緩和させるための対策は大きく分けると三つあります。ただ、いずれも実現には課題があります。

一つは、働く外国人を増やすことです。日本人が減る分を外国人でカバーできれば人手不足を解消することができます。永住外国人を増やせれば、安定的な解消になります。ただ、これは移民を受け入れるということです。同質性の高い社会の日本では、移民に抵抗感を持つ人は少なくありません。移民に比較的寛容だとされた欧米の国でも移民排斥の動きが強まっているのをみると、日本が簡単に移民政策をとるとは思えません。

一方で、外国人が日本に来てくれるとは限らないという現実もあります。東アジアでは韓国や中国も人口減少が始まっていて、外国人労働者の需要は高まります。その時に日本が外国人労働者に選ばれるとは限りません。

もう一つは、人工知能(AI)などの技術によって労働力をカバーすることです。AIによってできる仕事はAIにまかせ、人間は人間にしかできない仕事に集中するのです。ただ、自動車の無人運転をみても、実現には予想以上に時間がかかっています。だいたいの技術はできても技術への信頼性を得たり法律を整備したりするには時間がかかるということです。

また、AIを駆使することになれば、膨大な電力を使うことになります。そうした電力を簡単にまかなうことはできないという課題もあります。

三つ目は、すでに国や自治体によっておこなわれている少子化対策をさらに強化することです。児童手当を増やしたり、育児休業制度を充実させたり、子育てしやすい街づくりに力を入れたりする施策です。今の通常国会で成立したいわゆる「高校授業料無償化」も少子化対策の一環と考えることができます。ただ、これまでに実施した結果からは、こうした施策が少子化対策として有効に機能しているとは言えないのが現状です。

18世紀後半から19世紀前半にかけて活躍したイギリスの経済学者にマルサスという人がいました。マルサスは「人口論」という著書を出版して歴史に名を残しています。マルサスは「人口増加の勢いは食料の増加の勢いより大きい」として、「放っておけば飢餓が起きる」としました。そのため、「人口増加を制御しないといけない」と主張したのです。

21世紀の日本の現状から見ると、まったく反対方向の主張です。日本の現状は、「人口減少の勢いは仕事減少の勢いより大きいので、放っておけば人手不足によって貧困が起きる」ということになります。そのため、「人口減少を制御しないといけない」となるわけです。マルサスが生きていれば、この状況をどうみるのでしょう。「時代がちがう」のひとことでしょうか。聞いてみたい気がします。

2025.04.18

author一色 清

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