日本には、国民の生活を支えるさまざまな制度がある一方、その制度について知る機会はあまり多くなく、知っている人だけが得をする仕組みになっています。そこで、税理士法人グランサーズ共同代表で税理士・公認会計士の黒瀧泰介氏が、知っている人だけが得をする「申請しないともらえない手当金」を7つ紹介します。
経営者も受け取れる「家賃補助」とは?
――国や自治体から受け取れる補助金や助成金って結構あるみたいですね。
黒瀧氏(以下、黒)「そうですね。補助金や助成金は申請しないともらえないので、どういったものがあるのかあらかじめ把握しておくことが重要です。今回は、知らないと損をする補助金や助成金について紹介します」
1.住宅ローン減税制度
黒「まずは『住宅ローン減税制度』です。住宅ローンを利用して住宅の購入や増改築などを行った場合に、一定の条件を満たしていれば、最長13年間の税額控除が受けられます」
――補助金ではなく、税額控除なんですね。
黒「そうですね。基本的な要件は下記のとおりです。
〈住宅ローン控除の基本要件〉
・自らが居住するための住宅であること
・住宅ローンの借入期間が10年以上であること
・引渡しまたは工事完了から6ヵ月以内に入居していること
・昭和57年以降に建築、または現行の耐震基準に適合していること
・合計所得金額が2,000万円以下であること
・床面積が50m2以上であること
これに加え、合計所得金額が1,000万円以下の世帯が新築住宅で2024年までに建築確認を受けた場合に限り、床面積が40m2以上でも住宅ローン控除を受けることができます」
――控除額はいくらくらいなんですか?
黒「控除額は現状、毎年の住宅ローン残高の0.7%です。基本的には所得税から控除されますが、控除額が所得税額よりも多かった場合は、住民税からも控除されます」
――還付を受けられるのはありがたいですね。
黒「ただし、購入や建築、増改築した住宅の種類や新品か中古かによって住宅ローン残高の上限が設定されているため、注意が必要です」
――住宅ローンを利用する予定があれば、ぜひ申請したい制度ですね。
2.住居確保給付金
黒「2つ目は『住宅確保給付金』です。離職や事業の廃業などによって給与が得られなくなった際に、一定の条件を満たすことで家賃の補助として給付金を受け取れます」
――経営者も事業を廃業した際に受け取れる可能性があるんですね。
黒「はい。要件は下記のとおりです」
〈住居確保給付金の要件〉
・離職・廃業後2年以内であること、または個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が離職・廃業と同程度まで減少していること
・直近の月の世帯収入合計額が、住民税が非課税となる額の12分の1と家賃の合計を超えていないこと
・世帯の預金額が各市町村で定める額を超えていないこと
・ハローワーク等での求職活動や事業再生を熱心に行うこと
――なるほど。支給額はいくらくらいですか?
黒「支給額は自治体によって異なりますが、東京都23区の場合、独身世帯で5万3,700円、2人世帯で6万4,000円、3人世帯で6万9,800円となっています」
――家賃の補填としては十分ですね。
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3.子育てエコホーム支援事業
黒「3つ目は、『子育てエコホーム支援事業』です。これは、子育て世帯や若者夫婦世帯が下記のような住宅の購入や建築、リフォームを行った際に、補助金を受けられる事業です。
〈補助金が受け取れる住宅や工事〉
・長期優良住宅
・ZEH住宅
・省エネリフォーム工事
長期優良住宅では最大100万円、ZEH(ゼッチ)住宅では最大80万円、省エネリフォーム工事では最大60万円の補助金を受けられます。ただし、補助金には予算上限があるので、上限額に達すると申請しても補助金を受けることができません」
――補助金が欲しいなら、早めに申請する必要があるということですね。
4.CEV補助金
4つ目はCEV(シーイーブイ)補助金です。これは「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」のことで、電気自動車やハイブリッド自動車などを購入した際に受けられる補助金となっています。下記のような車が対象となります。
〈CEV補助金の対象となる車〉
・電気自動車(EV)
・プラグインハイブリッド自動車(PHEV)
・燃料電池車(FCV)
・超小型モビリティ
・側車付二輪自動車・原動機付自転車
――自動車だけではなく電動二輪も対象になるんですね。
黒「ええ。2023年の3月末まではクリーンディーゼル車も対象だったのですが、それ以降は対象から外れてしまいました。補助金額は購入した車種によって異なり、上限は255万円(FCEV)です」
――255万円って、相当デカい金額じゃないですか! これは車を購入するなら利用しない手はないですね。これって、法人名義の車両でも適用されるんですか?
黒「適用されますよ。ただし、CEV補助金を受けて購入した車両は、届出日から3年または4年間保有する必要があります。期間内に売却や譲渡、処分によって手放した場合は、補助金を返納しなければならないので注意しましょう。また、補助金の申請は、原則車両の初度登録から1ヵ月以内となっています」
5.ゴミ処理機購入助成制度
黒「5つ目は、『ゴミ処理機購入助成制度』です。自治体によっては、家庭用の電気生ごみ処理機を購入する際に助成金が出ることがあります」
――そうなんですね! 助成金の金額はいくらくらいなんですか?
黒「基本的には購入金額の3分の1~2分の1程度で、上限が2万円~3万円の自治体が多いです。ただ、神奈川県の綾瀬市などは購入金額の10分の9、上限5万円の助成金が出ますし、自治体によってまちまちとなっています。まったく助成金が出ない自治体も結構ありますね」
――なるほど。この助成制度を利用する場合は、お住まいの自治体に確認を取ったほうがよさそうですね。
約7万円受け取れるケースも…葬儀時に活用したい「補助金」
6.災害障害見舞金
黒「6つ目は、『災害障害見舞金』です。これは自治体が提供している制度で、自然災害で精神や身体に大きな障害を受けた人に対して補助金が支給されるものになっています」
――どういった人が対象になるんですか?
黒「災害障害見舞金の対象となる災害は、下記のとおりです。
〈災害障害見舞金の支給条件〉
・1市町村で1市町村5世帯以上の住居が滅失した場合
・県内で住居が5世帯以上滅失した市町村が3以上ある場合
・県内で災害救助法が適用された市町村が1以上ある場合
・災害救助法が適用された市町村を含む都道府県が2以上ある場合
自治体で災害障害見舞金が支給されるのは、地震や豪雨、豪雪や津波といった自然災害でこのような被害が出たときです。基本的には、市町村内や県内で一定数の住居が滅失したときが支給条件となります。そのうえで、そういった災害で両目の失明や四肢の切断、神経系統の障害などの重度障害を抱えると、災害障害見舞金の支給対象になります。
障害を抱えた人が世帯の生計維持者の場合は250万円、そうでない場合は125万円の支給を受けられます」
――なるほど、災害で障害を抱えたときのために、覚えておきたい制度ですね。
7.葬祭費補助金
最後は、『葬祭費補助金』です。これは葬儀や埋葬を行う人に支給される給付金制度となっており、給付金の金額は加入している健康保険によって異なります」
――要件も加入している健康保険によって違うんですか?
黒「そうですね。たとえば会社で加入する健康保険と国民健康保険では、補助金の種類も違ってきます。
■健康保険組合の場合
……「埋葬料」「埋葬費」「家族埋葬料」
■国民健康保険の場合
……「葬祭費」
会社で健康保険組合に加入している場合は、『埋葬料』や『埋葬費』『家族埋葬料』を受け取ることが可能です。たとえば全国健康保険協会の場合だと、最大で5万円の補助金が受け取れます」
――葬儀ってお金かかりますから、補助金が出るのはありがたいですね。
黒「国民健康保険に加入している場合は、自治体から『葬祭費』として1万円〜7万円ほどの補助金が受けられます。ただし、こちらは会社の健康保険組合や社会保険から補助金などを受け取っている場合は支給されないため、注意が必要です」
――なるほど、両方もらうってことはできないんですね。申請期限などはありますか?
黒「基本的には、葬儀を行った日の翌日から2年のあいだに申請を行う必要があります」
――結構余裕がありますね! もし最近葬儀を行った人で申請をしていないのであれば、申請したほうがよさそうですね。
今回は、申請しないともらえないおトクな補助金についてたくさん紹介していただきました。それぞれの要件をしっかり把握して、使えるものは積極的に活用していきたいですね。
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